ナオキは辺りの様子を見ながら思った。

「と言っても…今のペースじゃあ正直言ってキリがない…このままやり続ければ私達の体力がもたない…どうすれば…」

ナオキは何か手はないか考えていた。

その時…

ナオキの脳裏に閃光のように何かが浮かび上がった。

「そうか!これなら…」

「ナオキ?何かいい考えでも?」

マグマラシがナオキに言った。

「うん。これなら一気に敵を一掃出来るかもしれないよ!私が言う通りにスタンバイして!」

ナオキはマグマラシに耳打ちをした。

「オ…オレはどうすればいいんだ?」

パルキアは戸惑いながら言った。

「君はここで!その後…」

ナオキはパルキアに耳打ちした。

「わかったぜ!」

パルキアは言った。

「よし、じゃあいくよ!」

ナオキはトライスソードを構えた。

「とりゃあ!」

ナオキはトライスソードを振りかざした。

団員のポケモンはそれをひらりとかわした。

「バカめ。どこを狙っている。そんな攻撃簡単に避けられるわ!」

団員はナオキに言った。

続けてマグマラシが攻撃した。

「くらえ!火炎放射!」

マグマラシの放った火炎放射も簡単にかわされた。

「ははは!どうした?狙いがズレてきてるぞ。」

マグマラシの放った火炎放射は1、2歩歩けばかわせるくらいに狙いがズレていた。

「どうやらお前らの体力もそろそろ限界のようだな。」

団員は勝ち誇った様子で言った。

「やはり数の多い我らが有利だったという事だ。」

「これならいけるぞ!野郎共、奴らの体力がなくなるまで攻撃をかわし続けろ!奴らもこれ以上長くは戦えない。このまま奴らを追い込むんだ!」

団員は他の団員達に言った。

ナオキはトライスソードをクロスさせた。

トライスソードの重なった所に稲妻が流れる。

流れた稲妻はやがて大きな電気の固まりとなってトライスソードが重なった所に集まっていった。

「トライス・ショット!」

ナオキはトライスソードを両側に振り下ろした。

トライスソードに発生していた稲妻の塊が放たれ、団員のポケモンに飛んでいった。

団員のポケモンは再びそれをひらりとかわした。

「ははは!どうした?そんな攻撃では静電気程度のダメージすら与えられないぞ。」

「オレも応戦するぜ!みずのはどう!」

パルキアは団員のポケモンに技を放った。

微妙にかすったが、直撃には到らなかった。

「おおっとおしかったな。まだパルキアには体力が残っているようだが、奴らとはあまり変わらないようだな。」

「くっ…。」

パルキアは図星のような仕草をした。

「まだだ!みんな、攻撃を続けるよ!」

「おう!」

マグマラシとパルキアはナオキに呼応するように言った。

マグマラシ達は攻撃を続けた。

だが、一向に攻撃は当たらない。


その状態がしばらくの間続いた。






「はぁ…はぁ…。」

3人は攻撃はくらっていないにしても、既に体力は限界に近い状態だった。


「ははははは!その様子ではもはや立っていられるのがやっとのようだな。」

「それに比べてこちらはまだこれだけのポケモンがいる。この勝負は俺達の勝ちだな。」

団員は余裕を見せた様子で言った。


すると、ナオキがようやく口を開いた。

「…何を勝った気でいる…。」

「何っ!?」

ナオキの一言に団員はア然とした。

「貴様らはまだ気付いてないようだね…。周りの状況に…。」

「何だと?」

団員は囲まれている状況にもかかわらずなぜあんな事を言えるのか理解が出来なかった。

「確かに…この状態じゃああと1回技を出すので精一杯だろうね。」

ナオキは息継ぎをしながら言った。

「けど…もう後はその一発で十分だ!」

「何っ!?どういう事だ?」

「まだわからないのか…。なら…今教えてあげるよ。」

そう言うと、ナオキはトライスソードを構えた。

構えたトライスソードが光り、姿を変えた。

「いくよ、マグマラシ、パルキア。」

「おう!」

「派手に行こうぜ!」

3人は攻撃体制になった。

「…!」

その時、団員が何かに気がついた。

「ま…まさか奴らは!」

だが、もう既に遅かった。

3人は一斉に技を放った。

「ライトニング・スラッシュ!」

