二人はクロガネジムの中にいた。
「よかったらきみもジムに挑戦しないかい?」
ヒョウタはナオキに言った。
「う~ん…今回は遠慮しておきますよ。マグマラシだけじゃあきっと不利かもしれませんからね。」
ナオキはそう言ったが、実際、マグマラシはタイプ関係なしにヒョウタのポケモンと互角に戦うには十分な実力を持っていた。
ナオキがジム戦をやらないのには本当の理由があったのだ。
「ですが、気が向いたら挑戦してみますよ。」
「そうかい。それじゃあその時まで待ってるよ。」
「はい。」
二人はクロガネジムを後にした。
「それしても、ここってすごいよね。こんな大きな機械があって、それで何かすごそうな事をしてるんだもん。」
「これは地面に埋まってる石炭を掘り出してるんだ。」
「石炭?」
「あの黒い塊だよ。大昔枯れた植物が地中深くに埋まって長い年月をかけて分解されて生じた物なんだ。」
「そうなんだ。オレには燃やした物の塊にしか見えないんだけど。」
「まあ、ああいう感じだとそう思うのも無理はないよね。」
ナオキもコウキと同じ頃はそう思っていたので、コウキがそう思うのも無理はないと思っていた。
「そういえば私の10歳の頃ってどんな事をしてたっけなぁ…。」
ナオキは10歳の頃の記憶があまりないようだった。
10歳の頃があったのは間違いないが、その時を印象づける事がないからか、その時の事をあまり覚えていないみたいだった。
炭鉱をしばらく見学した後、二人は再びクロガネシティ内に戻った。
「次はどこにジムがあるのかな?」
「そうだね…。私が最近行ったハクタイシティはどうかな?」
「ハクタイシティ?」
「『シティ』ってあるからきっとそこにジムがあると思うよ。」
「本当なの?」
「私も詳しく散策してないからよくわからないけど、確かそれらしき建物はあったよ。」
ナオキはハクタイシティで怪しい建物を調べてる時にひそかにそれらしき建物を見つけていたのだ。
すると…
「彼の言う通り、次はハクタイジムに挑戦するといいよ。」
声のした方を向くと、そこにヒョウタがいた。
「ヒョウタさん。これからどこかに行くんですか?」
「挑戦者が来ないから本業に戻ろうと思ってね。」
ヒョウタはジムリーダーだけでなく、炭鉱の職務もやっていたのだ。
被っているヘルメットはただの飾りではないというわけだ。
「ヒョウタさんが言った通り、次はハクタイシティに行けばいいみたいだよ。」
「そうみたいだね。次のジム戦も頑張るよ!」
コウキは胸を張ってナオキに言った。
「その意気だよ!」
ナオキは小さく微笑みながらコウキに言った。
「このシンオウ地方にはあと7人のジムリーダーがいる。みんなボクよりも手ごわいポケモントレーナーばかりだよ!」
ヒョウタがコウキに付け足すように言った。
「7人?まだそんなにたくさんいるんだ…。…でも…。」
コウキはナオキの方を向いた。
「どんな相手が来ても、オレは全員に勝ってみせるよ!」
「いい決心をしてるね。ボクももっと頑張らなきゃいけないね。」
ヒョウタは小さく微笑みながら言うと、炭鉱現場に歩いていった。
「それじゃあ、次の町に行ってみようか?行き方知ってるから案内するよ。」
「うん!早速行こう!」
コウキがそう言った時、コウキは急に表情を変えた。
「どうしたのコウキくん?」
「ナオキ、危ない!」
「え?」
ナオキが振り返った瞬間…
ドン!!
