翌日。

元気を取り戻した一行は、ロッジを後にした。

ロッジを後にしたナオキ達は、テンガン山を通り外に出た。

テンガン山には色んな場所に通じる出口がある。

コウキとナオキは、迷う事なく東の方角に向かった。

エイチ湖にいた時から、彼らの向かう場所はもう決まっていた。







コウキとナオキは、ジュピターが言っていた事を頼りにトバリシティに向かった。

「そういえば、前に私がヒカリちゃんに会った時もギンガ団をここで見かけたんだよね。」

「トバリシティで?」

「そう。そこでヒカリちゃんがギンガ団に襲われて、その後私達で力を合わせてなんとかやっつけたんだ。」

「そうだったんだ。」

当時は『ナオキの姿』でだったが、コウキはその時にはいなかったので、トライスの状態である今の姿で話してもコウキは疑いを持たなかった。

ナオキは、ひそかにまた違う姿での事を話してしまった事に少し焦りを見せたが、どうにかそれを表に出さずに済んだ。

今の姿を忘れて違う姿の時の事を話す事がナオキの癖になってるようだ。

ナオキは、シンジ湖での事をひそかに気にしていた。

結局、あれはごまかしきれたと言えるのだろうか…

ナオキは、あらためてそれを気掛かりに思った。





二人は歩き続けていた。


しばらく歩くと、ナオキは足を止めた。

「ここがギンガ団の本拠地…ギンガビルってわけだ。」

二人の前に大きなビルがそびえ立っていた。

『トバリシティギンガビル』

ジュピターがエイチ湖で言っていたギンガ団の本拠地である。

「ギンガ団の本拠地がここにあったとはね…。トバリシティは常にギンガ団の脅威にさらされてたって事。悪の組織という名の漆黒の闇に包まれた町。まさに『漆黒のトバリ』ってわけだ。」

ナオキはカード真拳に合わせた事を言った。

ナオキ達は階段を登っていった。

すると、そこに一人の団員がいた。

「どうだ!このアンテナ!詳しい事は知らないがとにかくすごいアンテナだ!」

誰が来たのかはわからず、少なくとも近くに人がいるのにだけ気付いていた団員は堂々と大きな声で言った。

(詳しい事は知らない…?団員なのになぜ知らないんだ?)

ナオキは団員の一言に疑問を抱いた。

その時、団員がナオキ達の存在に気付いた。

「やや!お前は!」

「え、誰だっけ?」

ナオキはとぼけた様子で言った。

ナオキは本当に知らないようだが、彼はナオキ達の事を知っているようだった。

「お前はおれを覚えていなくてもおれはお前を覚えている!お前のせいでピッピは取り上げられて…相方は田舎に帰り…」

ナオキは団員の言っているセリフの中で思い当たるのを見つけてようやく思い出した。

「あー、エイチ湖の時のザコ兵か!」

ナオキは『ピッピ』というセリフでその事を思い出した。

「ぐっ…。知らない!おれは倉庫の鍵なんて知らないぞ!」

そう言って団員は一目散に逃げていった。

その時、チャリンという音がした。

「あの時、オレ達であっさり倒したからすっかり忘れてたな。」

「本当。まさかあの時のザコ兵がまだいたなんてね。しかも相方に逃げられるなんて。本当ご苦労なこった、だね。」

そう言った時、ナオキはふと下を見た。

「あれ?これって…」

ナオキは近くに落ちていた何かを拾った。

「鍵っぽいね。」

そこにはわかりやすく『倉庫の鍵』と書いてあった。

「さっきのあいつが落としていったみたいだな。」

「あいつ…発電所の時の団員と同一人物だったりして…」

ナオキは谷間の発電所の時の事を思い出していた。

あの時も花畑で戦った後に団員が鍵を落としたために入れたのだ。

こうしてあっさり鍵を手に入れた二人は早速ギンガ団の倉庫に行った。

倉庫内に入ると、そこには怪しいドアがあった。

「この形式のドア…。明らかに普通のドアじゃないな…」

倉庫には普通自動ドア式のドアはない。

開いた先が単なる倉庫だったとは思えないようなドアだった。

「早速鍵はこれに合うみたいだ。」

ナオキはさっき拾った鍵を鍵穴に合わせてみた。

「トライス、開けてみようぜ!」

「OK!」

ナオキは鍵穴に倉庫の鍵を刺した。

ガチャ!

