カンナギタウンで後にしたナオキ達は聖地エレメンタルに戻り、そこで一夜を明かした。

翌日、ナオキ達は今回、今まで進んでいた方向とは逆の方にも街があるのに気付いたので、そこへ行ってみる事にした。

ガーディアン達によると、ノモセシティから先はとある諸事情で通れないとの事だ。



その街はコウキのいる街から西の方にある街で、波乗りがなければ行けない事を強調するように、海の向こうにある。

どうやら海の道も道路として扱っているようだ。

陸に上がると、その向こうに街がある事を強調するようにゲートがあった。

「ここに街があるのは本当だったみたいだね。」

「にしても、他の奴らはどうやって行くんだ?」

「ガーディアン達が見せて下さったマップでは、この街に行くためにはこの水道を渡るしかないようでしたわ。」

「船もねえのにどうやって行くんだろうな?」

「確かに…」

あらためてナオキ達は先へ進んでいった。



ゲートを抜けると、そこは港町だった。

大きな船があり、そこを通る水路には跳ね橋もあった。

「ここは『ミオシティ』。水面に栄える街…か。」

「海の向こう側にあるだけに、港町って感じがするな。」

「ナオキさん、向こうにあるあれ物は何です?」

「あれは『船』だよ。波乗りを覚えたポケモンがいない人達が海を移動するために乗るものなんだ。」

「是非一度乗ってみたいですわ。」

ロズレイドは目を花束以上にキラキラさせていた。

「せっかくだから乗ってみようか。」

「おう!オレも乗ってみたかったからな。」

「こういうのは初めて見たからオレも試してみたいよ。」

「空を飛ぶ以外に海を渡るってか。いいかもしれねえな。」

「満場一致のようだね。それじゃあ、早速乗りに行こう。」

「おおーっ!!」

ナオキ達は早速船着き場へ向かった。





「おおーっ!すげえなこれ!海を切り裂くように進んでるぜ!」

「人間の乗り物もポケモンに負けないくらいのすごさがあるんだね。」

レントラーは甲板から海を見ていた。

透視すれば下の様子がわかるが、わざわざ甲板から覗く形で見てるところからいかにレントラーが船での旅路に関心を抱いてるのかが伝わる。

ロズレイドやムクホークも新物好きの心情と同じような様子でかなりはしゃいでいた。

こういう事はポケモンの場合、人間と一緒にいなければない機会だけに彼らがはしゃぐのももっともと言えよう。

「君達、はしゃぐのはいいけど、海に落っこちないように気をつけてね。」

ナオキは本を片手にマグマラシ達に言った。

ナオキが読んでいる本は、ある一人の勇者とそのポケモンの伝記だった。





しばらくして船はとある場所へ到着した。

「ここが『鋼鉄島』か…。」

ナオキ達は船から降りた。

「ミオシティに戻りたくなったら言ってね。」

「はい。帰りもお願いしますね。」

ナオキ達は鋼鉄島に入っていった。





中は鋼鉄島と名付けられている割には岩だらけだった。

「どこが鋼鉄なんだ?おもいっきり岩じゃねえか。」

「確かに…もしかして、鉱物はあったけど、掘り起こしたから今はないんじゃないのかな?」

ナオキがそう言った瞬間…

「…?」

何やらポケモンの声が聞こえた。

「今、声がしなかった?」

「したぜ。しかも、何だか騒いでるみたいだな…?」

「せっかくだから行ってみようよ。何かあるかもしれないよ。」

ナオキ達は声がしたと思われる場所へ向かっていった。





中に入ると、頻繁にポケモンの声が聞こえた。

「どうやら、ただ事じゃないみたいだね。」

「行ってみよう。」

ナオキ達は先へ進んだ。





「…?」

しばらく歩くと、ナオキは奥に何かがあるのに気付いた。

見るからに人の影ともう一人、人ではないような影がある。

ナオキ達は、影のある場所へ歩いていった。

そこにいたのは、一人の人間、そしてポケモンだった。

ナオキが近づくと、話し掛ける前に相手の方が気付いた。

「…きみは?」

「あ、初めまして。私の名前は『ナオキ』と言います。この中からポケモンの声が聞こえたので、何が起きてるのか確かめるために来たんです。」

「私の名前は『ゲン』。この鋼鉄島で修行している物好きのトレーナーだよ。このポケモンは、友達のルカリオだ。」

(…やっぱり違うか…。まあ、そりゃそうだろうけど…)

