翌日。

ナオキとマグマラシは聖地エレメンタルでシンオウ地方での初めての朝を迎えた。

聖地エレメンタル内は別次元の空間であるが、空は外の世界と同じである。

天候などの影響もなく、朝昼晩の変化だけは外の世界と同じになっている。



二人は息が合うように同時に起床した。

「おはよう、マグマラシ。」

「ん…おう、おはようナオキ。」

「よく寝れた?」

「ああ、新しい場所に来たから落ち着いて寝れるか心配だったけど、昨夜は安心して寝れたぜ。」

「昨日のバトルが結構いい運動になったからかもしれないね。」

「そうかもな。」

お互い大笑いした。


「さて、朝ごはんにしようか。」

「おう。オレも手伝うぜ。」

マグマラシはコンロの係をやった。

今日の朝食はおにぎり、みそ汁、目玉焼き…典型的である。

他に果物系統のものもあった。



「よし、じゃあ早速食べようか。」

「ああ、オレもう腹減っちまったぜ。」

「君の腹って随分とせっかちなんだね。私もだけど。」

二人はまたお互い大笑いした。

「それじゃあ食べようか。」

ナオキが言うと二人は息が合うように同時に言った。

「いただきまーす!」

こういう一言は大事である。

人間においてもポケモンにおいても。

「ナオキのメシは相変わらずうめえな。」

「そうかい。ならもっと食べなよ。まだまだたくさんあるからね。」

「おう、そうさせてもらうぜ。」

二人は和気あいあいと朝ごはんを食べていた。

前足を手のように使ってマグマラシはおにぎりを食べたり、みそ汁を飲んだりしていた。

マグマラシはガーディアンの力で前足を手のように使う事ができる。

前足の形のつじつま上、さすがに箸は持てないが、掴む形で物を持つ事はできる。

「朝ごはんってのは起きる事と同じくらい一日の始まりを感じるよな。」

「そうだね。今日の体力をつけるためだけじゃなく、あらゆる面においてそう言えるよね。」

二人は朝ごはんの価値観をあらためて実感していた。

朝ごはんには他のごはんにはない色んな価値観があるわけである。

「おい、おかわりいいか?」

「OK。たくさんあるからもっと食べなよ。」

ナオキは声の主に勧めた。

「そんじゃお言葉に甘えて。」

声の主は勢いよくご飯に噛り付いた。

「朝はやっぱこういう事から始めねーとな。」

「そうそう。気分においても食べる事においてもね。」

「そうだな。」

そんな状態がしばらく続いた。

そして…

二人はピタリと手を止めた。

二人しかいないはずなのにまだ誰かが食べている音がした。

二人は音のする方を向いた。



「…ええ――――――――――――!!?」

二人は息が合うように同時に言った。

二人が驚くのも無理はない。



二人の近くにパルキアがいた。

「お、やっと気付いたか。」

パルキアはまるで普通の事であるかのように振る舞った。

「な…なんで君がここに?」

「どっかに帰ったんじゃなかったのか?」

「いやあそれがよ…」


それは昨日の夕方の事…

ある場所に空間の歪みができた。

そこからパルキアが姿を現した。

パルキアは辺りを見回した。

「…また失敗しちゃったのか…。」

どうやらパルキアはまたもや道に迷ったようである。

「これじゃあオレが元いた場所にも帰れないな…。どうすればいいんだ…。」

パルキアはまたしょぼ~んとしていた。

その時、パルキアはふと前を見た。


「ん?あ、あいつらはさっきの…。」

パルキアの見た先でナオキとマグマラシが歩いていた。

二人は岩場の前に来ると、そこで立ち止まった。

「何をする気だ?そこは岩場じゃないか?」

パルキアがそう呟いた時、どこからかゴゴゴゴゴゴという音がした。

「な、何だ?」

パルキアが動揺した時、岩場が自動ドアのように大きく開いた。

「!?」

目の前の事にパルキアはただア然としていた。

「よし、それじゃあ行こうマグマラシ。」

「おう、腹減ったから早くメシにしようぜ。」

そう言うと、二人は中に入っていった。

二人が入ると、岩場は再び閉じて元の岩場に戻った。


「あの岩場に何かあるのか?」

パルキアは二人が入っていった岩場に向かった。

パルキアは岩場に手を着けた。

「さっきあいつらはこん中に入っていったんだよな…。」

しばらく考えた後、パルキアは言った。

「…行ってみるか。亜空切断!」


