流れていく景色を眺める

置いていかれる様な錯覚と

不釣り合いなほど

大きなボストンバッグ抱えて

膝を一人震わせていた


タタンタン、と

不規則な震動に

身体を揺らして対応する

隙間から覗いた世界と

窓枠が区切った景色に

僕の名前が薄れていく気がして

焦ってその手を伸ばすけど

硝子が拒んだその先で

藍色が溶け出してった


飛び出したのは意味もなく

理由なんて大層なものも

別に持ってやいなかった

頬杖ついた机にあった

誰かが描いた落書きよりも

自分の価値があるのかさえ

分からなかったと言うのに

これ以上の事を求めてほしくなくて

逃げ出した先に

行き先なんてなかった


タタン、タン。ギシリ。

心臓が止まるみたいに

吊り革も一度大きく揺れて

少しずつ動きを鈍くしてった

此処から先は、何もない

僕は何も持ってない

ボストンバッグなんて、

ただの形みたいなものだから


錆びたレールの上で

両の手を広げる

息を止めて数秒、

深い藍色の中に溶けた。


散らばったバッグの中は

何も残さないまま