「私と?」

「そうだ。」

エルレイドは、即答した。

「キミとは、共に実力を認め合い、そして友になれた存在。そんな境遇になった時、ボクはキミから感じたんだ。ボクとキミにある可能性に。」

エルレイドは、ナオキとの戦いを通して、お互いの実力に限らず、仲間になれた事を通して今までに感じた事のなかった様々な可能性を感じ取っていた。

それは、サターンといた時とは違う、それを超越する可能性を…

「かつては、共にぶつけ合っていた剣を、今こそ共に戦う者同士、力を合わせようじゃないか。」

エルレイドは、ナオキに言った。

エルレイドは、ナオキの仲間になった時からひそかに抱いていた。

かつてぶつけ合っていた剣を、今度は共に戦う同志として振るいたいという思いを。

ナオキとの戦いは、エルレイドに今まで抱く事すらなかった新たな境地を築いていたのである。

そして、エルレイドはそれを今こそ形にする時だと、仲間になったあの時から決心していたのである。

「…わかった。それじゃあ、私も参戦させてもらうよ。」

エルレイドは、小さく微笑み、こくりと頷いた。

ナオキは、トライス・ソードを構え、前に出た。

「ふん、今度はまた人間の参戦か。相変わらず、ボスの考え以上にわけのわからん奴だ…」

そう言うと、サターンは繰り出していたユンゲラーとドクロッグを二列に並ぶように立て直した。

「それじゃあ、再戦といこうか。」

そういうと、ナオキとエルレイドは息が合うように、同時に剣を構えた。

「今度という今度は、容赦しないぞ。邪魔者と裏切り者、両方とも今度こそ排除してくれる!!」

「そうはさせるか!いくぞ!!」

この掛け声と共に、ナオキとエルレイドは、同時に体制を構えた。

「ユンゲラー、『サイコカッター』!」

ユンゲラーは、スプーンを振りかざすと、念導の塊で出来た刃を放った。

「はあっ!」

エルレイドは、肘の刃を伸ばすと同時に弧を描くように振り、サイコカッターを打ち消した。

「く…」

サターンは、額に汗をにじませた。

「そんな刃ごときでボクに攻撃を当てる事などできはしない!」

エルレイドは、肘の刃を少し縮めた。

「次は、ボクの番だ!」


エルレイドは、素早さの高いユンゲラーに負けないくらいの素早さで飛びかかった。

「くらえ、『つじぎり』!」

ザシュ!

エルレイドは、ユンゲラーに横一線の斬撃をぶつけた。

ユンゲラーは、効果抜群のタイプと急所に当たった事が響いたらしく、さっきよりも大きい勢いでふっ飛ばされた。

エルレイドは、素早い身のこなしで後ろに飛び、着地した。

ユンゲラーは、かなりのダメージを負っていたが、特性とは別の精神力があるからなのか、どうにか踏みとどまっていた。

「ボク同様、防御が低いのに踏みとどまるのは予想外だったね…。でも、今度こそ決めるよ!」

エルレイドは、ユンゲラーに飛びかかった。

その時…

「!」

エルレイドは、ハッとした。

エルレイドが見た方向には、ドクロッグの姿があった。

(しまった…!)

ユンゲラーが踏みとどまった事同様に予想外の事態に見舞われたエルレイドは一瞬動揺した。

「油断したな、エルレイド!今だ、ドクロッグ!『どくづき』!」

「く…」

エルレイドは、目の前の相手と不意に襲ってきた相手に挟まれ、なすすべない状態になった。

動揺してひるんだエルレイドに、ドクロッグの爪が襲い掛かった。

その瞬間…


ビシャアアアアアン!


どこからともなく、激しい雷が放たれ、エルレイドとドクロッグの間によぎった。

その雷にドクロッグは思わずひるんでしまった。

「今だよ!」

その聞こえた声にぴくりと反応したエルレイドは、ハッと気づき、剣を構え直した。

ひるんでいた事に気を取られ、体制を立て直していなかったユンゲラーは慌てて反撃に出ようとした。

しかし、すでに遅かった。

「とどめだ!『サイコカッター』!」

エルレイドは、肘の刃を伸ばすと、そこに念導の塊を集め、ユンゲラーに切りつけた。

ザシュ!

