上擦る声を引き摺る

眩しいだけの太陽は

見下ろす紅の街角

真白な月さえも

淡く色付いていた


人差し指差し出して

止まる揚羽蝶には

誰も気付きやしない

溜まる言葉の上に

均衡を保つ水面下

限りある命の意味さえも

染み付いた匂いに紛れる

甲高い金切り声は

僕の後ろを突き刺して

割れた雲間を眺める


もう言わないよ

戻らないから

心配しないで

滲んだ端の方を

指で摘んで弾く

似た様な思いが

鈴を転がす様に笑う


越えられればいいと思う

喉の奥で止まったままの

引き出せない感情も

君が知っていてくれるなら

あの時の揚羽蝶の行方も

僕が知るところではないから


簡単なお別れで

この手を離そうか

小さな声で繰り返す

秘密話の向こう側

幽かに揺れる水面も

僕を送る様に漣穿つ

足首に触れる温度は

少しだけ哀愁を撫ぜて


綺麗な夜に落ちていく

色を失う空の中で


僕は君を失う。