ナオキはゲンの姿と連れているポケモンから何か気になっている事があるようだった。

「ナオキというのか。ちょうどよかった。私も今、ポケモンが騒いでいる原因を確かめにいくところなんだ。」

「それでしたら、一緒に行きませんか?せっかく会ったわけですし、目的も同じみたいですからね。」

ナオキ達は、ゲンと行動する事になった。

あらためてナオキ達は先へ進んだ。





「はは、そうだね。ここで修業するのは、ある意味ヒマ人だね。」

ゲンは微笑むような表情でナオキに言った。

「やれる事があるだけでもいいと思いますよ。本当のヒマ人というのは、やる事が全くない人の事を言うんですから。」





「鋼鉄島という事は、ここって何か鉱物とかが採掘されていたんですか?」

「昔はそれなりに栄えた鉱山だったけどね。今は鋼も取り尽くされたのか、ポケモンしかいないよ。」

「ポケモンには限りはねえってか?」

「生き物だからそうなのかもしれないね。」

ナオキはマグマラシに言った。

「トウガンさんには会ったかい?」

「トウガンさん?」

「そう。ミオのジムリーダーのあの人にジムリーダーに頼まれたりもするけれど、ヒョウタくんがいるからね。」

「トウガンさんとヒョウタさんってどういう関係なんですか?」

「二人は親子なんだ。」

「親子共々ジムリーダーをやってるんですか…」





「ルカリオって確か鋼タイプを持ってるポケモンですよね。この鋼鉄島で同じタイプのポケモンと戦う事があるかもしれませんが、そういうのをゲンさんはどう思いますか?」

「鋼ポケモンを使うポケモントレーナーが鋼ポケモンと戦うのは…」

ゲンは少し考えた後、続きを話した。

「自分と戦うようなものかな?……そうだね。他人よりも自分に勝つのが難しいからさ。」

「名言ですね。」

「それにしても、ポケモンが騒ぐのはなぜだろう?気になる…先を急ごうか。」

「はい。」

ナオキ達はさらに奥へ進んでいった。





「ルカリオ、何かわかるかい?」

ルカリオは、頭部にある房のようなものをふわりと上げた。

「ゲン様、この奥に何か気配を感じます。」

「そうか。よし、行こう!」

ナオキ達は、ルカリオの導くままにさらに奥へ進んでいった。






「…!ゲン様、ここです!」

ルカリオは向こう側を指した。

「…誰かいるようだな。」

ゲンは陰に隠れてルカリオの指す方を見た。

「…!」

ナオキが先に反応した。

ルカリオの指した先には見覚えのある姿があった。

「…奴らは…」

「知ってるのか?」

「はい。奴らは『ギンガ団』の団員達です。人からポケモンやエネルギーを奪ったりして悪事を働く悪の組織なのです。」

「そうか…原因は奴らか。」

ゲンが団員の様子を見た時…

「…あなたなら…大丈夫ですね…」

「私なら?どういう事なんだ?」

「それを今お見せします。」

ナオキは体制を構えた。

その瞬間、ナオキの体から強い光が発せられた。

「…!」

ゲンとルカリオは思わず、両目をつぶった。

光が消えたのに気がつき、ゲンは目を開いた。

「!!」

ゲンは目の前の光景を見て一瞬それを疑った。

そこにいたのは、さっきとは違った姿をしたナオキだった。

「き…きみはさっきの青年なのか?」

「はい。」

ルカリオは手をナオキに向けて目を閉じた。

「ゲン様、さっきの青年に間違いありません。」

ルカリオは『波導』を使ってナオキと同一人物だという事を認識した。

『波導』というのは、それぞれ固有のものであり、みんな違う。

トライスになっても、それは『ナオキ本人』であるのは変わらないので波導が変わらなかったのだ。

「これは私のもう一つの姿なんです。私はこの姿では『トライス』と名乗ってて、悪の組織を潰すために戦ってるんです。」

ゲンは不思議そうな様子でナオキを見ていた。

「この事を隠すつもりはありませんでした。ですが、あなたがこの姿を知ったらどうなるか気になっていまして…」

ゲンはしばらくナオキを見ていた。

「…気にする事はないよ。私もひそかにきみのような不思議な力を持った人物だと思ってる。きみはただ私とは違う力を持っているけど、私と同じ不思議な力を持つ人間だという事に変わりはない。」

