睫毛に乗り上げた

円らな雫は瞬き

滑り落ちて波紋

裾を翻しては

泣きそうになる瞳を

伏せて背を向ける


「――、貴方は」


続かないのは

伝えても意味がないから

無駄だと枝差しながら

微笑む貴方の隣は

もう誰もいない

赤い視界の中じゃ

見守る事すら

出来やしないのに


笑っている

彼の人は思い出せないまま

忘れていくんだろう

橋の上で泣き崩れる

袖で拭う目元

薄く桃色に染まり

貴方をその硝子に映して


「――のくせに、」


責める事など

誰にも権利はない

もうあの場所は

土に埋もれてしまった

最愛の場所へ


誰も、


還れない。