パルキアは空間を切り裂き中へと入っていった。

しばらく進み、パルキアは外に出た。

「おお!す…すごい…!岩場の中にこんな場所があったとは…。」

パルキアはかなり見とれていた。

「あの二人はこんなすごい所に住んでいたのか。」

パルキアは考えた。

「…ここは特殊な空間だから奴らが入る事はありえまい…。よし…明日あいつらに話してみるか…。」

パルキアは一旦空間の狭間に入り姿を隠した。





「…というわけなんだ。」

パルキアはご飯を食べながら言った。

「…君って本当に何でもありなんだね…。」

「パルキアに隠れ場所なんて関係なしってか…。」

二人の言った事に対してパルキアは言った。

「オレは空間を司るポケモンだぜ。オレがその気になりゃあ遠い所でも地球の裏側にだって行けるぞ。まだ調整中だけどな。」

ナオキは思った。

(それにしてもパルキアの力は侮れないな…。決められた者しか入れない聖地エレメンタルに入れてガーディアン達のセキュリティにもひっかからないなんて…。パルキアの力ってガーディアン達すらも凌駕する程のものなのかもしれないな…。)

三人は朝ごはんを続けた。





しばらくして三人は朝ごはんを終えた。

「それでパルキア。君はこれからどうするつもりなの?」

ナオキはパルキアに言った。

「それなんだけどよ…。」

「?」

パルキアはナオキに話を始めた。

「アンタらも知ってるだろうけど、今あのギンガ団っていう奴らがオレを狙ってるじゃないか。だからよ、頼みがあるんだ。」

「頼み?」

「ああ。悪の組織から逃れるためって事で、しばらくオレをここに泊めてくれないか?」

「え?」

パルキアの意外な頼みに二人は驚きを隠せなかった。

「君をここに?」

「ああ。ここに来た時に思ったんだ。こんなんじゃあまた道に迷ってアンタらに迷惑かける事になっちゃうし、いつまた奴らが襲ってくるかわからないからな。」

パルキアの言ってる事はある意味筋が通っていた。

「だから頼む!少なくともアンタらに迷惑をかけないようにしてみせるからよ!」

パルキアは頭を下げた。

「え、え?ち、ちょっとパルキア…。」

二人は戸惑っていた。

神様と呼ばれているポケモンが同格の立場ではない自分達に頭を下げていいのか、と思ったからである。

ここまでされたらある意味もう後には引けなかった。

「わ…わかったよパルキア。君の方から言ってくれるなら…。」

ナオキは焦った様子でパルキアに言った。

「ほ…本当か?」

パルキアは目を光らせながら言った。

「ほ…本当だよ。」

ナオキは少々口ごもりながら言った。

「あ、ありがとう!これで一安心だぜ…。本当にありがとうな。この恩は必ず形にして返すぜ!」

パルキアは頭を何度も下げながら言った。


(よっぽどギンガ団が気掛かりなんだね…)

(あの戦いがかなりトラウマになってるみてーだな。)

神と呼ばれているポケモンがここまでして住ませてほしいと願う事からパルキアがいかにギンガ団の手から逃れたいかがうかがわれる。

「一応、ガーディアン達にも聞いておこう。」

「そうだな。」

二人はガーディアン達のいる場所へ歩いていった。





ここはガーディアン達の武器が安置されている場所。

そこでナオキはガーディアン・トライスに事情を話した。

「…というわけで、ここにパルキアを住ませてあげてもらえませんか?」

「なるほど…。彼がギンガ団に狙われているポケモンか。」

ガーディアン・トライスは納得したように言った。

「そういう理由なら一理あるね。いいよ。彼も神と呼ばれているポケモンだから悪い事はしないだろうからね。」

「本当にいいんですか?パルキアは仲間になってないのにここに入ってきた、極端に言えば侵入者みたいなものなんですよ。」

「いやいや、もし本当の悪者だったら今頃ここには入れてないでしょ?ここは純粋な悪でない者なら誰でも入れるのが本当の特徴なんだからね。」

「はぁ…そうだったんですか。」

「まあ…それでかつてバオウの武器を奪われた事もあるから油断はできないけどね。」

ガーディアン・トライスは過去にやった失敗を教訓にしていた。

「今回は信頼できるし、君達と一緒に戦ったから特に気にする程じゃないよ。だから気にせずここに住ませてあげてね。」

「はい。わかりました。」


こうして聖地エレメンタルにパルキアが住む事になった。