「あ痛!!」
ナオキに何かがぶつかり、ナオキは地面にたたき付けられるように吹っ飛ばされた。
「ナオキ!」
コウキは慌ててナオキのもとに寄った。
マグマラシもコウキに続いた。
「ナオキ、大丈夫?」
コウキはナオキに呼び掛けた後、もう一つの方を向いた。
「いててててて…。」
もう一方の方が先に起き上がった。
「やっぱりキミだったのか…。」
コウキは呆れたような様子で言った。
「お!コウキじゃねえか!」
そう言ってきたのは、黄色く寝癖のような所々反り返った髪をしており、コウキみたいな形で黄緑色のマフラーをしているオレンジと白のシマシマの服を着ている少年だった。
「ここで何やってたんだ?」
「たった今ジムに挑戦して勝ったところなんだ。」
「クロガネジムにか?オレはもうハクタイジムを攻略したところだぜ?」
「え?」
コウキは驚愕した。
「お前まだクロガネしか攻略してねえのかよ。そんなんじゃあ強いトレーナーにはなれないぜ。」
「!」
少年の一言を聞いてコウキは一瞬固まった。
「いたたたた…全くなんなのさ急に…。」
ナオキはようやく体を起こした。
「あれ?誰だお前?いつからそこにいたんだ?」
少年は今気付いたように言った。
「君がぶつかった時からだよ。私の名前は『ナオキ』。このポケモンはマグマラシって言うんだ。君の名前は?」
ナオキがそう言った瞬間…
「うおー!なんだこのポケモン?この地方じゃ見かけねえぞ!」
少年はマグマラシを興味深そうに見ていた。
「ち…ちょっと…君はなんて名前なの?」
少年はマグマラシに気がいってしまってるらしく、聞いてないどころか聞こえてないようだった。
「そいつは『ジュンヤ』。オレの幼なじみだよ。」
コウキが代わりに教えてくれた。
「君の友人なんだね。それにしても君の友人ってすごいせっかちなんだね。」
「そうなんだ。ジュンヤのせっかち癖はフタバタウンでも知らない人はいないくらい有名なんだ。」
コウキは呆れた様子で、いまだにマグマラシを興味深そうに見ているジュンヤを見ながら言った。
しばらくしてジュンヤはようやくナオキの方を向いた。
「おっ!そうだった!まだ名前聞いてなかったっけな。名前なんて言うんだ?」
「私の名前は『ナオキ』。さっきから名乗ってるのに聞いてなかったの?」
「そうだったのか?そりゃあ悪かったな。で、このポケモンはなんて言うんだ?」
「(話すり替えるのも早い…)そのポケモンはマグマラシって言ってジョウト地方のポケモンなんだ。だから君が見かけないポケモンって言うのも無理はないね。」
「そうか。珍しいポケモン持ってるんだな。」
シンオウ地方では見かけず、御三家である以上、ジュンヤの言ってる事はもっともと言えよう。
「そうだ、コウキ。久しぶりにオレと勝負しないか?」
「え?」
コウキはジュンヤの唐突な一言に一瞬固まった。
「………。」
コウキは黙り込んでいた。
「なんだコウキ?怖じけづいたのか?」
「!」
コウキはジュンヤのこの一言にぴくりと反応した。
しばらく黙り込んだ後、コウキは顔を上げた。
「わかった!オレもさっきジム戦に勝ったから少しは強くなってるはず。その勝負、乗るよ!」
コウキはモンスターボールを構えた。
「そうこなくっちゃな!行け!ヒコザル!」
ジュンヤはモンスターボールを投げた。
ボールが開かれ、そこからお尻から炎を出しているぱっと見ですぐわかるくらい猿の姿をしたポケモンが現れた。
(あのポケモンは明らかにマグマラシと同じタイプだな。コウキくんはナエトル以外に誰か持ってるのかな。)
ナオキがそう思った時、コウキはモンスターボールを投げた。
出てきたポケモンはナエトルだった。
「え?」
ナオキは意外な光景に一瞬驚愕した。
「なんだコウキ?タイプが苦手だってのに、ナエトルを出すなんてよ。」
「オレはまだこのポケモンしかいないんだ。タイプが苦手だからって必ず勝てるとは限らないんだよ!オレはジム戦でそれを知ったんだ!」
ナオキは『コウキくん、それってきっと…』と言おうとしが、心の中で言う事も途中で止まってしまったように言う事ができなかった。
二人のバトルが始まった。
「ヒコザル、ひのこ!」
ヒコザルは口から小さな火の塊を撒き散らした。
「ナエ!」
ナエトルは火の塊を受けて、かなり辛そうな顔をした。
「くっ…ナエトル!たいあたり!」
ナエトルはヒコザルに突進した。
しかし、ヒコザルは身軽な動きでそれをかわした。
「いまだヒコザル!ひっかく!」
ヒコザルは空中で体制を変えると、ナエトルにひっかき攻撃をぶつけた。
「ああ!ナエトル!」
ナエトルはひっかくを受けた勢いで飛ばされ、地面にたたき付けられた。
「どうした?お前の実力はそんなもんかよ?」
「くっ…やっぱりジムを一つ多く制覇してるジュンヤは伊達じゃない…。…でも…。」
コウキはナエトルを見た。
ナエトルは満身創痍の状態でコウキの方を向いて、小さく頷いた。
「例え相手がどんな実力を持っていても、オレは最後まで諦めないで戦う!」
コウキは勢いのある声で言った。
「ナエトル!はっぱカッター!」
ナエトルは体を大きく振りかざし、その勢いで大量のはっぱカッターを放った。
「な、なんだ!?このはっぱカッターは?」
ジュンヤは一瞬引いてしまった。
「くっ…ヒコザル!火炎車!」
ヒコザルは炎を全身に纏い、はっぱカッターに向かって突撃していった。
バチィィィィィ!!
