引き下げたままのゴーグルと
群青を引き連れた空の檻
少しだけ悲しげに伏せた
表情の奥底で確かめる
誰もいない、灰色の街で
少年は一人駆け足に通り過ぎる
誰の瞳も映さない
誰の言葉も聞こえない
越えてきた聳え立つ雑居ビルは
最早何の意味も持たない
国としての意味も、
存在の意味も。
埃に塗れた床に
少年は独り腰を下ろす
雨の匂いが漂う街と
未だ煌々と光る星空の下
少年の瞳は薄く濡れていた
「いかなくちゃ」
小さく呟いて肩を抱く
ゴーグルに映る街は
薄暗く夜を纏い始める
何が正しいのか
誰が正しいのか
答えなど何処にもない
少年は一人だった
今や、一人だった。
「やらなくちゃ、」
やはり小さな声のまま
虚ろに喉から絞り出す
星空を覆い隠す程の雨雲は
雑居ビル群の真上に陣取り
ぽつぽつと雨を鳴らし始めた
少年の姿はそこにない。
唯一つ、少年の足跡は
雨降る廃墟の通りへと
静かに溶けていった。
「少年は優しい街に抱かれて」