切り裂いた鈍色の雲

隙間風が頬を撫ぜる

勝負だ、呟く声も遠く


反響した鉄の塊が

夜の合間に溺れていく

街灯の向こう側

誰かの足跡を並べて

その度に忘れてそうになる

茹だる様な熱でさえ

掠めた温度差の渦中


その腕を取って

コードレスの世界が

少年の視界を埋めていく


希望論がなんだ、

終末論がなんだ、


手の甲で拭った傷口が

忘れそうになる言葉を

何度だって此処に置いていった


前だけを向けよ。

笑い飛ばせるまではさ。


精一杯の力で握り締めた銃と

目深に被ったフードの奥で

見据えた世界の中じゃ

酷く小さな幸福論、

それでも別にいいんだと


イチは叫んだ。

ゼロは望んじゃいない。と、

足並み揃わない雑音で

蹴飛ばした風景の間

その白いだけの世界を殺して

散々な人生に華を添えようか、


手向けるのはそれだけで十分だ。


裾が解れた指先で

指差す銃声の引き金を引いて

それが最後だって笑ってくれよ、




「イチとゼロの争奪戦」