二人の技がお互いにぶつかり合った。
タイプが苦手であるにもかかわらず、ナエトルのはっぱカッターはヒコザルと互角渡り合っていた。
「タイプが苦手なのになんて威力なんだ…。だが、こっちだって負けねえぜ!行け!ヒコザル!!」
ヒコザルの纏う炎がさらに勢いを増した。
次の瞬間…
バチィ!!
ヒコザルの火炎車がナエトルのはっぱカッターを打ち破った。
「な!?」
コウキは驚愕した。
「行けヒコザル!!」
ヒコザルはナエトルに突進した。
ドガァァァ…
ナエトルはヒコザルの火炎車をくらい、遠くに飛ばされた。
「ナエトル!!」
ナエトルは地面にたたき付けられ、地面に伏した。
ナエトルは何とか立ち上がろうとした。
しかし、震えながら立ち上がった瞬間、ナエトルは力尽きるように倒れた。
「オレの勝ちだぜコウキ!」
自信ありげにジュンヤは言った。
(でも…ナエトルのさっきの技…タイプが苦手なのにあれだけ互角に渡り合うなんて…もしヒコザルが少しでもダメージを受けてたら危なかったかもな…)
「よく頑張ったねナエトル。」
コウキはナエトルを抱き抱えた。
その時、コウキは目頭が熱くなったのを感じた。
「今度はナオキと戦いてえけど、他にもジムに挑戦しなきゃなんねえからまた今度にしとくぜ!」
ジュンヤはそう言って体制を構えた。
「それじゃあまたなコウキ。オレが発車するまで10、9、8…って数えてられっかー!!」
そう言ってジュンヤは一目散に走っていった。
辺りはしばらく静寂に包まれていた。
ナオキは何も言わずただコウキを見ていた。
コウキは顔を手で拭うような仕草をした後、ナオキの方を向いた。
「あいつのせっかちもたまには役に立つよ。オレが泣く前にいなくなっちゃうから、格好悪い所見られないからさ。」
コウキは涙を浮かべながらナオキに言った。
「オレポケモンの事…全然わかってなかったよ。」
コウキは下を向いた。
「バトルの事もよく知らないで何も考えずに戦って結局負けて、オレはまた…ナエトルにまたひどい事をしちゃったんだ…。」
コウキの目から大粒の涙が流れた。
「負けるとわかってたんなら、オレは戦うべきじゃなかったんだ!戦わなきゃナエトルもこんな目に会わなかったのに…。」
ナエトルの顔にコウキの涙がポタポタと流れ落ちた。
その時…
「私は君の選択は間違ってなかったと思うよ。」
「え?」
「例えタイプが苦手でも売られたバトルを逃げずに受けるのは立派な事だよ。バトルには負けたけど、君は正しい事をしたと私は思うよ。」
コウキはナオキを見つめていた。
ナオキはコウキの涙を手で優しく拭った。
コウキはしばらくしてナオキに言った。
「オレ…もう少しここで頑張る事にするよ。ジュンヤに追いつけるようにここでもっと強くなる!」
「応援してるよコウキくん。」
ナオキは小さく微笑みながらコウキに言い、クロガネシティを後にした。
「よかったらきみもジムに挑戦しないかい?」
ヒョウタはナオキに言った。
「う~ん…今回は遠慮しておきますよ。マグマラシだけじゃあきっと不利かもしれませんからね。」
