田植えが終わりました
5月の大型連休も過ぎました。
全国の多くの地域で田植えが終わっていることかと思います。
この時期の水田は稲の苗の丈も短く、景色がきれいに映り込みます。
今では気温の移り変わりは、あちこちのデータから正確に知ることができます。
昔の人は自然の中にある季節の指標を利用してきました。
太陽暦でなく、陰暦の場合は季節と暦の間に大きなずれが生じる場合があり、使い物になりませんでした。
そこで、重宝されたのが二十四節気、
さらに七十二候や、
完全日本オリジナルの暦である雑節が使われてきました。
とは言っても気候を把握するには、
統計に基づく暦よりも、
身の回りの自然現象を観察する方が、
確かな方法であることは間違いありません。
しろかき馬
長野県の北安曇地方では、山の雪の中から、黒い岩肌が露出し、それが馬の形になるのを利用し苗しろの準備を行いました。
この馬は「しろかき馬」と呼ばれています。
雪解けに現れるしろかき馬 ※
このようなことから「代馬岳(しろうまだけ)」と呼ばれていたのが、いつの間にか「白馬岳」と字が変わり、そしてさらに「はくばだけ」と呼ばれるようになったということです。
岩肌が馬の形になって現れるのは、この地方では他に
小蓮華岳(大日岳(だいにちだけ)とも呼ばれる)が知られています。※※
白馬山麓
白馬山麓ををタイトルとした歌謡曲があります。
作詞:喜多条忠
作曲:平尾昌晃
で兄弟のデュオ、狩人が歌いました。
狩人と言えば1977年にデビュー曲として歌った『あずさ2号』が大ヒットしました。
『白馬山麓』、この曲中では、
「...あの山肌が
白い馬描きだせば春は近い」
と歌われていますが、これは明らかに間違いです。
白馬山麓では、黒い馬が白い山に描き出されるのです。
一方、残雪が白く浮き出て馬の形を描く場合もありますが、
それは、こちらです。
2022/05/11 #ニュース #中京テレビ #CTV
北アルプスにそびえる標高約2900メートルの笠ケ岳の頂上付近に、
今年も、雪解けとともに白い馬の形をした雪形が姿を現しました。
【2022.5.11 16:20放送】
動画が削除になった場合のために、音声を文字で記載しておきます。
「北アルプスにそびえる標高およそ2900mの笠ヶ岳。
その頂上付近に雪解けとともに白い馬の形をした
雪形が姿を現しました。
岐阜県高山市の麓の農家では
昔からこの白馬があらわれるのを見て
田植えを始める時期の目安にしてきたということです。
今年の田植えは例年通り今月20日ごろからで、
白馬はもうしばらく農作業を見守り続けます。」
白馬山麓をWEBで確かめてみても、長野県、
北安曇地方の白馬村、小谷(おたり)村、大町市を指すと案内されます。
もし、笠ケ岳の白い馬のことを書いたつもりであれば
タイトルは「笠ヶ岳山麓」とすべきでした。
もしも創作の意味合いで、白い馬が現れる山麓を
白馬山麓と独自によんだのであっても、誤解を招くことは十分に予想できたはずです。
ですから、これはないでしょう。
『白馬山麓』の発表は1980年です。
狩人と言えば、あずさ2号のイメージが定着していた当時、
白馬山麓と言えば、白馬村、小谷村、大町市の大糸線沿線を思い浮かべるのが普通です。
この誤りは、机上で「イメージ」をひねり出す作業だけで終わってしまった結果です。
神々の機嫌を損ねた怠慢
歌謡曲のもとである歌謡の歴史は、
古事記・日本書記や各国の風土記に記された
「記紀歌謡」にまで遡ります。
それはまさに、その土地の風土や人々の息遣い、神々への祈りと直結した
「魂の叫び」でした。
句をひねるにも、芭蕉、一茶はその土地に足を運び、そこで詠みました。
作詞家の喜多条忠氏は日本作詩家協会会長も務めたた人です。
そんな要職にあった人が「黒」を「白」と言いきってって憚らないのは、
不誠実を通り越して、ほとんど犯罪です。
学術論文絵あれば、訂正の記事を書くのが通常です。
こんな体たらくが歌謡曲の衰退を招き、土地々々の神様を落胆させて,
それがその後の日本の衰退を招いてしまったと言えるでしょう。
ネガとポジ
批判したままで終わるのも後味が悪いので、
まき散らせてしまった毒を中和し、
昇華させておきたいと思います。
二つの地域を擁する山の位置関係は、白馬岳が北、笠ヶ岳が南、のように
緯度はずれていますが、飛騨山脈(北アルプス)の東と西に位置しています。
この東西で馬の色がネガとポジ(あるいはポジとネガ)の関係になっています。
北アルプスを挟んで、
一方は「雪解けの黒い馬」、もう一方は「残雪の白い馬」
なんと見事な自然の対比でしょうか。
趣を持つ自然の営みを讃えます。
※ 『伝説のふるさと』P136、信濃毎日新聞社編集局、信濃毎日新聞社 刊(昭和47年)
から拝借しました。
※※例えば、
白馬連峰の雪形
https://www.hakuba-furuhata.com/yuki.html
小蓮華岳に現れる馬も黒い馬です。
大日岳とは、かつて信州側で呼ばれていた名前です。
今は新潟県側で主に呼ばれてきた小蓮華岳の方が観光・登山に関して多く使われるようです。
山頂にかつて「大日如来」の石像や鉄剣が祀られていた信仰の歴史に由来します。

