「ゲームだと?」

「そうだ。」

ナオキは話を続けた。

「ルールは簡単。貴様のそのポケモン達の攻撃を私達が受ける。そしてその攻撃に私達が耐え抜いたら私達の勝ち。負けを認めてもらうよ。」

「ト…トライス!キミ本気なの!?」

コウキは慌てた様子でナオキに言った。

「奴らは私達を要注意人物にしている。これぐらいの条件にしなきゃ飲んでくれないさ。」

「ほぅ…なるほど…。」

団員はひそかに思っていた。

(ここで奴らを倒せば一気に幹部、いやボスに昇格してもおかしくないな…。)

そう思っていた団員は言った。

「いいでしょう。そのゲームのります!」

「!」

コウキは驚愕した。

「トライス!本当にやる気なの!?」

「本気じゃなかったら今頃私の方から言わないでしょ。それに言ったでしょ、『考えがある』ってさ。」

「…?」

コウキはナオキの考えが理解できなかった。

「では誰にしますか?」

団員がそう言った時、ナオキは言った。

「誰が『1人だけ』なんて言ったの?」

「!?」

ナオキは自身を持った様子で言った。

「私の計算が正しければ…6人全員の攻撃に耐えられる!!」

「何ですって!?」

「トライス!何言ってるの!?」

コウキは団員よりも慌てた様子でナオキに言った。

「あともう一つ重要事項を言っておくけど、貴様のポケモンのヘナチョコ攻撃じゃあ私達を越えてコウキくんにダメージを与える事もできないよ。全力を込めた攻撃にしなくちゃ意味ないかもね。」

ナオキの余裕を持った『ちょうはつ』に団員は癇癪を起こした。

「お…おのれ…。ならばいきますよ!今更後悔しても知りませんからね!」

「コウキくん、私の後ろに隠れてて。」

「え?」

「もしも万が一の事があっても君だけは助けてあげるよ。だから私の後ろに隠れてて。」

ナオキの様子からコウキは今までの事と同様本気で言ってるのだと気付いた。

「……わかった。」

コウキはナオキの背後に隠れた。

「さあ来い!!」

「いいでしょう!我々ギンガ団をこけにした事を後悔してください!!」

そう言って団員はポケモン達を一斉に攻撃体制にした。

ナオキはマグマラシとレントラーの方を向いた。

二人はこくりと頷いた。

次の瞬間…

「くらいなさい!!!」

団員のこの一声と共にポケモン達が一斉に攻撃を繰り出した。



ドガアアアアアアアアアアアアアアン!!!

物凄い爆音と共にポケモンの攻撃がナオキ達を襲った。

コウキはナオキにすがりついたまま目を固くつぶった。

辺りが真っ白な閃光に包まれた。





閃光がおさまると辺りは再び静まり返った。

静寂を破ったのは、ポケモン達が息切れをする声としばらくして発した団員の声だった。

「さすがにこれだけ全力を出したら息があがりますね…。だが、これで奴らは影も形も…。」

それを言った瞬間…

「…!?」

団員は目の前の環境を見て驚愕した。

煙が薄くなる中、その中に微かな影が見えた。

「何っ!?」

団員がそう言った時、煙の向こうから声が聞こえた。

「この勝負…。」

「!?」

この一言に団員はア然とした。

「私達の勝ちだ!!」

そう言ったのはナオキだった。

「そんなバカな…。」

団員がア然とした様子で言った時、ナオキは決めるように言った。

「残念!影も形も残ってるんだ!この通り!」

煙が消えた先にいたのはあれだけの攻撃を受けて、全く無傷の状態で立ってるナオキ達の姿だった。

ナオキはわざとらしく今思い出した様子で言った。

「あ、そうそう。言うのを忘れてたんだけど、さっき技を放つ前にこのカードを使ったんだよね。」

ナオキはいつの間にか右手に持っていたカードを見せた。

よく見ると、ナオキ達の周りに薄い膜のようなものが張られている。

「カード真拳防御奥義『ホーリーライフバリアー』。このカード発動中はあらゆるダメージ全てを防ぐ事ができるんだ。」

「!」

団員は何かに気付いたような反応をした。

「…え?」

コウキは目の前の光景を見て一瞬自分の目を疑った。

「ね?防げたでしょ!」

呆然としているコウキにナオキはパチッと片目を閉じながら言った。

その背後で団員はわなわなと震えていた。

「な…何のつもりですか…?」

団員はさっき以上の癇癪を起こしていた。

するとナオキはわざとらしくキョトンとした様子で団員に言った。

「え?確かに私はあの時『私達が耐えたら』とは言ったけど、誰も『何も使わないで』とは言ってないよね?」

「!」

団員はようやく測られたという事に気付いた。

「そうである以上、どんな攻撃も防ぐカードを使おうが私達の勝手でしょ?」

「こ…このイカサマ野郎が…。騙したのですね…!」

「貴様に言われたくないね。強いて言うなら、それはお互い様だ。」

「ええい!もう遊びは終わりです!」

団員がそう言うと、ポケモン達が一斉に飛び掛かった。

「ト…トライス!」

コウキは慌てた様子でナオキに言った。

「大丈夫だよ、コウキくん!君もポケモンを出して!」

「!?」

ナオキがこくりと頷いた時、コウキは一瞬黙り込み、そしてナオキに言った。

「…うん!行け、ナエトル!」

コウキはナエトルを繰り出した。

「その意気だよ!みんな行こう!」

「おお!」

マグマラシとレントラーも後に続いた。






「そ…そんなバカな…。」

団員は目の前の光景にただア然としていた。

そこにあったのは全滅した自分のポケモンとそこに立ち尽くすナオキとコウキ、そしてそのポケモン達の姿だった。

コウキは閃光的に何かに気がついた。

「そうか!さっきトライスがあのゲームを提案したのは、ポケモンに体力を使わせるためだったのか!」

「そういう事!全ては120%勝てる戦いにするためのね!」

ナオキはコウキにパチッと片目を閉じながら言った。

「くっ…まさかこっちが騙されていたとは…。」

団員はポケモン達をひっこめた。

「今回は勝てたからっていい気にならないで下さいよ!今日のところは引いてあげます!」

団員はそういって一目散に逃げていった。

コウキはナオキに言った。

「ありがとうトライス。キミのおかげで助かったよ。キミがああいう事をしてくれなかったらオレ、絶対勝てなかったよ。」

コウキがそう言った時、ナオキは言った。

「いや、勝てたのは私のおかげじゃないよ。」

「え?」

「私がやったのは奴のポケモンをばてさせる事だけで、そうしたからといって必ず勝てるとは限らない。奴のポケモンを倒せたのは君の力だよ、コウキくん。」

「オレの力…?」

ナオキは小さく微笑みながらこくりと頷いた。

コウキは目をキラキラさせたような様子でナオキに言った。

「うん!!ありがとうトライス!!」

ナオキはコウキの目がキラキラ光っているように見えたのは涙をにじませているからだという事に気付いていた。

しかし、それと同時にそれが自信を持てた事に対する嬉し涙だという事にも気付いていた。

自信と嬉しさに満ちあふれたコウキの目には、わずかに光る嬉し涙がにじんでいた。