米国のコロナ禍緩和から一連の動向は実にわかりやすい教材を私に提供してくれまして

理解が進んだ気になっておったのですが

いざ欧州や日本に水平展開しようとすると何やら事情が違いまして

緩和は続いていても景気の過熱ぶりは鈍かったりします。

欧州や日本のキャッシュはどこにいっているのだ?

なんとも謎といいますか、どうなっているのか、思っていましたが

それでもじりじり消費が進んできたようです。

七並べの6や8の出し時といいますかキャッシュの切り札感を感じます。

 

とりわけ日本は

他国と比べ資源に乏しく面積も狭く自然災害の巣に住んでいるという事情もあり

宵越しの金は持たねえなんて言っているとすぐに詰んでしまう環境にありまして

個人にも経営者にも蓄えて備える文化があるようにみえます。

作用・効果を見たい立場のお方からは

「あなたたちどうせ貯金しちゃうんでしょ?」

といったコメントもありましたっけ。

お立場はお察ししますが。こちらの立場もお察しくだされ。

 

 

前置きが長くなりました。

 

経済における貨幣数量説の定式化されたものは次式で表されます。

 

MV=PT

 

M:貨幣量

V:貨幣の取引流通速度 略して流速

P:物価

T:財・サービスの取引量

 

貨幣数量説の P(物価)とT(財・サービスの取引量)は

例えば株で言えば株価と一定時間における出来高となります。

 

[貨幣量]×[流速]=[株価]×[出来高(/時間:例えば日)]

 

 

 

他方熱力学における理想気体の状態方程式は次式で表されます。

 

pV=[nR]T

 

p :圧力

V:体積

n:モル数

R:定数

T:(絶対)温度

 

同じ記号を使われると混乱しますが

全く同じ乗算過程に従う系(システム)と理解できます。

ならば熱力学とのアナロジー(類似性)を以って経済にアプローチできるのでは?

〇まず言えることは乗算過程に従う系であるということから対数正規分布が合理的に導かれるということです。

 

経済情報番組などで市場の熱気とか投資熱が冷めたとかいう表現を耳にしたりします。

経済に温度の概念を導入することができる(既にできている)のであろうと考えるわけです。

 

[株価]×[出来高(/時間)]=[売上高(/時間)]=kT と仮定します。

 

k:比例定数

T:(絶対)温度

 

 

ただ困ったことに日経平均にはメンバーチェンジがしばしばありまして

私の手法では時系列が繋がらない問題が起こります。

なのでここでは現在の日経225から1981年まで情報が残っている180社をピックアップして

180社の株価の単純平均を算出して用いることにしました。

 

日経平均株価と180社単純平均株価を比較した年推移が下図です。

2006年のピーク強度に差があるところが若干気になりますが

置き換えてもほぼほぼ解釈を誤ることはなかろうと。

日経平均株価:左縦軸 単純平均株価:右縦軸

 

 

 

180社単純平均株価と年間出来高総和(株)を表したのが下図です。

株価と出来高の関係は微妙といいますか、

通常は逆相関にあってバランスをとりあい

正相関(同時に上げる)の時がバブルを感じさせる本当に強い時と言えましょうか。

 

180社単純平均株価と年間売上高を表したのが下図です。

 

売上高が突出したピークを見せたのは以下の3時期です。

①1984-1988 いわゆるバブル期

②2002-2006 サブプライム問題発覚前

③2011-2013 リーマンショックからの立ち直り期

 

①~③の時期、株価と出来高が正相関を持つ時期について

定株価比熱Cpと定出来高比熱をCTとし、比熱比γ=CT/Cp Cp/CTと定義することとします。

 

定株価比熱Cp:売買の勢力が拮抗、出来高は上がるが値は動かない状態の比熱

定出来高比熱CT:個々の株価も出来高も動くが銘柄間調整されてトータル出来高は動かない状態の比熱

比熱比γ = Cp/CT

 

(ポアッソンの式)を参考に

[株価]×[出来高(/時間)]^γ=一定 の関係

単純平均株価と出来高についてそれぞれ対数をとってプロットします。

P^γ × T =const P × T^γ =const

γ ln(P) + ln(T) =const’ ln(P) + γ ln(T) =const’

ln (T) = -γ ln(P) + const’ ln (T) = -(1/γ) ln(P) + const’

 

縦軸:ln (T:出来高),  横軸:ln (P:単純平均株価)

 

傾きから比熱比γを求めましたところ

①1984-1988 γ=-(1/0.58) ②2002-2006 γ=-(1/0.74) ③2011-2013 γ=-(1/0.62)

 

となりました。

 

マイナスの比熱比に意味はあるの?

