二人はステージへ続く階段を上っていった。
初挑戦、唯一男性である事、そしてトリを務める存在になった事へのプレッシャーが一気に二人に降り懸かった。
二人はステージに立った。
「ここで挽回しよう、マグマラシ!」
「ああ、ここまで来た以上、今更引き下がれねぇからな。」
二人の出番がついに回ってきた。
「最後にエントリーナンバー4、ナオキさんとマグマラシです!」
ナレーターの声と共に二人はステージに上がった。
「それではダンスの方をお願いします!」
「はい。ミュージック、スタート!」
ナオキの掛け声と共に会場内に音楽が鳴り始めた。
流れた曲は、BoAの『VALENTI』だった。
ダンスにはピッタリの曲と言う事ができよう。
イントロの激しい音楽と共に曲が始まった。
その瞬間…
「!?」
会場は一時騒然とした。
観客だけでなく、参加している人とそのポケモン、そして審査員でさえ、開いた口が塞がらない様子だった。
二人は息が合うように、キレのいい独創的な踊りを見せていた。
ナオキは歌詞のリズムに合わせるようにぎくしゃく感の全くない身振り手ぶりを見せていた。
その動作は、とてもリハーサルをしてないとは思えないほどのものだった。
マグマラシはナオキの踊りの中にあるひそかな合図に合わせるように、自分の技を歌詞に合わせるように繰り出した。
『両側から燃える花火みたいだった』という部分で、マグマラシはできる限り両側に飛ぶようにひのこを放った。
その他にも歌詞が止まった瞬間に火炎放射を放つなど、リズムの合ったパフォーマンスを見せた。
そしてサビの場面。
ナオキは両手を合わせるように上に上げ、それを降ろして腰に手を当てた後、意外性を思わせるような腰振りをして、両手をビシッと下に向け、歌詞に合わせるようなアクションをした。
マグマラシも閃光的に思い付いた動作をリズムに合わせるように披露した。
ナオキは両手を再び合わせるように上に上げ、その後、一回転をして両腕を横向きにして左右に振る動作をした。
マグマラシもそれに合わせて一回転をした。
その際、アートを描くようにひのこを放った。
マグマラシの放ったひのこは、回転の動きを線のように描いていた。
最後のサビの部分。
詰まる事なく、二人はダンスを披露して、最後の部分で決めポーズをした。
その後、間奏が流れた。
ダンスはまだ終わっていなかったのだ。
歌詞がなくても、二人は音楽を頼りにそれに合わせた踊りを見せた。
その踊りに一瞬の乱れもなかった。
会場の観客、審査員、そして参加しているトレーナー達はいまだに開いた口が塞がらない状態でいた。
周囲のこの状態には一瞬の反応も見せず、二人は踊り続けていた。
間奏のリズムに合わせてナオキは手拍子をした。
歌詞が始まった時も踊りはズレず、二人はキレのいい踊りを見せた。
音楽に合わせた身振りを披露した後、ナオキとマグマラシは同時に勢いをつけた二回転をした。
マグマラシはその回転と同時にアートを描くようにひのこを撒き散らした。
このシーンになった時、会場は今まで以上のボルテージに包まれた。
その環境になっても二人は反応も見せずに踊りを続けていた。
その様子を参加者達はただ呆然と見ていた。
その中にはヒカリの姿もあった。
(ナオキくん…本当に初めてなの…?)
