とある黒猫が様々な危機と悲しみを乗り越え、白猫ととある約束をした日にトルクから飛び立ち、海の出迎えと共に地球儀に降り立ってから数年…
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黒猫は、待望の地球儀の存在を証明して託された夢を果たしたのだった それから数年、黒猫は今も地球儀に住んでいた 『地球儀ってすごいなぁ。トルクにはないものがいっぱいある…楽が魔法の粉って言ってた奴も箱だけだけと地球儀にあったし』
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黒猫は、そうトルクの時の事を追想しながら地球儀の地を歩いていた 『………』その時、黒猫の中でふと感情がよぎった 黒猫は、そのまま黙りこみ、その場に立ち止まった
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夢を果たした黒猫は、何かもの悲しそうだった 黒猫は空を見上げた (でも…僕はわかってる…もう僕はトルクには戻れないんだって…) そう呟くと、黒猫は再び視線を戻した
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黒猫は、地球儀に到着した後、その実現をこの上なく喜んでいた (円…僕、やったよ…)育ての親の円にスカイウォーカーとしての遺志を継げた事、そしてそれを遂げた事…黒猫の喜びはこの上ないものだった
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しかし、その実現による喜びは長くは続かなかった 実現した後、黒猫は気づいたのだった… (…僕はこれからどうすればいいんだ…) 黒猫は気づいたのだ 『夢を叶えた後の事を考えていなかった』という事に…
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(僕がやりたかったのはただ地球儀に行く事だけだったのかな…地球儀に着いたらどうしようかなんて考えてすらなかったから…) 黒猫は空を見上げた 空はトルクでは見れなかった雲が漂っていた
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『………』黒猫は漂う雲を眺めていた そこに、見覚えのあるような面影を重ね合わせていた その雲は、白猫のような形をしていた 黒猫は横に置いてあったものを手に取った それは一輪の花だった 名前は『デンファレ』というらしい
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(焔…焔の好きな『デンファレ』って花…地球儀にいっぱい咲いてたよ…焔もいたら喜んだかもね…) 黒猫は、漂う雲を憎まれつつも感化され、共に旅に出た白猫―焔の姿と重ねていた (焔も…いてくれたら…)
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地球儀は冬を迎えていた この場所は雪が降る大陸だったらしく、雪が降っていた その降りしきる雪の中に、それとは真逆の色を持つ存在がぽつんと立っていた それは黒猫だった 降りしきる雪の中、黒猫は空を見上げながら立ちすくんでいた
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(もう僕はトルクには帰れない…そして、ここに来れたからといって新たな何かが出来るわけでもない…いくら夢を叶えられても…) 黒猫の黒い頬を雪に続くように滴がつたっていった (僕以外誰もいないんじゃ…意味ないじゃないか…)
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黒猫はもう生きる気力をなくしていた 夢を実現しても、その先に何も残されてないなら意味がない いくら夢のためには犠牲が伴うものでも、夢の後にそれだけが残るだけなら…
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黒猫は、僅かに残された気力を頼りにある場所へ向かった 降りしきる雪 その中を黒猫はただ歩いていた しばらくして、黒猫はようやく足を止めた 黒猫がたどり着いた場所は、教会のような場所だった 黒猫は、そこへ静かに向かっていった
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『天使(人間)って確か、ここで色んなお祝い事をするんだったよね…僕のパートナーのロボットの名前もそのお祝い事の名前だったっけ…』黒猫が言う『お祝い事』、それはそう…『クリスマス』である キリスト教の行事のもと、教会はホームグラウンドである
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『それだけじゃない…天使は、ここでお互いの愛を誓いあうって言ってたっけね…』黒猫は、少し照れた様子だった 『僕が焔に持ってた本当の気持ち…ちょっと変かな…』 黒猫は空を見上げた 教会の天井は崩れていたのか、天窓なのかわからないが、空が見えていた
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『綺麗…トルクにいる時も見れたけど、地球儀で見る星はやっぱり格別だね』黒猫は前足を掲げた それでなぞっているような動作をした 『こう星を結んだら…焔の顔の形になるね…僕も変わらないか』 黒猫はくすりと笑った
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黒猫は何かを取り出した それは一輪の花だった デンファレという花である 焔が好きな花で、黒猫もひそかに知っていたのである その花は既に枯れていた それでも元の美しさは残されていた 黒猫は空を見上げた (焔…焔の側にこの花は咲いてる…?)
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黒猫は目の前が薄れつつある中、焔との日々を追想した (ずっとずっと前、初めて焔と出会った時には、ぎすぎすして二人共お互い見れなかったよね…) 本当は好きだったのに、不器用でお互いそれを伝えられないまま別れたトルクでの思い出…
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(僕は焔との日々はどんな形であっても、みんな大切な宝物だと思ってるよ。これからも忘れたくない。僕もそろそろ………幽霊で、見えない存在でもいい…もう一度、焔に会いたいな…) 黒猫は、力が抜けるようにその場に崩れた その時に手に持っていたデンファレと一枚の紙が地面に落ちていった
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(クリスマスって『聖なる夜』って言われてるんだよね…それなら、僕は焔の幸せと祝福を願ってる…長い間…最後まで言えなかったけれど…一度くらいちゃんと言うよ…)黒猫は、遠い場所にいる再び降り始めた雪の色と同じ色を持つ、相手に最後の力を振り絞り、言った
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『あ…い…し…て…る…』最後の一文字を言ったのを最後に、黒猫は静かに目を閉じた 廃墟と化した教会は再び静まり返った そこにしばらくして、雪が降ってきた 雪は黒猫の上に静かに積もっていった 雪は、まるで遠い場所にいる白猫がそっと手を乗せてくれているように黒猫に積もっていった (了)
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