翌日。

レントラーを新たな仲間に加えたナオキ達はあらためて旅を再開する事にした。

「オレもひそかにシンオウ地方を詳しく見に行った事がなかったからいい機会だよ。」

「レントラーもそんなに広い範囲を旅した事はなかったのか?」

「ああ。基本的に森の中で暮らしてたから、そんな遠くには行かないんだ。」

「それじゃあ、この際だからもっと奥に行ってみようか?」

「そうだな。オレ達前回クロガネシティで帰ったからそこから先に行ってみねえか?」

「そうだね。それじゃあ早速行ってみよう。」

「おう!行こうぜ!」

マグマラシがそう行ったのと同時にマグマラシとレントラーは同時に走っていった。

「あ!ちょっと待ってってばー!!」

ナオキはひそかにせっかちなポケモンがまた一人増えたなと思いながら慌てて二人を追いかけていった。





久々のクロガネシティ。

今日も燃料の炭鉱を掘り起こす機械の音がムックルの鳴き声に負けないくらいの騒がしい音を上げていた。

「すごいな。この町って随分と大きい機械があるんだね。」

「あれで石炭とかを掘り出してるんだよ。」

「人間の技術ってすごいんだね。」

レントラーにとってはこういう機械系統は珍しいもののようである。

クロガネシティの見学を終えたナオキ達はあらためて道を探した。

「そういえばコウキくんはまだここにいるのかな?」

「そういえばそうだな。」

コウキはライバルであり幼なじみのジュンヤに負けたのを機に、しばらくクロガネシティに残ると言った。

「いるとしたらどこにいるのかな…?」

ナオキは辺りを見回した。

すると…

「やあ、ナオキくん。」

声のした方を向くと、ヒョウタがいた。

「ヒョウタさん!お久しぶりですね。」

「そこで何をしてるんだい?」

「最後に来た場所がここだったので、ここからスタートしようと思いまして。私達はまだここの事をよく知らないので…。」

「そうだったんだ。」

「そうだ。ヒョウタさん、コウキくんを見かけませんでしたか?」

「コウキくん?ああ、あの赤い帽子を被った男の子だね。コウキくんは先日ここを発ったよ。」

「あ、もうここにはいないんですか?」

「今度はハクタイシティに行くって言ってたよ。きみに伝えておいてほしいって頼まれてた事を忘れてたよ。」

「そうですか。わざわざ伝えて下さってありがとうございます。」

「お礼を言うほどじゃないよ。ボクもついさっきまで忘れてたからね。」

ヒョウタは少し赤面した様子で言った。





「ここからだと、北の方に道があるよ。」

「北の方…つまりあっちですね。ありがとうございます。」

「ただ、向こうは自転車がないと進みにくいと思うけど…。」

「大丈夫です。もし、渡れなかったら他をあたりますよ。」

「そうかい。それじゃあ気をつけてね。」

「はい。それではまた!」

「じゃあ、早速行こうぜ!」

そう言って再びマグマラシとレントラーは走り出した。

「あ、だからちょっと待ってってばー!!」

ナオキは慌てて二人の後を追いかけていった。

ヒョウタはその様子を見てクスッと笑った後、本業の場所へ歩いていった。






ここは207番道路。

そこに急な坂があった。

「随分と細いね。」

「ヒョウタが言ってたのってこの坂が理由なのか?」

「そうみたいだね。」

「ナオキ自転車持ってないだろ?どうやって渡るんだ?」

「この細さだと、徒歩じゃ渡りにくいね。」

「ここしか道はないみたいだよ。さっきキミが言ってた通り別の道を探した方がいいんじゃないかな?」

「…いや、多分何とかなるよ。」

ナオキはふと向いた方向を見て言った。

坂がある場所の隣に一段低い段差のある場所があった。

「私くらいの高さなら届くからここを登っていこう。」

そう言ってナオキはまず、マグマラシを背負って段差を登った。

少し高い段差だったが、ナオキにはわけないようだった。

「次は君の番だね。おいでレントラー。」

「OK。」

レントラーはナオキが伸ばした手に前足を差し出した。

ナオキがレントラーの前足を掴んだ後、レントラーは段差を歩くような形で登った。

「キミって高さだけじゃなくて、手も長いんだね。」

「周りからもよく言われるよ。私は平均の高さよりも高い身長らしいからね。」




前に進むと、大きな建物があった。

「なんだろう、あの建物?」

三人は建物の近くに来た。

「ここから先は206番道路の一部みたいだけど、どうやら自転車がないと通れないみたいだね。」

「ヒョウタが言ってたのはこれだったんだな。」

三人は道を変える事にした。





206番道路にはもう一つ道があった。

黄色い木がある方向に二つ目の道があったのだ。

しばらく進んでいくと、目の前に大きな山がそびえ立っていた。

「うわ、でけぇな~。ジョウト地方にこんぐらい大きい山ってあったか?」

「多分ないだろうね。上が全く見えないもん。」

「もしかすると、天まで届いてたりしてな。」

「そうかもね。」

そう言うと、ナオキは看板を見てみた。

「どうやらこの山は『テンガン山』っていうみたいだね。」

「ガーディアン・トライスが映してた地図でかなり目立ってる山があったな。この山はそれに当たるのか?」

「どうやらそうみたいだね。他に大きい山はないみたいだからさ。」

「オレもこの山は知ってるよ。この山はシンオウ地方のほとんどの場所から見れるからね。」

「君も知ってたんだ。」

「まあね。オレが以前いた森の仲間達もテンガン山を知っておくのは常識だって言ってたからさ。」

三人は中へと入っていった。





内部は色んな所に池のような場所があり、至る所に段差があった。

