少年は思い出す事を諦めた


何時の頃か

激しい痛みを伴って

記憶を抉る様な

言い様もない感覚に溺れて

白昼光の束を集めて

眩む夢の中で

誰かが弾いた結果を

データの海で拾った


コード:レス

0の檻で飼い殺した

狂気の獣は

何時だってそうだ

変わらないまま

1の槍で刺し貫いた

言葉の端を折って

餌として与える様に

傷に口を付けた


霞んだままの記憶

思い出だなんて

陳腐な言葉で現す

踏み躙ったモノを

その手で抱いたまま

掻き毟る様に爪を立てた


少年にはそれが全てだった

白い欠片だらけの海に

少年は投げ捨てた事を

事象を、現実を、夢想を、幻覚を

並べたままの羅列に

静かに参列した

死亡通告は君の手で終わらせて


其処に転がる

屍を見下す様に

少年は足をつけず

浮かんだままの夢で

感傷に浸る様に

誰かの夢だと瞳を伏せた





「少年はそうして心を殺した」