4人はギンガ団のいるという場所へ向かった。

シムルグウイングで空を飛べるようになっているナオキはマグマラシを背中に、レントラーを腕に抱えながら移動をしていた。

その様子をムクホークはじっと見ていた。

(あいつ…空を飛べるとはいえ、あれだけのポケモンを背負って重くねえのか?)

ムクホークはしばらくその様子を見ながら飛んでいた。

その中でムクホークは何かを考えていた。



しばらくして一行は地面に降りた。

「そろそろアジトのある範囲内だから狙い撃ちされないようにここから先は歩いていこう。」

そうナオキは言って、一行は森の中を歩いた。

「………。」

ムクホークは飛びながらしばらくナオキを見続けていた。





「ここみたいだよ。」

「建物にあるマークからしてそうみてえだな。」

4人の立ち止まった先にはギンガ団のマークがある大きな建物があった。

「団員達も中にいる。攻め込むなら今がチャンスだよ。」

レントラーは目を光らせながら言った。

「OK。それじゃあ、早速突入しよう。」

4人はアジト内に突入した。

ムクホークは相変わらずナオキを見続けていた。





アジト内にサイレンが響き渡る。

「侵入者だ!」

「しかも、侵入者はあの要注意人物らしいぞ!」

「ここを嗅ぎ付けられるなんて…奴らはいったい何者なんだ?」

団員達は慌てて戦闘体制に入った。

「みんな、早速いくよ!」

「おおー!!」

マグマラシとレントラーは高々に声を上げた。

3人は一斉に向かっていった。

ムクホークは少し遅れる形で突撃していった。

団員達は一斉にポケモンを繰り出した。

「相変わらずそういう寸法か。そんなやり方で私達を倒せると思わないでほしいね。」

ナオキはトライスソードを構えた。

「いくぞ!」

ナオキは団員達のいる方へ真っ向から向かっていった。

「ズバット、きゅうけつ!」

「グレッグル、どくづき!!」

団員のポケモンがナオキに飛び掛かった。

「私だけだと思わないでほしいね。」

「何!?」

そう団員が言った瞬間、ナオキの後からマグマラシとレントラーが現れた。

「くらえ!火炎放射!」

「かみなりのキバ!」

「トライス・ライトニング!」

3人の一斉攻撃が団員のポケモンを襲った。

「くっ…ですが、これごときでは怯みませんよ!」

団員達の攻撃は続いた。

「あれ?ムクホークは?」

ナオキは辺りを見回した。

ムクホークは一人で戦っていた。

「ムクホーク、君だけじゃ力不足だよ。私達も行くから待ってて。」

そう言ってナオキはムクホークの方へ行こうとした。

「手出しする必要はねえ!」

「!?」

ムクホークからの一言にナオキは一瞬動きを止めた。

「こいつはオレの獲物だ!おめえらの力なんか借りなくても倒せるぜ!」

「ち…ちょっと、ムクホーク…」

「いいから手出しすんじゃねえ!」

そう威嚇するように言った後、ムクホークは一人で事を進ませた。

「なんだあのムクホーク。やっぱあんな奴仲間にできねえよ。」

マグマラシは呆れたように言った。

「…いや、それは違うよ。」

「?」

ナオキの意外な一言にマグマラシはキョトンとした。

「ムクホークは確かに自分勝手な事をしてるけど、少なくとも『私達と一緒に戦ってる』のは変わりない。もし、ムクホークが自分勝手なら今頃戦わずにここから抜け出してるでしょ?」

「…!」

マグマラシは『そういえば…』という反応をした。

「仲間っていうのは、ただ入っただけじゃなれない時もある。それをどう築き上げるかが大事なんだ。」

「…!」

マグマラシは何かに気付いたような仕草をした。

(そうだったな。オレも最初はただ一緒にいただけで、最初からこういう関係になったわけじゃないもんな…)

マグマラシはナオキと出会って間もない頃の事を思い出した。

「わかったぜ。いざとなったら…。」

マグマラシは『わかるよな?』と伝えるようにあえてそこから先を言わなかった。

ナオキはこくりと頷いた。

「よし、いくよ!」

「おう!いくぜ!」

2人はあらためて戦闘を再開した。

ムクホークは相変わらず一人で戦っていた。

「たねポケモンだからか?口ほどにもねえぜ!」

そう言ってムクホークはポケモンを蹴散らしていった。

その時…

ドガッ!

