もう涙は乾いた

頬を伝う物は何もない

ただ悲しかった

虚空を見つめるあの瞳が

目蓋に焼き付いて離れない


声は聞こえてた?

目は見えていた?

触れた指に気付いた?


分からなかった

そうして失った時には

全てが静かに沈んだ

意識の底には

記憶の断片が眠っていた

ただ忘れていただけの

確かな過去

歩く床が擦れる音が

悲しく響く夜の黒も

怖くもなにもない

悲しいだけだった


なんで呼んでくれなかった

なんで呼んであげなかった

でも幸せだったって

そう納得してしまったから

何も言えないよ

何も、もう伝えてあげられない

これからはずっと

両の手を合わせて

双眸を瞑って祈るしか

僕には出来なくなっちゃったよ

ねぇ、どうして

こんなつもりで来たんじゃない

本当は帰るつもりだった

だけどね、気付けば

気が付けばいなくなった

もうここにはいなくなった


言いたい事

言いたかった事

たくさんある

多分、これからも増えてく

だけどもう伝えられないから

待ってて

そこで『二人』で

僕達を待ってて

いつか追いつくから

それまでは

少しだけお休み

お休み

おやすみ。なさい。


そうして幸せだったって笑って。