離郷当日。

ようやく待望の市川に戻れるわけだ。

その代償として、来月は学校がある時まで戻れない、必ず就職に関する情報を持ち帰ってくる事が課せられた。

昨年の今頃は行く宛もないかのように小岩や本八幡を歩き回っていたのが鮮明に残っている。

多分今回の離郷の間に一度はそうする時がある。

ひそかに気に入っていただけに…





離郷当日だというのに私は今日も普通の日のように過ごしていたのだった。

公務員試験の勉強をしたり、アンナの相手をしたりとわざわざここに描くほどのものではない過ごし方をしていた。

途中、私は買い物へ行った。

久々に会う人達のための故郷土産を持っていく事にした。

来月は会えないのは確実なので、その誼みもある。

今の私、そしてその前の私も今では市川に戻る事、というよりも故郷を離れる事に抵抗感を持っている。

いつもなら、ようやくつまらない故郷から抜け出せるという理由で躊躇など以っての外のような気持ちになるのだが、近頃の私はそれに対して躊躇の念を抱くようになっている。

それは就職場所をここに、もしくはそれに近い場所に限定する事になるほどにまで発展していた。

この日、私は市川の職員になるのを諦めた。

なったら最後、退職するまで故郷に帰れなくなるというのがその理由だ。

しばらく市川の職員として働いて、あらためて故郷の職員になるという考えもあったのだが、ああいう形からすればそうはいかないだろうと悟ったのも理由だ。

私も先生を目指すべきだったのだろうかという脱線の後悔がさらに募った。

今の私はもう高校の先生にもなれない状態なのだ。

向こうから言われる形で私は実家を後にした。

こうなってる以上、今回は何の収穫もなしに帰るわけにはいかない。

やはり行事を根拠にするべきだったかな…



いつもとは違う心情で私は駅に着いた。

特に行事みたいな理由もない中、私が市川に戻るのは今まで以上の抵抗感があった。

それをただ引きずってても仕方がない。

今の私がするべき事は、市川に戻る第一の理由をやり遂げる事だ。

それを達成して、これからに発展させればそれを帳消しにしてくれるはずだ。

そしてその後の事も忘れないように…



17時57分、私は23日ぶりの市川を目指して故郷を後にした。