「ありがとうございます。」

ナオキがガーディアンの力を持つ事はゲンにとっては不思議な事ではなかった。

寧ろ、ゲンにとっては同じ普通の人間とは違う力を持った人間に会えた事に対するひそかな嬉しさの方が大きかったようだ。





団員達は何やら話をしていた。

その時…

「…?」

団員達はふと後ろを向いた。

そこにナオキとそのポケモン、そしてゲンとルカリオがいた。

「なるほど、きみ達がポケモンが騒ぐ理由か。この鉱山にどんな理由でも騒ぎを持ち込んでほしくないな。」

ゲンは少し呆れたような様子で言った。

「ギンガ団の俺らは全てのポケモンを奪うのだ!なあ、相棒!」

「おう、ブラザー!」

二人はかなり気が合うようなノリで言った。

「というわけで、この錆びれた鋼鉄島のポケモン全部奪っちゃいます!」

団員がそう軽いノリで言った時、ナオキが前に出た。

「相変わらず考えが子供以下だな。貴様らの精神年齢は5歳か?」

「何っ!?」

ナオキが言った事に団員の一人が癇癪を起こした。

「いずれにせよ、貴様らなんかにこの島のポケモンを奪う資格はないよ。寝言も休み休み言いな!」

「野郎…」

「挑発に乗るな、ブラザー。」

団員の一人が制止した。

「全ての喜び、そして悲しみを分かち合う、それがシンオウに生きる全てのトレーナー、そしてポケモンの生き方だ。それを邪魔する者は許さない!」

ゲンはナオキの方を向いた。

「さあ、トライス!この勝負絶対勝つよ!」

「はい。行くよ、みんな!」

マグマラシ達はこくりと頷いた。





「ルカリオ、ボーンラッシュ!」

「マグマラシ、火炎放射!」

二人は初対面とは思えないような絶妙なコンビネーションを見せた。

「くっ…噂で聞いていたが、これほどのものとは…」

団員は多少の焦りを見せていた。

「波導弾!」

ルカリオは両手からエネルギーの塊を放った。

「くっ…ですが、まだやられてませんよ!」

「それはどうかな?」

「!?」

ルカリオが攻撃をぶつけた瞬間、ナオキがそれに続いて攻撃をぶつけた。

「何っ!?」

「戦いの時は油断は禁物だよ。」

ナオキ達の猛攻は続いた。





「まいった!すごいコンビネーションだ!おまえら二人、そしてポケモンと…相棒、帰ろうぜ!」

「だな、ブラザー。だいたい今ギンガ団がどうなってるかわかんないぜ!」

団員達は一目散に去っていった。



「きみのおかげで助かったよ。」

「いえ、それはお互い様ですよ。」

ルカリオも明るい笑顔で二人を見ていた。

「きみと一緒にいてとても面白かった。私も色んな場所で自分の力を試す事にするよ。」

ゲンは鋼鉄島を出る事を決意した。





ナオキ達は船に乗り、帰路に着いた。

「そういえばあの時、きみは私を見て何か不思議そうに思ってたね。あれはどうしてだい?」

ゲンは初対面の時にナオキが何やら不思議そうに見ていたのが気になっていたようだった。

「特に大きな事ではありませんよ。ただ…」

「?」

「誰かに似てるような気がしましてね…」

ナオキはふとある場所を見た。

そこにはナオキが行きに読んでいた本があった。



ミオシティに着いた後、ナオキはゲンと別れた。

ゲンはナオキから貰った板チョコをルカリオと食べながらナオキに手を振り、ミオシティを後にした。

その姿からナオキは、ひそかにある人物とゲンの姿を重ねていた。