山の中を通れるようにしただけに、そうなる前の面影がひそかに残されているというわけだ。

「シンオウ地方の中で一番高い山だって言われてるだけに内部もすごく広いな。」

「シンオウ地方出身だけど、オレもここに来たのは初めてだよ。遠くからしか見た事ないけど、あらためて近くまで来てみるとすごいもんだね。」

「こんなに大きい山は確かにジョウト地方にはないだろうね。」

「ジョウト地方で有名な山って何があるの?」

レントラーがナオキに質問した。

「え~っと…確かスリバチ山だったかな。そこはマリルが時折出てくる事で有名なんだ。」

「その山ってどれくらい高いの?」

「今のところジョウト地方で一番知られてる山だから、多分ジョウト地方で一番高い山だと思うぜ。」

マグマラシが答えた。

「そうなんだ。オレも一度でいいからジョウト地方に行ってみたいな。」

「シンオウ地方が平和になったら連れてってあげるよ。」

「本当か?」

「もちろん。だから楽しみに待っててね。」

「わかった。それじゃあ、シンオウ地方を平和にするためにオレも頑張るよ。」

「ありがとうレントラー。必ず君をジョウト地方に連れていけるように私も頑張るよ。」

「シンオウ地方からジョウト地方への観光客が一人できたな。」

「コウキくんやヒカリちゃんも招待しようか?」

「そうだな。ただ、あの二人だとどうやって連れていくかが問題だぜ?」

「まあ、いざとなったらトライスさん達に相談すればいいよ。今はそうなるための事を精一杯やろう。」

「そうだな。」

シンオウ地方の平和を護る目的がまた一つできたというわけだ。

「よし、じゃあ先を急ごう。」

「おう。」

今回は二人は先に走っていかなかった。

また同じ事になるのをようやく学習したからなのだろうか。

三人はあらためて、テンガン山の奥へと進んでいった。

すると、三人のもとに誰かが歩いて来た。

「?」

暗くてわかりづらかったが、近づくにつれて姿が明らかになっていった。

髪の色は青く、つんつんとした髪型で、壮年期に入って間もないくらいの年をした男だった。

その男は、三人のもとに来ると、足を止めた。

そして、挨拶をする事もなく、急に三人に話しかけてきた。

「キミは世界の始まりを知っているか?」

「世界の始まり…?」

急に範囲の広い質問をされてナオキは少し戸惑っていた。

男は右側を向いた。

その視点はテンガン山の方を向いてるようだ。

「このテンガン山はシンオウ地方始まりの場所。そういう説もあるそうだ。」

「この地方の…?」

意外な事実にナオキは少々懐疑を抱いていた。

しばらく黙り込んだ後、男は再びナオキの方を向き、上の方を向いて言った。

「…できたばかりの世界では争い事などなかったはず…。ポケモン勝負と争う事は全然違う。キミもポケモントレーナーならその事を忘れないでほしい。」

「はぁ…。」

ナオキは多少納得しつつもどうもしっくりこない様子だった。

それは自分が実質ポケモントレーナーではないという事からではない、何か他の理由があるようだった。

「とはいえ、心は弱いから難しいだろうけどね。」

「…?」

男の言ったこの一言にナオキは疑問を抱いた。

(心…?何が言いたいんだ?一応言いたい事はわかるけど…。)

ナオキは男の言った事が『キミには難しい事だからわからないだろうけどね』という風に解釈していた。

つまり、ナオキを子供のように見ていたのかと思っていたのだ。

だが、中学の頃も高校生と間違われる程身長の大きいナオキをぱっと見で子供扱いするのはさすがに無理がある。

ならば、自分より若いから知識や経験が不足しているという理由でそう言ったのだろうか…?

考えはいろいろと浮かんでいるが、どれもしっくりこなかった。

ある意味男の言っていた事は当たってると言うべきかもしれない。

「では失礼。」

そう言って男はすたすたとその場を後にした。



しばらく辺りは静寂に包まれていた。

「なんだったんだろうな、あいつ?」

「急に世界の始まりが何とかだって言ってたけど…?」

マグマラシとレントラーはあの男が結局何を言いたいのかわからないようだった。

だが、それはナオキも同じ事だった。

色々と見当がつく考えはあったが、どれもしっくりこない事ばかりだという事、そして何より、あの男が何者なのかがナオキにはわからなかった。

しばらくしてナオキは言った。

「今のところわかるのは、このテンガン山がシンオウ地方が生まれた場所だって事くらいかな…?」

ナオキのこの様子は、妥協するような形でさっきの事をどうにかして結論づけたという事が推測できる。

「ここがシンオウ地方始まりの場所…?」

レントラーは辺りを見回した。

「つまり、この地方はこの山から生まれたって事なのか?」

「どうもそうらしいね。」

ナオキはひそかに考えていた。

(このテンガン山がシンオウ地方の始まりの場所というのはまだ何か裏があるような気がする…。開闢の地に相当するなら…この山にはまだ何か隠された謎があるというわけなのかな…?)

ナオキはしばらく考え続けたが、ナオキの中には一筋の閃光も過ぎらなかった。

「今のところこれが限界みたいだ…。」

ナオキは考えるのをやめ、マグマラシとレントラーの方を向いた。

「とりあえず先を急ごう。この事は後でトライスさん達に聞いてみる事にするよ。」

「そうだな。」

「考えてても何も浮かばないんじゃあ埒が開かないからね。」

ナオキは小さくこくりと頷いた。

「よし、それじゃあ先を急ごう。」

「おう。行こうぜ。」

三人はテンガン山の奥へ進んでいった。

ナオキの中にはひそかにあの男に対する懐疑が残っていた。