知っているんだ

遠いのは記憶の果て

歪んだ薄い霧の中

君と繋いだ掌の温度は

あの時のままなのに

もう二度と触れない場所に

それは存在してたんだ


嘘ついたのは

衝動的な感情の渦

一人は嫌なのに

独りがいいと嘯いた

君の瞳は悲しみで濡れて

そんな顔はしないで

離れられなくなる

悲しい顔は嫌だ

寂しそうな顔も

笑顔でいてくれ

笑っててくれ

触れなくてもいいように


君といた淡い色彩は

膨らんだ世界の極彩色に

溶かされては薄れる

それでも覚えているのは

それだけ大事だったから

君はもういいんだよ

囚われなくていいんだ

自由なんだよ

温かな記憶の中で

手を伸ばせばいいんだ


ほら、嗄れた声は

涼やかな風に乗っかって

美しいままの季節は

置いてかないように

君の掌を取っていった


終わりなんだ

思い通りにはならないけど

この季節の最後には

あの温度が傍にあればいい