ポフィンの事どころか、ポケモンコンテストがある事自体今日初めて聞いた事が本当なのかと疑うような様子でヒカリは二人のパフォーマンスを見ていた。
そうしているうちに、曲は歌詞の部分を終え、最後の間奏に入った。
間奏の中で時折入ってくる声に一瞬の乱れもない様子で二人は踊りを続けていた。
時折、リズムとは少しズレているような身振りも見せたが、寧ろそれがリズムに合っているような動作だった。
そして曲もついに最後のメロ部分に入った。
ナオキは最後の声が出終わった後、音楽に合わせて足踏みをした。
その足踏みもリズムがピッタリ合っていた。
マグマラシはナオキが足踏みをしている間に踊りをしながら引っ込めていた炎を再び燃え上がらせた。
何かのスタンバイをしているようである。
足踏みに合わせていた間奏が終わり、終わりの音楽が流れた。
その瞬間、マグマラシは体を横に回転させた。
最後の音楽はキラキラと光るものが雪のように舞うのをイメージさせる音楽だった。
それが流れたのと同時にナオキもマグマラシに合わせるように体をターンさせるように一回転させた。
その瞬間、マグマラシから小さいひのこが飛び、それがまるで紙吹雪のように舞った。
それはまるで、紙吹雪が舞う形で踊りを終えるようなアートを描いているようだった。
一回転したのを最後に二人はフィニッシュを伝えるようにポーズを決めて踊りを終えた。
音楽が終わった瞬間、会場に拍手と激励の声が響き渡った。
観客だけでなく、審査員、そして参加者達も拍手をしていた。
特に大きなアクションもやらず、小さくお辞儀をして二人はステージを降りた。
ステージを降りると、真っ先にヒカリが走ってきた。
「ナオキくん、すごいじゃない!あんなすごいダンス私今まで見た事なかったわ!」
「そう?まあ、ムードを作るために時折歌唱とか踊りをやってた事はあったけど…。」
ナオキはこういう音楽に関する事をするのがひそかに好きだった。
歌をポケモンに披露したり、ノリノリと言っていいくらいの勢いで踊りを披露したりする事がシンオウ地方に来る以前からひそかにあったのだ。
どんな形であれ、やっていたという事実がなければこれほどのパフォーマンスは披露できない。
コンテスト自体は出た事はないが、ナオキはひそかにそれに合った事はやっていたのだ。
「マグマラシとの息もピッタリだったわ。あなたとマグマラシってそれだけ長い付き合いなのね。」
「まあね。こんな私に今日まで一緒にいてくれた存在だからね。」
ナオキはマグマラシの方を向いた。
マグマラシも小さく微笑んだ様子でナオキの方を向いた。
ナオキは腰を降ろしてマグマラシと顔を合わせた。
「よくやったねマグマラシ!」
「おう!ナオキの動きについていけるか不安だったけど、オレはできる限りやったぜ!」
ナオキはこくりと頷き、手の平を向けるような形で手を出した。
マグマラシはナオキがやりたい事がすぐにわかった。
マグマラシは前足を出して、ナオキの出した手の平に向かって振った。
お互い息が合うように同時に手を振り、二人はハイタッチをした。
ダンスの審査は他と大きな差をつける高得点だった。
それは今まで誰も取った事がない程のものであった。
しばらくして審査結果の発表が行われた。
ヒカリは2位、そしてナオキは3位だった。
ナオキがやっていた事は、決してグダグダという感じのやり方ではなく、ちゃんと出された内容通りにやっていたのだが、今回は周りが高いレベルだった事が理由らしく、それでも届かない程ポイント数が高いトレーナーが多かった。
今回何の練習もやらずに挑戦したナオキとは真逆に、コンテストの練習をしたり、ポフィンで美しさを上げたりしていたヒカリでも2位だったというのがそれを強調していた。
「私もまだまだね…。」
ヒカリはかなりしょんぼりしていた。
ヒカリはひそかに目元を拭うような仕種をしていた。
