新たにロズレイドを仲間に加えた一行は今回、ヨスガシティより先にある道を進む事にした。

かなりの遠距離になるため、今回は泊まり込みを前提にしているようだ。



ヨスガシティを抜け、しばらく歩くとそこに小さな町のような場所があった。

「へぇ~、道の中に町があるなんて珍しい光景だね。」

「形からして道だったのをそのまま町にしたようだな。」

ナオキは看板を見た。

「ここは『ズイタウン』。気ままに暮らせる町。こういう道でも町にできるからそれが強調されてるフレーズだね。」

その時だった。

「あ、そこのきみ達!」

「?」

ナオキが声のした方を向くと、一人の男性が走ってきた。

「どちら様で?」

「あ、紹介が遅れたね。私はあの新聞社の者なんだ。きみ達に伝えたい事があってね。」

「伝えたい事?」

「ここ最近、この辺りでポケモンを密猟する奴らが出没しているんだ。」

「密猟?」

記者はこくりと頷いた。

「そいつらは集団で、近くの森に行ってはポケモンを乱獲していると今世間で広まっているんだ。」

「それって、『G』のマークとかをつけたグループですか?」

すると、記者は首を横に振った。

「いや、きみが言いたいのは多分ギンガ団の事かもしれないけど、今回はそうじゃないんだ。奴らはギンガ団とは全く別の密猟団なんだ。」

さすがは新聞記者。

ギンガ団の存在もちゃんと知っているようだ。

「奴らは珍しいポケモンなら、トレーナーから奪う事もあるらしい。だから、きみ達も気をつけるんだよ。」

そう言って新聞記者は、ポケモンセンターの隣にある本部と思われる建物に戻っていった。



ポケモンセンターでナオキ達は待機した。

新聞記者から貰った資料で密猟団の詳細をあらためて調べた。

「特徴はこの服装みたいだね。」

「では、早速倒しにいきましょう!」

ロズレイドは張り切るように言った。

「いや、今はまだ行かない方がいい。」

「!?」

ナオキからの意外な一言にロズレイドは一瞬呆然とした。

「まだ、詳細がわからないから、ここは一旦様子見をした後に…。」

ナオキが話をしている途中…

「あなた、それでも守護神なの!?」

ロズレイドは叱責するようにナオキに言った。

「いや、私はそう言いたいんじゃなくて、今は…。」

ナオキが理由を述べる機会を与えないようにロズレイドは言った。

「あなたがここでのんびりしてたら、その間に被害が広まっちゃう事になりますのよ!」

「いや、だから…。」

ナオキが反論する暇もないまま、ロズレイドは結論づけるように言った。

「もういいですわ!あなたに頼らなくとも私だけで奴らを倒してみせますわ!」

そう言ってロズレイドは一人ポケモンセンターから出ていった。

「ち…ちょっとロズレイド…。」

ナオキが止めようとした時は、既にロズレイドはポケモンセンターの外だった。

「行っちまったな…。」

「まだ話があったんだけど…。」






ロズレイドは近くの森を歩いていた。

「全く…ナオキさんはいつからあんな臆病者になったのよ。」

とロズレイドが呟いた時…

「…!」

ロズレイドは木の陰に隠れた。

そこを数人の集団が通り過ぎていった。

ロズレイドは資料で見た密猟団の特徴を目の当たりにした。

「あいつらね…。」

ロズレイドは密猟団のいる場所へ向かっていった。



一行は別行動をする事にした。

ここは『カフェやまごや』。

カフェという割にはモーモーミルクしかないという一風変わったカフェである。

そこでナオキはモーモーミルクを飲みながら休息していた。

「ロズレイドはどこに行ったのかな…。私にもちゃんとした理由があるんだけど…。」

ナオキはロズレイドを気にかけていた。

「それにしても、ジョウト地方にあるこれがシンオウ地方にもあるなんて、もしかしてシンオウとジョウトって何か密接な関係があるのかな?」

ちなみにこれで5本目のようである。

その時…

