コウキはソノオタウンを出て、道路を歩いていた。

「それにしても、あの人すごかったなあ…。オレが苦戦した相手をこんなにもあっさり倒しちゃうなんて。オレもあの人みたいに強くなりたいな…。」

コウキがそう呟きながら歩いていた時…

「あ、すいません!」

「?」

コウキは声のした方を向いた。

そこにコウキよりも年下と思える少女がいた。

「どうしたの、急に?」

コウキは中腰になりながら少女に言った。

「ちょっと頼み事があるんですけど…。」

「頼み事?」






一方その頃…

ナオキとマグマラシはソノオの花畑とソノオタウンの間の道中を歩いていた。

「これは何の鍵なんだろう?」

ナオキはさっき拾った物を見ながら歩いていた。

「なんだそれ?」

マグマラシがナオキに言った。

「さっきこの辺りで見つけたやつなんだけど、とりあえず何か役に立つかなって思って拾ってきたんだ。」

「ナオキいつから『ものひろい』の特性を持ったんだ?」

「こういうのは以前から癖になってるんだよ。」

ナオキは拾って損はないものは時折拾う習性が以前からあった。

時折、キーホルダーを拾う時もあったそうである。

「鍵である事は間違いないから一応持っておいた方がいいね。」

「そうだな。なくした奴が開けられなくなったら困るだろうからな。」

ナオキは鍵をポケットにしまった。

「じゃあ、行こうか。」

「おう。」

二人はソノオタウンを後にした。





二人はさっきコウキが歩いていた道路に入っていった。

「ナオキ、なんだあれ?」

マグマラシが指した方には大きな風車があった。

「あれは風車だよ。近くに建物みたいなのがあるからきっと風力発電をするためにあるんだろうね。」

「風で電気を発生できるのか。人間の技術はすげーな。」

「君達ポケモンと比べたらまだたいした事はないんじゃないかな。…?」

ナオキは急にぴたりと足を止めた。

「どうしたんだナオキ?」

マグマラシはナオキの方を向いて言った。

「マグマラシ、あの建物の前にいるあの子…。」

ナオキが指差した方を見ると、建物の入口に確かに誰か立っていた。

「あの子ってコウキくんじゃない?」

「…あの帽子とリュックとマフラー…そうみてぇだな。でもなんであいつがここに?」

マグマラシがそう思った時…

「あ、そこのお兄さん!」

「?」

振り向くと、そこには一人の少女がいた。

その少女はさっきコウキに頼み事をしていた少女だった。

「どうかしたの?かなり慌ててるみたいだけど。」

「うん!実はさっき向こうにいるお兄さんにも言ったんだけど、パパが…宇宙人みたいな奴らにさらわれてあの谷間の発電所の中に閉じ込められちゃったの!」

「え!?」

「お兄さん!見ず知らずで言うのも何だけど、パパを助けて!」

父親に対する不安感が伝わるほど少女は震えながら言った。

「君の父さんを誘拐した奴らがそこにいるって事なんだね。わかった!助けに行ってあげるから待っててね!」

ナオキはそう言うと、マグマラシに言った。

「マグマラシ、行こう!宇宙人みたいなって事は多分奴らの事だ!」

「だろうな。まだどっかに潜伏してやがったか!」

二人は谷間の発電所へ向かった。






二人は一旦近くにある木の陰に隠れた。


「さっきのギンガ団の奴ら、どうやらあの発電所の中にいるみてえだな。」

「そうみたいだね。それに、どうやらこの鍵が役に立つみたいだよ。」

「なんで断言できるんだ?」

「今気付いたけど、ここに『発電所のカギ』って書いてあるから…。」

「あ、本当だ。」

鍵についていたパーツの部分には、わかりやすく『発電所のカギ』という字が刻まれていた。

まさに『灯台下暗し』である。





「さっきよりかなりの激戦になるかもしれねえから姿変えた方がいいかもしれねえぜ。」

「それがいいね。」

そう言ってナオキはその場に立ち上がり体制を整えた。

ナオキから閃光のような光が発せられた。

光が消えた後、ナオキはトライス・ライトに姿を変えた。

「よし、行こう!」

「おう!久しぶりの激戦になるぜ!」

二人はあらためて発電所前に向かった。



コウキはドアを叩いていた。

「くっそー…。あいつらドアに鍵をかけてやがる…。これじゃああの子の父さんを助けるどころか、この中にいる団員をやっつける事もできない…。どうすればいいんだ…。」

コウキがそう言った時…


「コウキくん!」

この一言と共にナオキがコウキの前に現れた。

ナオキの声に反応してコウキは振り向いた。

「え?キミは誰?」

コウキは初対面の人に会うような様子で言った。

(あ、そうか。奴ら同様コウキくんも私の『この姿』を見るのは初めてなんだったっけね…。)

さっきも似たような事を言ったようなと思いつつナオキは言った。

「あ、自己紹介がまだだったね。はじめまして、私の名前は『トライス』。君の事はさっき私と同じくマグマラシを連れたトレーナーから聞いて知ったんだ。」

(マグマラシを連れたトレーナー…?ナオキの事か。)