ヒカリはふと後ろを見た。
そこにナオキの姿があった。
「ナオキくーん。」
ヒカリの声にナオキはヒカリのいる方を向いた。
「あ、ヒカリちゃん。そこにいたんだ。」
ヒカリがナオキのもとに駆け寄ってきた。
「ナオキくん、今日のパフォーマンス本当すごかったわ。特にあのダンスパフォーマンスがすごかったわよ。」
「まあ、それでも結局3位だったけどね。ダンスの他でも稼がなきゃいけないってわけだね。」
「でも本当にすごかったわよ。次は他のパフォーマンスをやればきっと優勝できるわ。」
ヒカリは明るい表情でナオキに言った。
ナオキはひそかに気付いていた。
ヒカリの目元が光っている事、そして頬に涙が伝った後がある事に…
そこからナオキは思った。
ヒカリはコンテストで惜しくも2位だった事に対する悔しさをナオキと話す事によってどうにか紛らわそうとしていたのだ。
ヒカリがコンテストで優勝を目指していたという事があらためて伝わる。
ナオキはヒカリが話し終えたのを見計らい、ヒカリに言った。
「ヒカリちゃん。」
「?」
ヒカリが『どうしたの?』という反応を示した後、しばらく間を置いてナオキは言った。
「…私も…もう一つ…目指してみたいものができたような気がするよ。」
「え?」
ヒカリがそう言った時、ナオキは少し間を置いてヒカリに言った。
「まあ、今回は偶然ダンスがよかっただけかもしれないけど…。でも、私ももっと頑張れば今度は2位にはなれるかもしれないからね。君みたいに頑張れば…。」
「私…?」
「そうだよ。もし、それだけ頑張らなかったら、あんなに悔しがったりしないからね。」
「…!」
ヒカリは気付いた。
ナオキはあの時見てたか見てなかったかは関係なく、自分がさっきひそかに泣いていた事に気付いていたという事に…
「君が頑張ってる以上、私も頑張らなきゃいけないね。また、機会があったらコンテストに参加してみるよ。」
そう言ってナオキは背を向けた。
一旦足を止めると、ナオキは振り返った。
「今日は色々ありがとう、ヒカリちゃん。またね!」
そう言ってナオキは再び背を向けて歩いていった。
ナオキはマグマラシとレントラーに何か言われてるようだった。
おそらく『いつまで待たせてんだよ』と言われているのだろう。
ナオキはマグマラシに話し掛けるのに乗じるかのように、ヒカリの方を向いた。
ヒカリが『あ…』という反応をした後、ナオキは小さく手を振り、マグマラシ達と共にその場を後にした。
ヒカリはナオキがいなくなった後もナオキがいた所を見ていた。
ヒカリはナオキが言っていた事を思い出していた。
そこからヒカリは感じていた。
ナオキが自分を応援している事。
そして、ナオキが自分をきっかけにもっと頑張ろうという気持ちになれたという事を…
きっかけになるのは大きな事を成し遂げなければ相手にそういう形で伝わらないものである。
それがナオキに伝わり、そしてきっかけになった事は、ヒカリの頑張りが大きいものだったという事をまさしく強調するものだったのだ。
ヒカリはしばらく何も言わず、空を見上げていた。
ヒカリの中に、ひそかに今までになかった何かが生まれたのをヒカリは感じていた。
ヒカリは、ナオキに伝えるように囁いた。
(ナオキくん…私もあなたと同じくらい…いえ…それ以上に頑張れるようにしてみせるわ。だから…あなたも頑張ってね…。)
微かに夕焼け空になった空はヒカリを優しく照らし続けていた。
ナオキはマグマラシ、レントラーと共に帰路に着いていた。
「今日は夜までにエレメンタルに帰れるか?」
「テンガン山の道のりはだいたいわかるから大丈夫だよ。」
「それじゃあ、暗くならないうちに早く帰ろう。」
「そうだね。」
そうナオキが言った後、ナオキはしばらく何も言わずに歩いた。
その後、ナオキはマグマラシ達の方を向いた。