「ねえ聞いた?さっきロズレイドが215番道路で密猟団のいる場所に向かっていったのを見たよ。」

「!?」

ナオキは、これを聞いた瞬間手を止めた。

「最終進化形態が相手なら頼もしいけど、あの窃盗団って確か…。」

ナオキはこの後のセリフを聞いた瞬間、驚愕した。

「ロズレイド…!」

ナオキは残ったモーモーミルクを一気に飲み、急いで『カフェやまごや』を後にした。





ロズレイドは密猟団と戦っていた。

「くっ…なんだこのロズレイド…。意外と強え…!」

ロズレイドは密猟団の繰り出すポケモンを次々と蹴散らしていった。

「これなら、私だけで十分ね。誰でもかかってきなさい!」

ロズレイドは少し見栄を張っていた。

その時…

「ポケモン1匹が何のようだ?」

「まだ残っていたのね!」

ロズレイドは声のした方を向いた。

「…!」

ロズレイドは一瞬表情を凍らせた。

そこにいたのは、ゴーリキーを連れた密猟団のボスだった。

ロズレイドは一瞬たじろいたが、体制を立て直した。

「あなたがボスね!相手が誰であろうと私ロズレイドが成敗してさしあげますわ!!」

ロズレイドは両手の花束を相手に向けた。

「覚悟しなさい!リーフストーム!!」

ロズレイドの花束からとがった葉っぱが物凄い風と共に打ち出された。

ゴオオオオオオ…

風の勢いに乗り、打ち出された葉っぱが相手に襲い掛かった。

「勝負ありね。今回はナオキさんの出番がなくてもよかったですわ。」

ロズレイドは決めポーズをするように両手の花束をクロスさせた。

その時…

「…!」

ロズレイドは何かを感じ取ったように後ろを向いた。

そこにはリーフストームを喰らったのにピンピンしているゴーリキーの姿があった。

「…で?それがどうした?」

「え…?」

ロズレイドが驚愕した瞬間…

ゴッ!

ロズレイドは♀でも容赦ない形で殴り飛ばされ、地面に引きずられるようにたたき付けられた。

「っ…!」

ロズレイドは苦しそうにむせながら体を支えるので精一杯な形で体を持ち上げるように上げた。

「はっ…!」

ロズレイドの見た先には目の前まで来ているゴーリキーがいた。

ロズレイドは蛇に睨まれた蛙のように体がすくんで動けなくなっていた。

両手の花束は恐怖と体中の痛みでブルブルと震えていた。

「その程度でオレ達を倒すだと?笑わせんじゃねえ!まあ、いい…ここに一人で乗り込んできた事を後悔するんだな!」

ゴーリキーは攻撃体制になった。

(しまった…リーフストームは使った代償としてしばらく特殊攻撃の威力を下げてしまうんだったわ…だからあの時全くくらわなかったのね…)

ロズレイドは図に乗りすぎていた事を痛感した。

「くたばれ!!」

ゴーリキーはロズレイドに向かって攻撃を仕掛けた。

「……!!」

ロズレイドはもう逃げられないのを悟り、目を固くつぶった。

その目元には傷の痛みと自分の身勝手な行いによって起こった事への後悔による涙が滲み出ていた。

そんな抵抗する気力もない虫の息のロズレイドに容赦ない攻撃が襲い掛かった。


その時…

ビシャアアアン!!


「!?」

「!?」

ゴーリキーとロズレイドの間に稲妻が轟いた。

その稲妻により、ゴーリキーは攻撃をとめてしまった。

「な…何だ今の雷は…。…!?」

密猟団のボスがふと見てみると、そこにロズレイドの姿がなかった。

「ロズレイドがいない?どこに行きやがった!?」

密猟団のボスは辺りを見回した。

「ここだよ。」

「!?」

密猟団のボスは声のした方を向いた。

そこにはロズレイドを左腕でからませるように持っているナオキがいた。

「私の大事なパーティーに何をしてくれてるのかな?元々悪いのは貴様らだっていうのにそれを成敗しに来たレディーにここまで手を上げるなんてどんだけあくどいんだ?ロズレイドは今日調子が上がらないみたいだから、ここからは『バトンタッチ』でお願いいたす!」