ナオキはそう言ったが、実際、マグマラシはタイプ関係なしにヒョウタのポケモンと互角に戦うには十分な実力を持っていた。
ナオキがジム戦をやらないのには本当の理由があったのだ。
「ですが、気が向いたら挑戦してみますよ。」
「そうかい。それじゃあその時まで待ってるよ。」
「はい。」
二人はクロガネジムを後にした。
「それしても、ここってすごいよね。こんな大きな機械があって、それで何かすごそうな事をしてるんだもん。」
「これは地面に埋まってる石炭を掘り出してるんだ。」
「石炭?」
「あの黒い塊だよ。大昔枯れた植物が地中深くに埋まって長い年月をかけて分解されて生じた物なんだ。」
「そうなんだ。オレには燃やした物の塊にしか見えないんだけど。」
「まあ、ああいう感じだとそう思うのも無理はないよね。」
ナオキもコウキと同じ頃はそう思っていたので、コウキがそう思うのも無理はないと思っていた。
「そういえば私の10歳の頃ってどんな事をしてたっけなぁ…。」
ナオキは10歳の頃の記憶があまりないようだった。
10歳の頃があったのは間違いないが、その時を印象づける事がないからか、その時の事をあまり覚えていないみたいだった。
炭鉱をしばらく見学した後、二人は再びクロガネシティ内に戻った。
「次はどこにジムがあるのかな?」
「そうだね…。私が最近行ったハクタイシティはどうかな?」
「ハクタイシティ?」
「『シティ』ってあるからきっとそこにジムがあると思うよ。」
「本当なの?」
「私も詳しく散策してないからよくわからないけど、確かそれらしき建物はあったよ。」
ナオキはハクタイシティで怪しい建物を調べてる時にひそかにそれらしき建物を見つけていたのだ。
すると…
「彼の言う通り、次はハクタイジムに挑戦するといいよ。」
声のした方を向くと、そこにヒョウタがいた。
「ヒョウタさん。これからどこかに行くんですか?」
「挑戦者が来ないから本業に戻ろうと思ってね。」
ヒョウタはジムリーダーだけでなく、炭鉱の職務もやっていたのだ。
被っているヘルメットはただの飾りではないというわけだ。
「ヒョウタさんが言った通り、次はハクタイシティに行けばいいみたいだよ。」
「そうみたいだね。次のジム戦も頑張るよ!」
コウキは胸を張ってナオキに言った。
「その意気だよ!」
ナオキは小さく微笑みながらコウキに言った。
「このシンオウ地方にはあと7人のジムリーダーがいる。みんなボクよりも手ごわいポケモントレーナーばかりだよ!」
ヒョウタがコウキに付け足すように言った。
「7人?まだそんなにたくさんいるんだ…。…でも…。」
コウキはナオキの方を向いた。
「どんな相手が来ても、オレは全員に勝ってみせるよ!」
「いい決心をしてるね。ボクももっと頑張らなきゃいけないね。」
ヒョウタは小さく微笑みながら言うと、炭鉱現場に歩いていった。
「それじゃあ、次の町に行ってみようか?行き方知ってるから案内するよ。」
「うん!早速行こう!」
コウキがそう言った時、コウキは急に表情を変えた。
「どうしたのコウキくん?」
「ナオキ、危ない!」
「え?」
ナオキが振り返った瞬間…
ドン!!