「マグマラシ、レントラー。」
「?」
二人は『ん?なんだ?』という様子でナオキの方を向いた。
しばらく間を置いて、ナオキは二人に言った。
「これからももっと頑張っていこうね、マグマラシ、レントラー。色んな事をね…。」
ナオキがそう言うと、しばらく間を置いて二人は言った。
「…ああ。」
「オレもこれからキミに一日でも早く着いていけるように頑張るよ。」
ナオキは小さく微笑み、こくりと頷いた。
夕日はだいぶ沈み、日の色はさっきよりも濃いオレンジ色になっていた。
明るい夕焼け色に彩られながら、三人は帰り道を歩いていった。
初挑戦、唯一男性である事、そしてトリを務める存在になった事へのプレッシャーが一気に二人に降り懸かった。
二人はステージに立った。
「ここで挽回しよう、マグマラシ!」
「ああ、ここまで来た以上、今更引き下がれねぇからな。」
二人の出番がついに回ってきた。
「最後にエントリーナンバー4、ナオキさんとマグマラシです!」
ナレーターの声と共に二人はステージに上がった。
「それではダンスの方をお願いします!」
「はい。ミュージック、スタート!」
ナオキの掛け声と共に会場内に音楽が鳴り始めた。
流れた曲は、BoAの『VALENTI』だった。
ダンスにはピッタリの曲と言う事ができよう。
イントロの激しい音楽と共に曲が始まった。
その瞬間…
「!?」
会場は一時騒然とした。
観客だけでなく、参加している人とそのポケモン、そして審査員でさえ、開いた口が塞がらない様子だった。
二人は息が合うように、キレのいい独創的な踊りを見せていた。
ナオキは歌詞のリズムに合わせるようにぎくしゃく感の全くない身振り手ぶりを見せていた。
その動作は、とてもリハーサルをしてないとは思えないほどのものだった。
マグマラシはナオキの踊りの中にあるひそかな合図に合わせるように、自分の技を歌詞に合わせるように繰り出した。
『両側から燃える花火みたいだった』という部分で、マグマラシはできる限り両側に飛ぶようにひのこを放った。
その他にも歌詞が止まった瞬間に火炎放射を放つなど、リズムの合ったパフォーマンスを見せた。
そしてサビの場面。
ナオキは両手を合わせるように上に上げ、それを降ろして腰に手を当てた後、意外性を思わせるような腰振りをして、両手をビシッと下に向け、歌詞に合わせるようなアクションをした。
マグマラシも閃光的に思い付いた動作をリズムに合わせるように披露した。
ナオキは両手を再び合わせるように上に上げ、その後、一回転をして両腕を横向きにして左右に振る動作をした。
マグマラシもそれに合わせて一回転をした。
その際、アートを描くようにひのこを放った。
マグマラシの放ったひのこは、回転の動きを線のように描いていた。
最後のサビの部分。
詰まる事なく、二人はダンスを披露して、最後の部分で決めポーズをした。
その後、間奏が流れた。
ダンスはまだ終わっていなかったのだ。
歌詞がなくても、二人は音楽を頼りにそれに合わせた踊りを見せた。
その踊りに一瞬の乱れもなかった。
会場の観客、審査員、そして参加しているトレーナー達はいまだに開いた口が塞がらない状態でいた。
周囲のこの状態には一瞬の反応も見せず、二人は踊り続けていた。
間奏のリズムに合わせてナオキは手拍子をした。
歌詞が始まった時も踊りはズレず、二人はキレのいい踊りを見せた。
音楽に合わせた身振りを披露した後、ナオキとマグマラシは同時に勢いをつけた二回転をした。
マグマラシはその回転と同時にアートを描くようにひのこを撒き散らした。
このシーンになった時、会場は今まで以上のボルテージに包まれた。
その環境になっても二人は反応も見せずに踊りを続けていた。
その様子を参加者達はただ呆然と見ていた。
その中にはヒカリの姿もあった。
(ナオキくん…本当に初めてなの…?)
