ナオキはエルレイドをムクホークの上に乗せた。

「それじゃあよろしく頼むね。」

「おうよ。しっかり捕まってろよ。」

「大丈夫。ケガ人とはいえ乗せてもらう以上はキミに頼りすぎない。自分で出来る事はできる限りするのも礼儀だからね。よろしく頼むよ。」

一命をとりとめたとはいえ、あれだけのことをされた以上油断はできないので、エルレイドは聖地エレメンタルで治療をする事にした。

「そんじゃ行ってくるぜ。後はまかせたぞ。」

「OK。エルレイドの事よろしくね。」

ムクホークはエルレイドを乗せて空へ飛び立っていった。

「よし、私達も行動を再開しよう。」

「おう!他の奴らがまだ残ってるからな。」

マグマラシがそう言った後、ナオキは辺りを見回した。

「あれ?コウキくんは?」

リッシ湖には団員だけでなく、いつの間にかコウキの姿がなくなっていた。

「あいつならジュンヤの方に行ってくるって言って走っていったぜ。」

「空を飛ぶポケモンがいないから歩いていくしかないみたいなんだ。」

レントラーが答えた後、ナオキはリッシ湖の入口の方を向いた。

「あの子もジュンヤくんみたいな一面があるのかな…。」

ナオキがそう呟いた後、ロズレイドがナオキに言った。

「そういえばサターンがさっき『今頃仲間のマーズがシンジ湖で次のポケモンを捕らえてる』って言ってましたわ。」

「そういえばそうだったね。だとしたら次はそっちに向かった方がよさそうだね。」

「急がないと!サターンの予測が本当ならシンジ湖にいるナナカマド博士達に何か起きてるかもしれないよ!」

「そうだね。みんな、急ごう!」

「おう!」

しばらくしてナオキ達はあらためてリッシ湖を後にした。

「あのコイキング達は大丈夫なの?」

ロズレイドは心配そうな様子で言った。

「ガーディアンに伝えたらケーストさんが何とかしてくれるって。」

ギンガ爆弾によって干上がった湖はガーディアン・ケーストが元に戻してくれるそうである。

ナオキ達は先を急いでいった。






しばらく進んだ後、ナオキ達は、とある場所を散策した。

「ガーディアンの話によるとシンジ湖はこの辺りらしいんだけど…。」

リッシ湖と違ってシンジ湖は初めて行く場所だった。

ガーディアン達の情報によると、シンオウ地方の南西側にあるとの事だ。

『シンジ湖自体を探す』のは、初めてだったナオキだが、どうも初めてという気がしないような様子だった。

「…!ナオキ、あれ!」

レントラーが前足で何かを指した。

そこには看板があった。

ナオキは、早速その看板を確認した。

「『シンジ湖』…。どうやらここみたいだね。」

ナオキは、そう言うとふと辺りを見回した。

見終えた後、ナオキはあらためてある事に気付いた。

(…この辺りって、聖地エレメンタルに続く道とコウキくんの住んでる場所の近くじゃんか…。毎日のように通ってたのに、今まで気付かなかったなんて…)