さっきよりも深い当たりになったような斬撃音が響き渡り、ユンゲラーは倒れた。

今度は本当に戦闘不能になっていた。

エルレイドは、刃をひっこめると、後ろへ飛び上がり、ナオキのもとに戻った。

「お見事だったよ、エルレイド。」

「ああ。でも、ボクが勝てたのはキミが咄嗟に助けてくれたからだよ。ありがとう。」

「うん。」

ナオキとエルレイドは互いに握手をかわした。

またもポケモンをやられ、エルレイドに目の前で握手をかわされたのを目の当たりにしたサターンは、さらに憤りを感じていた。

「おのれ…一度ならず、二度までもボクの邪魔をしてくれるとは…」

サターンとは対極に冷静さを取り戻しつつあるナオキは、サターンに言った。

「周りを見ていなかったのは、貴様の方だったみたいだね。エルレイドへの一方的な憎しみを理由に私の存在をエルレイドがドクロッグを見逃していた以上に貴様は見逃していた、というわけだ。」

サターンは、エルレイドがナオキ側に付いた事を根に持っていたために、ナオキが参戦していたにも関わらず、それを見てすらいなかった。

サターンの中では、ユンゲラーを囮にして『エルレイドを倒す』という事しかなく、ナオキをどうするかは、ナオキの存在自体眼中にないほど考えていなかったのだ。

「まだだ!いけ、ドクロッグ!」

ドクロッグは、エルレイドとナオキのいる方へ飛びかかった。

しかし、二人は息が合うようにひらりとかわした。

「隙あり!『トライス・スラッシュ』!」

ザシュ!

ナオキは、ドクロッグの背中に電流の走った斬撃を加えた。

「く…怯むな!『どくづき』!」

ドクロッグは、体制を立て直し、ナオキに『どくづき』を打った。

ガキイン!

ドクロッグが爪を当てようとした瞬間、横からエルレイドが肘の刃を伸ばして、ぶつけようとした爪のある腕を止めた。

「『サイコカッター』!」

エルレイドは、すかさず念導の込められた刃をぶつけた。

バッ!

ドクロッグは、間一髪でそれをよけた。

「バカめ!同じような手は食わんぞ、エルレイド!」

サターンは、エルレイドに言った。

「そうかな?」

「!」

一瞬得意げになっていたサターンは、すぐに我に返ったような反応をした。

「『シャイニング・カッター』!」

ドクロッグが着地した瞬間、ナオキはトライス・ソードを振りかざした。

振りかざされたトライス・ソードから電流を帯びた衝撃波が放たれ、ドクロッグに向かっていった。

バリィィィィィィ!

よける間もなく、衝撃波はドクロッグに直撃すると、斬撃と共に激しい電流を浴びせた。

ドクロッグは、かなりのダメージを負ったかに見えたが、どうにか踏みとどまっていた。

この状況をサターンは、ただ唖然と見ていた。

「なぜだ…なぜこのボクがこんな奴らにここまで追いつめられるんだ…」

サターンがそう言った時…

「まだわからないの?その原因が、他でもない貴様自身にあるんだって事に。」

「!」

ナオキの言った一言に、サターンは思わずナオキのいる方を向いた。

「エルレイドが参戦していなかった時は、貴様はまだ冷静に戦えてる方だった。でも、エルレイドが参戦した時から戦況は逆転した。その理由は、ただエルレイドが戦力として参加していたからにとどまった事じゃないのさ。」

「なんだと!?」

ナオキはサターンに言った。

「エルレイドが参戦した後から、貴様はエルレイドに対する憎しみばかりに気をとられ、私がいるにもかかわらず、エルレイドしか見えなくなっていた。そしてそれが、見えるようになった私に対しても、ただ憎しみを抱く事に通じて、さっきまでの冷静さを欠き、ただがむしゃらに攻めてばかりいる状態になっていたのさ。」

「!」

この時、サターンはようやく完全に我に返ったような反応をした。

ナオキは、言った。

「怒りや憎しみを原動力に戦っている奴は、追い詰める事はできても、私達には勝てないよ!」

ナオキがこの一言を言った瞬間、サターンは何かに撃たれたかのような反応をした。

辺りはしばらくの間静寂に包まれた。

少しうなだれたように沈黙していたサターンは、顔を上げた。

「おのれええええええええ!」

サターンが全てを吐き出すような勢いで叫ぶと、ドクロッグが最後の力を振り絞るようにナオキ達に飛びかかった。

ナオキとエルレイドは、互いに向き合うと、こくりと頷き、再び前を向いた。

二人の前にサターン同様に物凄い形相をしたドクロッグが襲い掛かった。

そのドクロッグに、二人は怯む事なく、同時に向かっていった。

向かっていく二人にドクロッグの攻撃が襲い掛かる。

その瞬間、二人は同時に正面に剣を振りかざした。

「『ライトニング・スラッシュ』!」

「『サイコカッター』!」

ザシュ!!

電流と念導を帯びた斬撃が同時にドクロッグを切り裂いた。



ズシャ…!

ドクロッグは、着地する事も出来ないまま、そのまま地面に叩きつけられるように倒れた。

ナオキとエルレイドは、息が合うように同時に着地した。

 

ついに勝負に決着がついた。

それでも、辺りは静寂さを取り戻したように静まり返っていた。

「強い…だが、哀れだな…」

静寂を破るように、サターンは囁く声で言った。

その言動は、今までとは違う雰囲気を醸し出しているようなものだった。

辺りは、再び静寂に包まれていった。