悲しみを両手で救う

誰にも返せない

答えなど誰も知らない


その眼を

静かに潰す

見えない世界など

何の意味もない

問うべき問答すらも

すでに皆無なのに


何を求める

痛みだけが残って

染み付いた匂いと

切望した命の香り

この足が踏み潰す

希望すらも

その瞳には映らない

絶望だけが犇めく

喉を掻き毟る

背の荷に押し潰される

言葉など誰も持たない


救われずに

掻き消された呼吸音

この両手の上で昇華する

問うべきは重さなのか

それとも存在意義なのか

分かっている事も

言わなければただの空気

無干渉の傷口と

癒える筈のない感傷と


薄れない絶望に

忘れた記憶を並べて

ただ静かに悲しみだけ

この手に掴んで

何も言わない

言える筈のない言葉を


引き摺る様に笑う

その歪んだ笑みにすら

慣れる事はなくて

そのくせ怖がるのは

全ての最初の話

悲しみが生きる為に息衝いて

忘れた筈の涙を流して

許す事を許して

救われない悲しみを生かした


それが答えではない事は

気付いてはいたけれど