ポフィンの事どころか、ポケモンコンテストがある事自体今日初めて聞いた事が本当なのかと疑うような様子でヒカリは二人のパフォーマンスを見ていた。
そうしているうちに、曲は歌詞の部分を終え、最後の間奏に入った。
間奏の中で時折入ってくる声に一瞬の乱れもない様子で二人は踊りを続けていた。
時折、リズムとは少しズレているような身振りも見せたが、寧ろそれがリズムに合っているような動作だった。
そして曲もついに最後のメロ部分に入った。
ナオキは最後の声が出終わった後、音楽に合わせて足踏みをした。
その足踏みもリズムがピッタリ合っていた。
マグマラシはナオキが足踏みをしている間に踊りをしながら引っ込めていた炎を再び燃え上がらせた。
何かのスタンバイをしているようである。
足踏みに合わせていた間奏が終わり、終わりの音楽が流れた。
その瞬間、マグマラシは体を横に回転させた。
最後の音楽はキラキラと光るものが雪のように舞うのをイメージさせる音楽だった。
それが流れたのと同時にナオキもマグマラシに合わせるように体をターンさせるように一回転させた。
その瞬間、マグマラシから小さいひのこが飛び、それがまるで紙吹雪のように舞った。
それはまるで、紙吹雪が舞う形で踊りを終えるようなアートを描いているようだった。
一回転したのを最後に二人はフィニッシュを伝えるようにポーズを決めて踊りを終えた。
音楽が終わった瞬間、会場に拍手と激励の声が響き渡った。
観客だけでなく、審査員、そして参加者達も拍手をしていた。
特に大きなアクションもやらず、小さくお辞儀をして二人はステージを降りた。
ステージを降りると、真っ先にヒカリが走ってきた。
「ナオキくん、すごいじゃない!あんなすごいダンス私今まで見た事なかったわ!」
「そう?まあ、ムードを作るために時折歌唱とか踊りをやってた事はあったけど…。」
ナオキはこういう音楽に関する事をするのがひそかに好きだった。
歌をポケモンに披露したり、ノリノリと言っていいくらいの勢いで踊りを披露したりする事がシンオウ地方に来る以前からひそかにあったのだ。
どんな形であれ、やっていたという事実がなければこれほどのパフォーマンスは披露できない。
コンテスト自体は出た事はないが、ナオキはひそかにそれに合った事はやっていたのだ。
「マグマラシとの息もピッタリだったわ。あなたとマグマラシってそれだけ長い付き合いなのね。」
「まあね。こんな私に今日まで一緒にいてくれた存在だからね。」
ナオキはマグマラシの方を向いた。
マグマラシも小さく微笑んだ様子でナオキの方を向いた。
ナオキは腰を降ろしてマグマラシと顔を合わせた。
「よくやったねマグマラシ!」
「おう!ナオキの動きについていけるか不安だったけど、オレはできる限りやったぜ!」
ナオキはこくりと頷き、手の平を向けるような形で手を出した。
マグマラシはナオキがやりたい事がすぐにわかった。
マグマラシは前足を出して、ナオキの出した手の平に向かって振った。
お互い息が合うように同時に手を振り、二人はハイタッチをした。
ダンスの審査は他と大きな差をつける高得点だった。
それは今まで誰も取った事がない程のものであった。
しばらくして審査結果の発表が行われた。
ヒカリは2位、そしてナオキは3位だった。
ナオキがやっていた事は、決してグダグダという感じのやり方ではなく、ちゃんと出された内容通りにやっていたのだが、今回は周りが高いレベルだった事が理由らしく、それでも届かない程ポイント数が高いトレーナーが多かった。
今回何の練習もやらずに挑戦したナオキとは真逆に、コンテストの練習をしたり、ポフィンで美しさを上げたりしていたヒカリでも2位だったというのがそれを強調していた。
「私もまだまだね…。」
ヒカリはかなりしょんぼりしていた。
ヒカリはひそかに目元を拭うような仕種をしていた。
ヒカリはふと後ろを見た。
そこにナオキの姿があった。
「ナオキくーん。」
ヒカリの声にナオキはヒカリのいる方を向いた。
「あ、ヒカリちゃん。そこにいたんだ。」
ヒカリがナオキのもとに駆け寄ってきた。