その音と共にドアのロックが解除された。

それと同時に鍵は根本から折れてしまった。

「随分と脆いな…。鍵は折れちゃったけど、これでドアは開くようになったはずだよ。」

「よし、早速中へ突入だ!」

コウキはナオキを促すように言った。

「OK!みんな、準備はいいかい?最初から全力で行くよ!」

ナオキはマグマラシ達に言った。

「おう!いよいよ一番の見せ所が来たぜ!」

「ギンガ団にこれ以上好きなマネはさせないぜ!」

「心の美しさを持たない者に思い知らせてあげますわ。」

マグマラシ、レントラー、ロズレイドはそれぞれの思いを込めた一言を言った。

倉庫のドアが開いた。

「コウキくん、気を引き締めて行くよ。くれぐれも油断しないようにね。」

「うん!」

コウキは力強く頷いた。

ナオキ達は前を向いた。

「行こう!」

この一言と同時に彼らはドアの中へ走っていった。







倉庫の中は地下に続いていた。

「倉庫にこんな基地があったなんて…」

コウキは辺りを見回しながら言った。

「きっと、ここが奴らの秘密の通路なんだろうね。」

ナオキ達はしばらく歩き続けた。

その時…

「…む?」

ナオキは何かに気付いた。

「トライス、どうしたの?」

コウキがナオキの方を向くと、ナオキは小さい笑みを浮かべていた。

「…どうやら…早速お出ましのようだ。」

ナオキの見た先にはたくさんの団員達がいた。

「侵入者だ!」

「どうやってここに!?団員しか持ってない鍵がなければ入れないはずだぞ!」

団員達は予想外な出来事に開いた口がふさがらなかった。

「初っ端から全力でいかなきゃいけないみたいだね。」

「そうみたいだな。」

二人は戦闘モードに入った。

「コウキくん、いくよ!」

「おう!成長したオレの力を見せてやるぜ!」

ナオキはトライスソードを構え、マグマラシ達も戦闘体制になった。

コウキはモンスターボールを構えた。


「行け!ゴルバット!」

「スカンプー!」

「ドクケイル!」

団員達は一斉にポケモンを繰り出した。

「数では奴らの方が有利か。ま、私達には関係ないけどね。」

「キミがあの時言ってたからね。『バトルは数が全てじゃない』って。」

コウキはナオキと一緒に戦った時の事を思い出していた。

「そういう事!」

ナオキはコウキに小さく微笑みながら言った。


「行け!あの二人をなんとしてでも止めるんだ!」

団員のポケモン達が一斉に飛び掛かって来た。

それと同時にナオキ達も反撃を始めた。

「トライス・ライトニング!」

トライスソードから雷が放たれた。

「ぎゃあああああ!」

雷はゴルバットに直撃した。

「やったか?」

コウキがそう言った時、ナオキはピクリと反応した。

「いや、まだみたいだ!」

ゴルバットは何とか踏み止まった。

それでも弱点のタイプをつかれてかなりダメージを負っているのは確かだった。

「少しはレベルが上がったみたいだね。これだと私達も少してこずるかもしれないな。」

それでも内心は余裕を見せているようだった。

「みんな、油断しないで全力でいくよ!」

「おおー!」

激戦は続いた。

ナオキ達は団員を蹴散らし前に進んでいった。

それからしばらくして…


「ん?これは?」

ナオキは何かを見つけた。

そこには丸い形をした光るパネルがあった。

「レントラー、これって…。」

「ああ、間違いないね。これはワープパネルだ。」

二人はこのパネルに見覚えがあった。

ナオキとレントラーが出会った時に、ちょうど同じ物を見た事があったのだ。

「どこかに行けるかもしれないね。」

「そうだな。オレがギンガ団に捕われた時も、こういうワープパネルで移動してたからな。」

「OK。コウキくん、行くよ。」

「OK!」

ナオキ達はワープパネルに足を踏み入れた。

無論、サイズの都合上、1人ずつ入る事になっているが。

ギュワワワワーン!