灯台下暗しというのは、この事を言うのだろう。

あらためてナオキ達はシンジ湖の中へ入っていった。





中に入ると、そこには案の定ギンガ団員達が潜伏していた。

そこへどこからともなく声が聞こえてきた。

「おおっ!どこの誰だか知らんがよく来てくれた!」

「!?」

ナオキが振り向くと、そこに団員に捕われたナナカマド博士の姿があった。

「ナナカマド博士!」

トライスの状態で会ったのは初めてなだけに、ナナカマド博士が『どこの誰だか知らないが』言うのも無理はない。

今は知らない人でもいいから助けがほしい状況にある事があらためて強調される。

「ギンガ団の連中がが伝説のポケモンを…」

「!?」

ナナカマド博士のこの一言でナオキは悟った。

「くっ…一足遅かったか…」

サターンの言う通り、確かに時間稼ぎにされていたのをナオキはあらためて実感した。

「ヒカリを助けてやってくれい!向こうにいる!」

ナナカマド博士の指した先にヒカリともう一人見覚えのある人物が立っていた。

「わかりました!みんな、急いで!ヒカリちゃんが危ない!」

「おう!」

「ナナカマド博士はオレに任せろ!キミ達はヒカリを!」

レントラーがナオキ達に言った。

「OK!行くよ、マグマラシ、ロズレイド!」

「OK!」

ナオキ達は一斉に走り出した。

そこへ団員の下っ端達が立ちはだかった。

「我々は世界平和のために全てを独占するのである!我々は悪いけれど邪魔しちゃいます。」

「この作戦を成功させて我々はボーナスを貰うのです!」

そう言って団員達はポケモンを繰り出してきた。


それに対してナオキは一言だけ彼らに言った。



「どけ!!」

この一言と共にナオキ、マグマラシ、ロズレイドは一斉に攻撃を繰り出した。

全ては一瞬だった。

団員とそのポケモン達は一瞬で戦闘不能になった。

団員達もその勢いでポケモンと共に吹っ飛ばされた。

団員とそのポケモンは真っ逆さまに地面に落ちた。

「負けるのも計算のうち…。負け惜しみだけどね…」

そう言って団員達は気絶した。

ナオキ達はあらためてヒカリのいるもとにたどり着いた。

「ヒカリちゃん!」

ナオキがそう言うとヒカリは声のした方を向いた。

「え?だ…誰?」

初対面のはずなのになぜ自分の名前を知ってるのかと思ったヒカリは少々戸惑っていた。

しかし、さっきナナカマド博士から聞いたのだろうと思ったヒカリはをすぐに心を落ち着かせた。

「あなたは誰なの?」

「私の名前はトライス。とりあえず名前だけは名乗っておくよ。」

「そ…そうだ。トライスくん、ギ…ギンガ団が!湖のポケモンを…」

ヒカリはぶるぶる震えながらナオキに言った。

ナオキはヒカリの前にいたもう一人の方を向いた。

ナオキの顔を見た時、その人物はぴくりと反応した。

「! あなたの顔!嫌な事思い出しちゃった!発電所の事よ!あなたのせいでひどい目に合ったんだから!」

「それは色んな意味で自業自得だろ。っていうか誰だっけ?」

ナオキはしらばっくれた様子で言った。

「何その顔?あたしの事覚えてるでしょ?」

「悪党の顔を覚えるつもりはない。」

「な…何ですって!?」

「冗談だよ。君の名前ぐらい覚えてる。覚えたくないもの程覚えちゃうってのが記憶の性ってもんだからね。マーズだろ。」

「そうよ。いいわ!もう一度自己紹介してあげる!あたしはギンガ団幹部のマーズ!?強くて美しいの!」

「悪行をしてる時点で強いも美しいもあるか。せっかくルックスは綺麗なのにさ。」

ナオキはひそかにフォローを含めた事をマーズに言った。

「で、何?仲良しカップルのつもりで助けに来たの?」

「カ、カップル?」

ナオキはマーズの一言に一瞬まごついた。

「……。」

ナオキはヒカリの方をちらりと見た。

(…男女がいるとそういう風に見られるものなのか…?)