「ナオキくん、今日のパフォーマンス本当すごかったわ。特にあのダンスパフォーマンスがすごかったわよ。」
「まあ、それでも結局3位だったけどね。ダンスの他でも稼がなきゃいけないってわけだね。」
「でも本当にすごかったわよ。次は他のパフォーマンスをやればきっと優勝できるわ。」
ヒカリは明るい表情でナオキに言った。
ナオキはひそかに気付いていた。
ヒカリの目元が光っている事、そして頬に涙が伝った後がある事に…
そこからナオキは思った。
ヒカリはコンテストで惜しくも2位だった事に対する悔しさをナオキと話す事によってどうにか紛らわそうとしていたのだ。
ヒカリがコンテストで優勝を目指していたという事があらためて伝わる。
ナオキはヒカリが話し終えたのを見計らい、ヒカリに言った。
「ヒカリちゃん。」
「?」
ヒカリが『どうしたの?』という反応を示した後、しばらく間を置いてナオキは言った。
「…私も…もう一つ…目指してみたいものができたような気がするよ。」
「え?」
ヒカリがそう言った時、ナオキは少し間を置いてヒカリに言った。
「まあ、今回は偶然ダンスがよかっただけかもしれないけど…。でも、私ももっと頑張れば今度は2位にはなれるかもしれないからね。君みたいに頑張れば…。」
「私…?」
「そうだよ。もし、それだけ頑張らなかったら、あんなに悔しがったりしないからね。」
「…!」
ヒカリは気付いた。
ナオキはあの時見てたか見てなかったかは関係なく、自分がさっきひそかに泣いていた事に気付いていたという事に…
「君が頑張ってる以上、私も頑張らなきゃいけないね。また、機会があったらコンテストに参加してみるよ。」
そう言ってナオキは背を向けた。
一旦足を止めると、ナオキは振り返った。
「今日は色々ありがとう、ヒカリちゃん。またね!」
そう言ってナオキは再び背を向けて歩いていった。
ナオキはマグマラシとレントラーに何か言われてるようだった。
おそらく『いつまで待たせてんだよ』と言われているのだろう。
ナオキはマグマラシに話し掛けるのに乗じるかのように、ヒカリの方を向いた。
ヒカリが『あ…』という反応をした後、ナオキは小さく手を振り、マグマラシ達と共にその場を後にした。
ヒカリはナオキがいなくなった後もナオキがいた所を見ていた。
ヒカリはナオキが言っていた事を思い出していた。
そこからヒカリは感じていた。
ナオキが自分を応援している事。
そして、ナオキが自分をきっかけにもっと頑張ろうという気持ちになれたという事を…
きっかけになるのは大きな事を成し遂げなければ相手にそういう形で伝わらないものである。
それがナオキに伝わり、そしてきっかけになった事は、ヒカリの頑張りが大きいものだったという事をまさしく強調するものだったのだ。
ヒカリはしばらく何も言わず、空を見上げていた。
ヒカリの中に、ひそかに今までになかった何かが生まれたのをヒカリは感じていた。
ヒカリは、ナオキに伝えるように囁いた。
(ナオキくん…私もあなたと同じくらい…いえ…それ以上に頑張れるようにしてみせるわ。だから…あなたも頑張ってね…。)
微かに夕焼け空になった空はヒカリを優しく照らし続けていた。
ナオキはマグマラシ、レントラーと共に帰路に着いていた。
「今日は夜までにエレメンタルに帰れるか?」
「テンガン山の道のりはだいたいわかるから大丈夫だよ。」
「それじゃあ、暗くならないうちに早く帰ろう。」
「そうだね。」
そうナオキが言った後、ナオキはしばらく何も言わずに歩いた。
その後、ナオキはマグマラシ達の方を向いた。
「マグマラシ、レントラー。」
「?」
二人は『ん?なんだ?』という様子でナオキの方を向いた。
しばらく間を置いて、ナオキは二人に言った。
「これからももっと頑張っていこうね、マグマラシ、レントラー。色んな事をね…。」
ナオキがそう言うと、しばらく間を置いて二人は言った。
「…ああ。」
「オレもこれからキミに一日でも早く着いていけるように頑張るよ。」
ナオキは小さく微笑み、こくりと頷いた。
夕日はだいぶ沈み、日の色はさっきよりも濃いオレンジ色になっていた。
明るい夕焼け色に彩られながら、三人は帰り道を歩いていった。