この音と共に、ナオキ達は別の部屋に飛んだ。

「着いたぞ。ここは…」

着いた場所は倉庫みたいな所だった。

大きい箱が何個か並べられている。

レントラーは目を光らせた。

諺ではなく、本当に光らせている。

「ん?」

レントラーは何かに気付いた。

「どうしたのレントラー?」

「箱の裏に何かあるみたいだ。」

レントラーは箱の裏側に行ってみた。

「これは?」

レントラーは何かを見つけたようだった。

「レントラー、何かあった?」

「今持ってくる。」

そう言うと、レントラーはその見つけた物をくわえて持ってきた。

「これだ。」

「…これは?」

それは1枚のカードだった。

見た目からしてカード真拳ではないのは確かである。

「これはギンガ団のカードキーみたいだ。」

「え?何でそれがわかるんだ?」

「だってまたここにわかりやすく書いてあるんだもの。」

「あ、本当だ。」

倉庫の鍵と同じく『ギンガ団の鍵 トバリビル用』と書かれていた。

「ギンガ団ってとことんドジだよね…。」

ナオキは呆れ果てていた。

「何はともあれ、これでトバリのギンガビルに突入できるね。」

「だね。よし、早速行こう!」


二人はギンガビルに向かっていった。



ギンガビル内。

二人はビルの中でも団員を蹴散らしながら進んでいった。

「くっ…まだ快進撃を続ける気か…。だが、もう実験は終わったぞ!」

「実験!?」

ナオキはその一言に反応した。

(ギンガ団は三大レジェンドをどうするつもりなんだ…?)

ナオキの中で大きな不安がよぎった。

「コウキくん、急ごう!」

「うん!」

コウキが頷くと二人は走っていった。





「だいぶ進んだな。」

「団員もそろそろ全滅した事だろうね。油断はできないけど。」

二人は話しながら歩くと、急に足を止めた。

「…あれは…。」

中を見ると、そこには見覚えのある人物の姿が見えた。

「………。」

ナオキはしばらく黙り込んでいた。

「どうしたのトライス?」

コウキはナオキに話かけた。

ナオキはしばらく黙り込み、ようやく口を開けた。

「コウキくん。」

「?」

しばらく間をおいて、ナオキは言った。

「君は先に外に出ていてくれないかな…?」

「え?」

ナオキからの一言にコウキは一瞬驚愕した。

「ここから先は君が行くと危険だ。だからここから先は私達で行く。」

「え?トライス、それってどういう事?」

ナオキからの唐突な一言にコウキは戸惑いを隠せなかった。

「ここから先は、今まで私達が戦ってきた以上にやばそうな相手がいるんだ。君も私と同じくギンガ団の要注意人物にされてるからヘタすればバトルで負かされるだけでは済まされないかもしれない。」

ナオキはコウキの事を案じていた。

バトルにおける実力ではなく、コウキの身の危険を…

コウキはしばらく考えた後に言った。

「…わかった。じゃあオレは先に外に出て待ってるからね。そのかわりちゃんとキミも戻ってきてよ。」

「OK。すぐは無理かもしれないけど、少なくとも必ず君の後に続けられるようにするよ。」

ナオキは小さく微笑みながらコウキに言った。

「それじゃあ後で。絶対戻ってきてね!」

コウキは念押しでナオキに言うとその場を後にした。




ナオキはコウキを見送った後、ドアの方を向いた。

「…行くよみんな。準備はいい?」

ナオキがそう言うと、マグマラシ達はこくりと頷いた。

ナオキ達はドアを開けた。

ドアが開くと、ナオキ達は前に向かって歩いていった。

ナオキ達の向かう先に、一つの人影があった。