コウキは『トライス』の姿に疑いを持たなかった。

「それはそうと、君はなぜここにいるの?」

「あ、そうだ!さっき女の子に頼まれて発電所の中に入ろうとしたんだけど、鍵がかかってて…。」

(鍵…。やっぱりこの鍵はこの発電所の鍵だったのか。)

ナオキが呟いた時、コウキは言った。

「トライス、どうにかできない?」

「鍵ってもしかしてこれの事かな?」

ナオキはしまっておいた鍵を出した。

「どこでそれを?」

「さっきマグマラシを連れたトレーナーからソノオの花畑で拾ったものだけど、持ってても意味ないからっていう理由でもらった物なんだけど。」

とりあえず同一人物と思われないようにアドリブで作った話をした。

「じゃあ、中に入れるんだね!」

ナオキはこくりと頷いた。

「それじゃあ、早く開けて!急いであの子の父さんを助けに行こう!」

「OK!」

ナオキは鍵を鍵穴に刺した。

ドアは何の異常もなく、あっさり開いた。

「よし、行こう!気を抜かないようにね!」

「うん!」

コウキが頷いた後、二人は発電所内に入っていった。





発電所内。

中は団員達がたくさん潜伏していた。

「な、何ー!?どうやって入った!?」

団員達は驚愕した。

「いきなり団体さんのお出ましってわけだね。」

「へへっ!久しぶりに腕がなるぜ!」

「くっ!野郎共!奴らを倒せ!」

団員は一斉にポケモンを繰り出してきた。

「うわ!」

コウキは一瞬たじろいた。

「おらあ!」

「せいっ!」

マグマラシが火の粉を放ち、ナオキはトライスソードで団員のポケモンに切り掛かった。

「ぎゃあ!」

「ぐあっ!」

二人の攻撃を受けたポケモンは一瞬で戦闘不能になった。

「くっ…。まさかあの時の奴らに嗅ぎ付かれるとは…。幹部に報告しなければ…。」

団員は階段に上っていった。

「す…すごい…。ポケモンだけじゃなくて、人間も戦うなんて…。」

コウキは呆然とした様子で言った。

「コウキくん、君もぼーっとしてないで戦ってよ!そうしなきゃやられちゃうよ!」

「え…あ、うん!行け、ナエトル!」

コウキは慌ててポケモンを繰り出した。

「でも…これだけの数で勝てるのかな…。」

コウキはさっきの戦いの事もあってか、かなり不安な様子だった。

「コウキくん、そんなんじゃダメだよ!数なんかに振り回されたら立派なトレーナーにはなれないよ!」

「!」

コウキはナオキのセリフにぴくりと反応した。


「…そうだよ…。トライスだってあれだけ大勢の相手に2人だけで立ち向かってるんだ…。オレだって…。」

コウキは顔を上げてナエトルに言った。

「ナエトル、たいあたり!」

ナエトルは団員のポケモンに突撃した。

「ぐわ!」

ナエトルの攻撃を受けたポケモンは遠くに飛ばされた。

「まだこっちがいるぞ。やれ!」

ナエトルの背後からポケモンが襲い掛かってきた。

「同じ手は食わないぞ!ナエトル、はっぱカッター!」

「ナエ!」

ナエトルは着地と同時に向きを変え、全身を振りかざす形ではっぱカッターを放った。

「何っ!?」

団員がそう言った瞬間、もう一体のポケモンははっぱカッターをくらい、さっきのポケモンと同じく遠くに飛ばされた。

そのポケモンはそのまま壁にぶつかり、はっぱカッターがクリティカルヒットしたらしく、そのまま戦闘不能になった。

「や…やった!!」

コウキは大喜びした。

「見事だよ、コウキくん!」

ナオキもコウキを賞賛した。

「よそ見してんじゃねー!」

団員がそう言うと、ナエトルにさっきたいあたりで吹っ飛ばされたポケモンが襲い掛かってきた。

「ナエトル、たいあたり!」

ナエトルは再びたいあたりをくらわせた。

「な…!?」

団員のポケモンは再び遠くに吹っ飛ばされ、そのまま地面に叩きつけられて、戦闘不能になった。

「バ…バカな…。」

団員はこれがさっきの子供なのかと思っているかのように茫然とした。

「よそ見していたのは、コウキくんの実力を軽視していた貴様の方だったみたいだね。」

ナオキは茫然自失した団員に言った。



ここは発電所の2階。

「大変です!一人の子供と、コスプレをした男がこちらへ向かってきています!」

団員は慌てた様子で言った。

そこには普通の団員とは違う服を着た人物が座っていた。

「ふ~ん。ただの子供、それに単にヒーローを気取っている奴ではないようね。」

そう言うと、声の主は席を立った。

「おもしろいわ。だったらこのあたしが彼らの相手をしてあげる。ギンガ団にたてつくとどうなるかを思い知らせてあげるわ!」





ナオキとコウキは待ち構える団員達を蹴散らしながら進んでいった。

「コウキくん、大丈夫?だいぶ多くのポケモンと戦ったから少し休んだ方がいいよ。」

「大丈夫だよ。そういうキミの方は大丈夫なの?オレ以上に戦ってるんだからキミの方が心配だよ。」

「私達はこれぐらいの戦いには慣れてるから心配ないよ。大丈夫なら、先を急ごう。」

「うん!」

二人は2階に続く階段を駆け上がっていった。