「がっ!」

ムクホークの背中に攻撃が当たった。

「だ…誰だ!?」

ムクホークは後ろを向いた。

しかし、それはさっきまで蹴散らしていたポケモンに背を向ける事になってしまった。

ムクホークの見た先にはスカンプーがいた。

「てめえか!ふいうちとはやってくれんじゃねえか!」

ムクホークはスカンプーのいる方を向いた。

「てめえから先に片付けてやる!!」

ムクホークはスカンプーに飛び掛かった。

その瞬間…

「ぐあっ!!」

再びムクホークの背中に攻撃が当たった。

「し…しまった…。後ろの奴に気をとられて隙を見せちまった…!」

ムクホークは完全に挟まれてしまった。

「くっ…。」

ムクホークはあの時の事を思い出した。

(こいつはオレの獲物だ!おめえらの力なんか借りなくても倒せるぜ!)

(手出しすんじゃねえ!)



「あんな事言うんじゃなかったぜ…。もうあいつらはオレを助けにはこねえだろうよ…。」

ムクホークはあの時の事を後悔していた。

ムクホークにポケモン達が襲い掛かった。

ムクホークは反撃するも、それを倍返しされるように袋だたきを受けた。

(強いからって過信はするもんじゃねえな…。同じ事をまた思い知る事になるなんて…オレもたかが知れてるぜ…。)

満身創痍のムクホークにポケモンが襲い掛かる。

ムクホークは諦めたように、その場に崩れた。

ポケモンの攻撃がムクホークに襲い掛かった。



その時…

ガキィィン!

トライスソードがその攻撃を受け止めた。

その音でムクホークは顔を上げた。

「防いだつもりだろうが、まだいるぞ!」

さらにポケモンの攻撃がムクホークに襲い掛かった。

「マグマラシ、レントラー!」

ナオキがそう言うと、二人は同時に飛び掛かり、攻撃を防ぐと同時にポケモンを攻撃した。

「!」

その時、ナオキはふと後ろを見た。

残っていたポケモンがムクホークに襲い掛かったのだ。

トライスソードを出すにも、二人に任せるのも間に合いそうになかった。

「くっ…」

ムクホークは固く目をつぶった。

ドガッ!

攻撃がムクホークを襲った。

ムクホークは恐る恐る目を開いた。

すると…

「…!」

ムクホークは驚愕した。

さっきの攻撃をナオキが代わりに受けていたのだ。

「ぐっ…大丈夫?ムクホーク。」

「…。」

ムクホークは小さく頷いた。





戦いはしばらく続き、ついにギンガ団のアジトは壊滅した。

団員達はそのまま一目散に逃げていった。



戦いを終え、しばらくした後、ムクホークはナオキに言った。

「なぁ…ナオキ…ちょっと聞きてえ事があるんだけどよ…。」

「?」

少し間を置いてムクホークは言った。

「…自分じゃねえ誰かのためにしてやる事に何の意味があるんだ?」

ムクホークはようやく心に閉まっていた事をナオキに打ち明けた。

ナオキは小さく微笑みながら言った。

「私が誰かのためにしてあげた事はすぐにではないけど、やがて自然に私のもとに幸福として戻ってくる。だから、自分ではない人のために何かをしてあげる事は、その人のためだけになるとは限らないんだよ。」

「誰かにした事が自分の元に幸福として帰ってくる?」

「そうだよ。ただ、それは必ずしも起きる事じゃないけどね。」

「? じゃあ、なんで自分に見返りがないのに、それでも進んで誰かのためにあんな事とかをしてやれるんだ?」

「それは…今言える事で表すなら…」

「?」

「仲間の事を大切に思い、そして何より仲間が大好きだからかな。」

「…!」

ムクホークはナオキの一言にぴくりと反応した。

「例え何の見返りをしてくれなくても、私がした事を喜んでくれる仲間を大切にしたいから、そして何より、そんな仲間の事が大好きだから私はこうやって誰かのために何かを進んでしてあげられるんじゃないかな。」