「あ痛!!」
ナオキに何かがぶつかり、ナオキは地面にたたき付けられるように吹っ飛ばされた。
「ナオキ!」
コウキは慌ててナオキのもとに寄った。
マグマラシもコウキに続いた。
「ナオキ、大丈夫?」
コウキはナオキに呼び掛けた後、もう一つの方を向いた。
「いててててて…。」
もう一方の方が先に起き上がった。
「やっぱりキミだったのか…。」
コウキは呆れたような様子で言った。
「お!コウキじゃねえか!」
そう言ってきたのは、黄色く寝癖のような所々反り返った髪をしており、コウキみたいな形で黄緑色のマフラーをしているオレンジと白のシマシマの服を着ている少年だった。
「ここで何やってたんだ?」
「たった今ジムに挑戦して勝ったところなんだ。」
「クロガネジムにか?オレはもうハクタイジムを攻略したところだぜ?」
「え?」
コウキは驚愕した。
「お前まだクロガネしか攻略してねえのかよ。そんなんじゃあ強いトレーナーにはなれないぜ。」
「!」
少年の一言を聞いてコウキは一瞬固まった。
「いたたたた…全くなんなのさ急に…。」
ナオキはようやく体を起こした。
「あれ?誰だお前?いつからそこにいたんだ?」
少年は今気付いたように言った。
「君がぶつかった時からだよ。私の名前は『ナオキ』。このポケモンはマグマラシって言うんだ。君の名前は?」
ナオキがそう言った瞬間…
「うおー!なんだこのポケモン?この地方じゃ見かけねえぞ!」
少年はマグマラシを興味深そうに見ていた。
「ち…ちょっと…君はなんて名前なの?」
少年はマグマラシに気がいってしまってるらしく、聞いてないどころか聞こえてないようだった。
「そいつは『ジュンヤ』。オレの幼なじみだよ。」
コウキが代わりに教えてくれた。
「君の友人なんだね。それにしても君の友人ってすごいせっかちなんだね。」
「そうなんだ。ジュンヤのせっかち癖はフタバタウンでも知らない人はいないくらい有名なんだ。」
コウキは呆れた様子で、いまだにマグマラシを興味深そうに見ているジュンヤを見ながら言った。
しばらくしてジュンヤはようやくナオキの方を向いた。
「おっ!そうだった!まだ名前聞いてなかったっけな。名前なんて言うんだ?」
「私の名前は『ナオキ』。さっきから名乗ってるのに聞いてなかったの?」
「そうだったのか?そりゃあ悪かったな。で、このポケモンはなんて言うんだ?」
「(話すり替えるのも早い…)そのポケモンはマグマラシって言ってジョウト地方のポケモンなんだ。だから君が見かけないポケモンって言うのも無理はないね。」
「そうか。珍しいポケモン持ってるんだな。」
シンオウ地方では見かけず、御三家である以上、ジュンヤの言ってる事はもっともと言えよう。
「そうだ、コウキ。久しぶりにオレと勝負しないか?」
「え?」
コウキはジュンヤの唐突な一言に一瞬固まった。
「………。」
コウキは黙り込んでいた。
「なんだコウキ?怖じけづいたのか?」
「!」
コウキはジュンヤのこの一言にぴくりと反応した。
しばらく黙り込んだ後、コウキは顔を上げた。
「わかった!オレもさっきジム戦に勝ったから少しは強くなってるはず。その勝負、乗るよ!」
コウキはモンスターボールを構えた。
「そうこなくっちゃな!行け!ヒコザル!」
ジュンヤはモンスターボールを投げた。
ボールが開かれ、そこからお尻から炎を出しているぱっと見ですぐわかるくらい猿の姿をしたポケモンが現れた。
(あのポケモンは明らかにマグマラシと同じタイプだな。コウキくんはナエトル以外に誰か持ってるのかな。)
ナオキがそう思った時、コウキはモンスターボールを投げた。
出てきたポケモンはナエトルだった。
「え?」
ナオキは意外な光景に一瞬驚愕した。
「なんだコウキ?タイプが苦手だってのに、ナエトルを出すなんてよ。」
「オレはまだこのポケモンしかいないんだ。タイプが苦手だからって必ず勝てるとは限らないんだよ!オレはジム戦でそれを知ったんだ!」
ナオキは『コウキくん、それってきっと…』と言おうとしが、心の中で言う事も途中で止まってしまったように言う事ができなかった。
二人のバトルが始まった。
「ヒコザル、ひのこ!」
ヒコザルは口から小さな火の塊を撒き散らした。
「ナエ!」
ナエトルは火の塊を受けて、かなり辛そうな顔をした。
「くっ…ナエトル!たいあたり!」
ナエトルはヒコザルに突進した。
しかし、ヒコザルは身軽な動きでそれをかわした。
「いまだヒコザル!ひっかく!」
ヒコザルは空中で体制を変えると、ナエトルにひっかき攻撃をぶつけた。
「ああ!ナエトル!」
ナエトルはひっかくを受けた勢いで飛ばされ、地面にたたき付けられた。
「どうした?お前の実力はそんなもんかよ?」
「くっ…やっぱりジムを一つ多く制覇してるジュンヤは伊達じゃない…。…でも…。」
コウキはナエトルを見た。
ナエトルは満身創痍の状態でコウキの方を向いて、小さく頷いた。
「例え相手がどんな実力を持っていても、オレは最後まで諦めないで戦う!」
コウキは勢いのある声で言った。
「ナエトル!はっぱカッター!」
ナエトルは体を大きく振りかざし、その勢いで大量のはっぱカッターを放った。
「な、なんだ!?このはっぱカッターは?」
ジュンヤは一瞬引いてしまった。
「くっ…ヒコザル!火炎車!」
ヒコザルは炎を全身に纏い、はっぱカッターに向かって突撃していった。
バチィィィィィ!!