「ブラスト・バーン!」

「亜空切断!!」

トライスソードから大きな衝撃波が放たれ、団員のポケモン達を襲った。

マグマラシの全身から巨大な炎の塊が放たれ、団員のポケモン達に当たると、ものすごい大爆発が起き、その爆発が団員のポケモン達を一瞬にして飲み込んだ。

パルキアの両手から今まで以上の斬撃が放たれ、団員のポケモン達を一瞬にして切り裂いた。切り裂かれた所に一瞬、空間の裂け目が発生した。


全ては一瞬だった。

一瞬が終わった時、団員は目の前の光景を見て呆然とした。

団員の見た光景は、さっきとはまるで真逆の光景だった。

ついさっきまでノーダメージだった団員達は完全に満身創痍な状態になって倒れていた。

そこに今立ち尽くしているのは、追い詰められていたはずの3人だけだった。


しばらく間をおき、団員は言った。

「…全ては…計算されていたという事だったのか…。」

「そういう事さ。」

ナオキは団員の方を向いて言った。

「私達は今まで攻撃が当たらなかったのではなく、『わざと当てなかった』のさ。全ては分散していた貴様らを一点に集めるためにね。」

「…やはり…。」

団員は気付くのがあと一歩遅かったのをあらためて感じていた。

今までナオキ達は攻撃を外してばかりいたが、これは一瞬の作戦だったのだ。

攻撃を放つ時、あえて「避けやすい方向がすぐにわかる」形で攻撃して、それによって間接的に一点に集まるように誘導していたのである。

「『多勢に無勢』はよく言うけど、それもやり方を工夫すれば攻略できる。戦いは数や力が全てじゃないって事さ。」

「くっ…。」

「観念しな。もうアンタらにポケモンはいないぜ。その状態じゃあオレを捕まえる事もできねぇだろうからな。」

パルキアは団員達を見下ろしながらナオキに続くように言った。

「くっ…こうなってしまってはもう我々に打つ手はない…。悔しいが、ここは一旦引くしかないな…。」

団員はポケモンを引っ込めて立ち上がった。

その時、団員は呟くように言った。

「だが、パルキアの力はやはり本物のようだな…。これはボスにいい報告が出来そうだ…。」

「!?」

ナオキは団員の一言をひそかに聞いていた。

「勝負には負け、パルキアは捕らえられなかったが、いい情報は手に入れた。」

団員はナオキ達の方を向いた。

「今日のところはここで引いておく。だが次はこうはいかないぞ。」

団員はそう言うと団員達の方を向き、「一旦体制を立て直すぞ!引き揚げだ!」と言った。

団員達はポケモンを引っ込め、一目散に逃げ出していった。

「我々は諦めんぞ!ボスが理想としている『新世界』を築くために!」

団員のリーダーらしき人物が最後にこう言うと、そいつも走っていった。

去る者は追わず。3人は団員達の姿が消えるまで団員の走っていった方向を見続けていた。

やがて辺りが静寂に包まれた。

「やったな、ナオキ!」

「見事だったよマグマラシ、パルキア!」

ナオキは二人に言った。

「二度もアンタらに助けてもらっちゃったな。ありがとよ。」

パルキアはマグマラシ達に言った。








「そんじゃあこれで失礼するぜ。また奴らにからまれちゃあたまったもんじゃないからな。」

「今度は道を間違えないようにね。」

ナオキは念を押すようにパルキアに言った。

「おう、わかってるぜ。」

パルキアはそう言うと、空間に向かって「亜空切断」を放った。

「そんじゃあまたどっかで会おうぜ。アンタらも気をつけて帰れよ。」

「おう。パルキアもな。」

パルキアは空間の歪みに入った。

空間の歪みはパルキアが完全に中に入ると小さくなり、やがて跡形もなく消えていった。

「よし、それじゃあ私達も帰ろうか。」

「そうだな。」

そう言うと、二人は聖地エレメンタルを目指して歩いていった。


歩く中、ナオキは考え事をしていた。

(あの時…団員が言っていた『新世界』っていったいどういう事なんだ…?奴らはパルキアを捕まえて何をしようとしてるのだろうか…)

帰り道の中、ナオキはしばらくこの事を考え続けていた。

(帰ったらトライスさんに報告しておこうかな…)

多くの謎を抱えながら二人は聖地エレメンタルを目指して森を歩いていった。