ロズレイドは目をナオキの方に向けた。

「ナ…ナオキさん…。」

「多少遅れたけど、一応間に合ったようだね。」

ロズレイドにそう言った後、ナオキはロズレイドを降ろしてボスの方を向いた。

「何だおまえは?そのポケモンのトレーナーか?」

「まあ、それに相当すると言っていいかな?」

「何だと?身の程知らずのロズレイドといい、そのふざけたコスプレをした小僧といい、どこまでオレをこけにしたら…」

ボスの話の途中で割り込むようにナオキは言った。

「あのさ、そういうごてれつはいいからさ、さっさとかかってきてってば。どうせ私が勝つんだからね。」

ナオキの余裕こいた言動とさっきから気に食わない二人の事にボスは癇癪を起こした。

「なら、さっさとくたばれ!!」

さっきよりも物凄い勢いでゴーリキーは襲い掛かった。

しかし、ナオキは表情を全く変えなかった。

ナオキは一言だけ言った。

「それって攻撃のつもりなの?」

言い終えた瞬間…

ビシャアアアアン!!

いつの間にと思うほど物凄い斬撃と電流がゴーリキーを襲った。

「がああああああ!!!」

ゴーリキーの全身が電流に包まれた。

全ては一瞬、いやそれを越える刹那のようだった。

「は…早…すぎ…る…。」

ゴーリキーは全身から煙を上げ、大木が切り倒されるようにどっと倒れ込んだ。

「ギンガ団に限らず、ポケモンを使って悪事をする人もいる…。悪の組織だけが悪行の全てじゃないってわけか…。」

ナオキはトライス・ソードを鞘におさめ、ロズレイドの方を向いた。

「あ…。」

ナオキの振り向いた時の少し険しい顔にロズレイドは一瞬ビクッとした。

しかし、ナオキはすぐに明るい表情に戻り、優しくロズレイドに言った。

「ロズレイド、大丈夫だった?」

「……ええ…。」

ロズレイドは気まずそうに小さく頷いた。





「ねえ聞いた?あの密猟団が半日のうちに全滅したんだって!捕まったポケモンも全員解放されたみたいだよ!」

「誰がやったんだ?」

「もしかしてあのロズレイドがやったんじゃないのか?」

「すごいよ、あのロズレイド!」

周りはロズレイドを救世主のように賞賛していた。

あの新聞社も明日の記事にロズレイドの事を載せるようだ。

「随分と賞賛されてるみたいだよ、君の事。」

「………。」

しかし、ロズレイドは暗い顔をしていた。

「全く…これでわかったでしょ?やみくもに攻め込めばいいとは限らないんだって。」

「………。」

「君は一辺こういう目に合わなきゃわからないの?もしかすると、こうなるかもしれないから作戦を考えてその後にあらためて一緒に倒そうって私は君に言おうとしたんだよ。」

「ごめんなさい…。あなたの言いたい事も聞かずに私だけであんな事をしてしまって…。またあなたに迷惑をかけてしまったわ…。」

ロズレイドは悲しそうに下を向きながら言った。

「…でもさ…。」

「?」

少し間を置いた後、ナオキは言った。

「君が無事でよかったよ。それが何よりの事だ。それに、君のおかげで早く片付ける事ができたからね。今回は本当に君のおてがらだよ。」

「……。」

ロズレイドは何も言わずナオキを見ていた。

厳しさの後に現れた優しさ。

そんなナオキの思いやりに、ロズレイドはひそかに胸を撃たれていた。

「だいぶやられたみたいだね。今日はエレメンタルに戻らないから、ポケモンセンターに行って治してもらおうか?」

「…ええ。」

ロズレイドはこくりと頷いた。

本当に優しい人は、間違いがある時は正直に叱り、それを正した時に褒める者を言う。

叱った後にはそれを上回る本当の優しさが待っている。

ただ相手に優しい扱いをする事だけが優しさの全てではないのだ。

「マグマラシ、レントラー、ムクホーク、今日は近くのポケモンセンターで夜を明かそう。今日はかなり遠くまで来ちゃったからね。」

ナオキはあえてロズレイドを理由にしなかった。

「………。」

ロズレイドは小さく微笑みながらナオキを見ていた。