「……。」

ムクホークはしばらくナオキを見つめた。

その後、ムクホークは目を閉じながら顔を下げ、小さく微笑みながら囁くように言った。

「…仲間…か…。」





「よし、アジトも壊滅した事だし、今日はもう帰ろうか。」

「そうだな。」

マグマラシがそう言った時、ムクホークがナオキに言った。

「いや、オレはまだ帰らねえぜ。」

「どうしてだい?」

「ちょっと行きたいところがあっからよ。すぐに戻るぜ。」

そう言ってムクホークはどこかへ飛んでいった。



ここはムクホークがいた場所。

ムクホークが一人占めしていたオボンの実の木にいつかのパチリスがいた。

「あの日からムクホークがいなくなったから、安心して木の実がとれるようになったわ。結果は予想外だったけど、ナオキさんに頼んでよかったわね。」

パチリスがそう独白した時…

「オレがどうしたって?」

「!」

パチリスが振り向くと、そこにはムクホークがいた。

「ム…ムクホーク!」

パチリスは慌てていた。

今頃になって報復をしに来たのかと瞬時に思ったからだろう。

すると…

「この木はオレがいなくなっても相変わらずみてえだな。」

「え?」

パチリスはキョトンとした。

今までのムクホークだったら、真っ先に襲い掛かってくるはずなのに、その気配を感じなかったのだ。

「パチリス。あん時は本当悪かったな。」

「え?」

「自分がちょっと強いからって図に乗っちまって、気がついたらこんな悪行をするポケモンになっちまってみんなをひどい目に合わせたからな…。あいつに負けた時にひそかにオレも気付き始めてたみてえなんだ。オレの今のやり方はどうなのかってよ…。」

パチリスは一部ぽかんとしたような様子でムクホークを見ていた。

「だからよ、これからはその木の実はもう一人占めしねえよ。おめえらも好きにとれるよう開放しとくぜ。今オレができんのはそんぐらいだろ。他の奴らにも伝えといてくれな。」

ムクホークはそう言って背を向けた。

パチリスはいまだに呆然としたような様子でムクホークを見ていた。

「…なあ、パチリス。」

「?」

ムクホークは少し間を置いて言った。

「またオレがここに戻ってきたら…オレをおめえらの仲間に入れてくれないか?」

「…!」

パチリスはここでようやく表情を変えた。

ムクホークからの初めての頼み事だったからなのかもしれない。

パチリスはしばらく何も言わずにいた。

そして、初めて表情を明るくして言った。

「…うん!わかったわ。みんなにも伝えておく。あなたが私達の仲間になりたいって言ってたってね。」

ムクホークはパチリスの方を向いた。

「ありがとよ…。」

ムクホークはパチリスにそう言うと、ふと上を見上げた。

ムクホークは飛び上がり、木に実っているオボンの実を一つ掴み、パチリスの元に舞い降りた。

「いい実があったぜ。やるよ。」

ムクホークはパチリスにオボンの実を渡した。

その実は、とても大きく他よりもかなり熟していた。

「すごくおいしそうな木の実!ありがとう、ムクホーク!」

パチリスは目をキラキラさせながら言った。

「そんじゃあ、またな。」

そう言ってムクホークは空に飛び立っていった。



ムクホークは空を飛びながら思っていた。

「何で今まで気付かなかったんだろうな…。他の奴にいい事をしてあげんのがこんなにいい事だったなんてよ。」

ムクホークは思い出していた。

「あいつも…自分のためじゃなく、誰かのためにやってるから仲間が寄ってくるんだよな…。」

ムクホークはナオキの行いをもっともらしく受け止めていた。

「オレも…目指してみるぜ。誰かのために尽くせる存在になるようにな…。」

これからの仲間のため、そして今の仲間のための思いを胸に、ムクホークは仲間の待つ場所へ向かっていった。