ナオキはそう思った後、一瞬考え込みマーズに言った。

「…理由はどうあれ、とにかくナナカマド博士とヒカリちゃんを助けに来た事だけは断言できる…」

ナオキがそう言ってる時、マーズは癇癪を起こしながら言った。

「…許さない!許さない!!とにかくあなたもやっつけるから!」

マーズはそう言って一斉にポケモンを繰り出してきた。

マーズの言動から誰が見てもわかるようなマーズの心情が読み取れた。

「おいおい…それってまるで『あたしなんて今までボーイフレンドすらできた事ないのに』って言ってるみたいなもんじゃないか…。」

複雑な心境を抱きながらマーズとの戦いが始まった。

マーズは、ドーミラー、ゴルバット、そしてブニャットを繰り出した。

「手持ちが一人増えてズバットがゴルバットに進化してる…前回と比べてそれなりにレベルは上げてるというわけだな。」

「そんじゃ、今回もオレがいくぜ。」

「私も行かせてもらいますわ。」

マグラマシとロズレイドが前に出た。

「3対2?これじゃあ、トライスくんが不利だわ。」

ヒカリがそう言った時…

「いや、3対3だよ。」

「え?」

ヒカリがそう言ってナオキの方を振り向いた時…

「これで3対3だ。」

ナオキはトライス・ソードを構えて前に出た。

「トライスくんも…?」

ぱっと見、確かに戦えそうな様子だけど、人間がポケモンと同じ場所に立って戦うというの?という様子でヒカリは言った。

ヒカリとは対局に、マーズは反応を示さなかった。

「相変わらずね。人間が同じ場所に立って戦うスタイルがあなたの好みなのかしら?」

「まあね。ポケモンと同じ場所に立って戦うのは、同格の立場を持った人間としては当たり前の事さ。」

「それじゃあ、いくわよ!」

マーズのポケモンが一斉に飛び掛かった。

「ドーミラー、神通力!ゴルバット、つばさでうつ!ブニャット、きりさく!」

マーズのポケモン達の攻撃がナオキやナオキのポケモン達に襲い掛かった。

「きゃあ!」

ドーミラーの神通力がロズレイドに当たった。

「ロズレイド!」

「よそ見してる場合じゃないわよ!」

ゴルバットとブニャットの攻撃がナオキとマグマラシに襲い掛かった。

「ぐっ!」

マグマラシはどうにか直撃は免れたものの、かわしきれずつばさで打たれた勢いで飛ばされた。

「マグマラシ…!」

そう言った瞬間、ナオキは咄嗟にトライス・ソードを構えた。

カキィン!

ブニャットのきりさくをどうにか防いだが、かなりの勢いがあったらしく、マグマラシと同じく吹っ飛ばされ地面にたたき付けられた。

「ああ!トライスくん!」

ヒカリは心配そうな目でナオキ達を見ていた。

「ぐっ…あいつ…以前より、かなり強くなってるみてえだな…」

「そのエネルギーが私への嫉妬なんだろうか…」

ナオキはどうにか踏み止まるような形で立ち上がった。

先程の戦いの影響が残っているのか、かなり堪えているようだ。

「あの方の実力はかなりのものでございますわ。私の弱点であるタイプの技を私も見抜けない素早い判断でぶつけてきましたもの。」

「多少侮ってたって感じかな…」

ナオキは先程のようにまた別の場所で油断する事になったのを痛感した。

「どう?あたしは今までとは違うのよ。あなたのせいでひどい目に合った上に、今度はあたしの前でこんな仲良しカップルみたいな環境を見せるだなんて…今度という今度は絶対あなたをやっつけるんだから!」

おてんば娘のような口調でマーズは言った。

「以前よりかなりレベルを上げたのは、間違いないようだね。」

「そうよ!ようやくわかったわけ?当たり前じゃない。あたしは強くて美しいマーズなのよ!」

マーズは、勝ち誇ったようにナオキに言った。

「けどね…」

「?」

ナオキは、少し間を置き、マーズに言った。

「その程度じゃ私達は倒せないよ。」

「な…何ですって!?」

マーズは、驚愕した。

「憎しみを理由に戦うのは、大事な事を見落とすものだよ。その証拠に、私達はまだ一人も倒れてないよ。」

「!?」

マーズは、ようやく重大な事に気付いた。

確かに先手必勝のようにナオキ達を追い詰めたかに見えたが、ナオキ達は一人も倒れていなかった。

攻撃をぶつけただけで自己満足していて、マーズはそれに気付かなかったのだ。

「だ…だから何よ!だったら、気付いた今倒せばいいだけでしょ!」

マーズのポケモン達は攻めの体制に入った。

「私達だって、いつまでもやられてるつもりはないよ!」

ナオキ達は、マーズのポケモンに向かっていった。

「もう一度くらいなさい!」

マーズのポケモンは、再び技を放とうとした。

「同じ手はくわないよ!」

ナオキ達は、攻めに入った。

「マグラマシ、ドーミラーに火炎放射!ロズレイド、ブニャットにリーフストーム!」

ナオキのこの一言と共にマグラマシとロズレイドは同時に技を放ち、ナオキも後に続いた。

「くっ…まだよ!」

彼らの激戦は続いた。











激戦の末、とうとうマーズのポケモンは全滅した。

マーズはその場に崩れた。

ナオキは、マーズに言った。

「憎しみや嫉妬心を理由にしてるんじゃ、私達は倒せないよ!」