二人の技がお互いにぶつかり合った。
タイプが苦手であるにもかかわらず、ナエトルのはっぱカッターはヒコザルと互角渡り合っていた。
「タイプが苦手なのになんて威力なんだ…。だが、こっちだって負けねえぜ!行け!ヒコザル!!」
ヒコザルの纏う炎がさらに勢いを増した。
次の瞬間…
バチィ!!
ヒコザルの火炎車がナエトルのはっぱカッターを打ち破った。
「な!?」
コウキは驚愕した。
「行けヒコザル!!」
ヒコザルはナエトルに突進した。
ドガァァァ…
ナエトルはヒコザルの火炎車をくらい、遠くに飛ばされた。
「ナエトル!!」
ナエトルは地面にたたき付けられ、地面に伏した。
ナエトルは何とか立ち上がろうとした。
しかし、震えながら立ち上がった瞬間、ナエトルは力尽きるように倒れた。
「オレの勝ちだぜコウキ!」
自信ありげにジュンヤは言った。
(でも…ナエトルのさっきの技…タイプが苦手なのにあれだけ互角に渡り合うなんて…もしヒコザルが少しでもダメージを受けてたら危なかったかもな…)
「よく頑張ったねナエトル。」
コウキはナエトルを抱き抱えた。
その時、コウキは目頭が熱くなったのを感じた。
「今度はナオキと戦いてえけど、他にもジムに挑戦しなきゃなんねえからまた今度にしとくぜ!」
ジュンヤはそう言って体制を構えた。
「それじゃあまたなコウキ。オレが発車するまで10、9、8…って数えてられっかー!!」
そう言ってジュンヤは一目散に走っていった。
辺りはしばらく静寂に包まれていた。
ナオキは何も言わずただコウキを見ていた。
コウキは顔を手で拭うような仕草をした後、ナオキの方を向いた。
「あいつのせっかちもたまには役に立つよ。オレが泣く前にいなくなっちゃうから、格好悪い所見られないからさ。」
コウキは涙を浮かべながらナオキに言った。
「オレポケモンの事…全然わかってなかったよ。」
コウキは下を向いた。
「バトルの事もよく知らないで何も考えずに戦って結局負けて、オレはまた…ナエトルにまたひどい事をしちゃったんだ…。」
コウキの目から大粒の涙が流れた。
「負けるとわかってたんなら、オレは戦うべきじゃなかったんだ!戦わなきゃナエトルもこんな目に会わなかったのに…。」
ナエトルの顔にコウキの涙がポタポタと流れ落ちた。
その時…
「私は君の選択は間違ってなかったと思うよ。」
「え?」
「例えタイプが苦手でも売られたバトルを逃げずに受けるのは立派な事だよ。バトルには負けたけど、君は正しい事をしたと私は思うよ。」
コウキはナオキを見つめていた。
ナオキはコウキの涙を手で優しく拭った。
コウキはしばらくしてナオキに言った。
「オレ…もう少しここで頑張る事にするよ。ジュンヤに追いつけるようにここでもっと強くなる!」
「応援してるよコウキくん。」
ナオキは小さく微笑みながらコウキに言い、クロガネシティを後にした。