向こう側が遠く

歪に変わる君の顔に

猫が問いかける


「何処へ行くんだい」


問いかけも虚しく

白線に飽和する声も

皺枯れ嘯く

境界線に溶けた


「何処へ逃げるんだい」


立ち入り禁止も

飛び越えれば

止めるモノは何もない

君が越えるなら

僕も連れて行けばいい


そして僕を殺せよ

そうすれば諦めるのに


「何処へ、」


何処へ、何処へ何処へ。


あの猫は、僕だ。

そして溺れた君の背に

突き立てた爪も

返らない声すらも

飲み干してしまえば


何も残らないよ

其処にも、何処にも


黒塗りの翼も

もいでしまえば

君は飛べずに地へ墜ちる


「何処へも、」


行かないで

逃げないで

変わり果てた鎖すらも

千切らない様にそっと

触れる事は許されない


離れない様に包んだ

踏み切りの向こうは紺碧


嗚呼、もう此処に君はいない

するりと抜けだした

両の腕に残らない温度

沈んでいくのは、僕だ



そうして呼吸を止めて


沈む彼方に君を見る