履き慣れたスニーカーと

力を込めた両足が

踏みこんだペダル

明るい色に塗り直した自転車

跨ったサドルで弾ける

感触は雲の上を行く飛行機

走り出したタイヤは

チョコレートみたいに溶けていく

街の中に吸いこんでいく


誰も気付かない様な

小さな花弁に笑いながら

過ごしてきた住宅街に

同じ様な顔の中

左右揺れ動きながら

背中を追い越していく


太陽が傾いてきて

眩しかったはずの直線

影が伸びて君に届く

汗が流れていく

スニーカーの踵潰して

駆け寄った君に笑いかける

「今日も楽しかったね」

そう言って笑えば

眠りゆく街が微笑んだ気がした


帰ろうか。

大人になるなんてさ

もう少し後でも遅くはない

緩めた口の端

言いたい事はたくさんあるけど

今はこれだけでいいよ

十分幸せだからさ

見下ろした街角の隅で

君が笑った気がした