 

自由気体モデルで言えば例えば等温過程においてpとVは反比例(逆相関)が普通でありまして

比熱比γ>0です。

なので通常(逆相関の関係)からの逸脱を示した異常性シグナルと言いますか

私的にはγ<0を以ってバブルと定義したい、と。

 

2024.01.12 追記

ポアッソンの式は理想気体において導かれる式で

同時に理想気体において比熱比は定数である。

よって比熱比γ が動き正負反転するのは論理矛盾を起こします。

そのつまり理想気体では記述できないという。。

では違うところはどこなのか? 理論の変調で対処できないか?

今ここを探しているわけですがなかなか見つかりません。

 

単種の理想気体であれば原子分子の形態で個々の比熱は定数で決まります。

2種類の混合気体であれば重み平均で両者の間を動きますが.. 負にはなりません。

負とはなんぞや? 負の分子量(質量)とは?

思うに買い玉建てを正としたときに売り玉建てが負になるのではないか?

正の分子量の気体と負の分子量の気体との二相共存をイメージすべきか

売り玉が決済され解消される時何が起こる?

 

 

 

 

更にマックスウェル・ボルツマン分布に照らせば次式より標準偏差σ から温度 T を導くことができます。

 

T=(π/(3π-8))×(m/k)×(σ^2)

 

標準偏差σ の2乗に比例するということで

経済の世界では標準偏差よりもボラティリティの方が馴染みがよいかもしれません。

ボラティリティの2乗がいわゆる温度Tに相当する(比例する)概念ということかと。

 

[株価]×[出来高(/時間)]=[売上高(/時間)]につきまして

個々の年における標準偏差σ を算出しました。

前回の記事の通りΣabs/2から換算定数0.39とデータ数Nを用いて簡易に算出できてしまうのですが

一応確認のためヒストグラム検定をしました。

180社からのデータ数 N=permut(180, 2)=32220 あれば累積でなくても釣鐘型で十分フィットします。

 

 

標準偏差σ :左縦軸, 温度T/(mk) :右縦軸, 横軸:西暦

 

σ 並びにT のダウントレンドはボラティリティの収縮、市場の冷え込みを意味するわけで

2017のT/(mk)=3 で踏みとどまりなんとか持ち直そうとしているところ。

1980年代の夢よもう一度.. って少子化問題をなんとかしないともう来ないかも。。

 

 

 

私なりのバブル観を展開してまいりましたが

この視点を以って昨今のにぎわいがどうかと申しますと

株価と出来高の正相関はまだ年足では確認するに至らず

年間売上高3500兆円(2006年と2013年のピーク)を試すには → 14.5兆円/日×240稼働日/年となりまして

 

まだまだ序の口

 

現時点でホールドされている方はおめでとうございます。

ピラミッディングで更に攻めるか

どこまで引っ張ってどこで降りるか、

納税額をシミュレートして逆ピラミッディングされるのも一つの手かと思われますが

それは年後半~年末でいいでしょう。

 

売り玉建ては余程強い根拠を以って挑む人以外はちょっとどうかなあ、と思います。

ならば買ったらいいのかといいますと

以前にも申し上げましたが欧米にショックがあると日本も巻き込まれますので

(売上高の2006年からの二段落ち:サブプライム&リーマンショックを参考に)

いずれも両手放しで行けるものではなく

 

崖っぷちの花を摘みに行く

 

といった覚悟で投資判断はご自身でしてください。


 

あるいはいっそ

 

崖下で来ない(かもしれない)バスを待つ

 

といった選択もアリかと思います。

来ない(かもしれない)バス・・ これをいくつ待てるか

候補が多いほど生涯においてあてる可能性も上がりますからね。

 

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2023.06.27 追記

以下参考資料より抜粋

 

バブル期の認識についてはほぼほぼ一致しています。