恋に破れた作家
失恋をばねに、後世に残る書を表した作家の筆頭は
ダンテでしょう。『神曲』を表しました。
そして、数多くの名句を集めたロシュフコーの『箴言集(Maximes)』には
504編の箴言が記されていますが、そのうちの1割程度が恋愛に関するものとされています。
やはりロシュフコーも大失恋をしています。
恋愛を「恋」と「愛」の2つに分けて、前回は恋を中心に考えましたが今回は愛を中心に考えます。
それぞれ
恋(こい): 対象を強く求め、切なく思う感情。自分主体の「渇望」や「ときめき」。
愛(あい): 相手を慈しみ、大切に思う心。自己犠牲や「包容」「絆」のように、より普遍的で深い。
のニュアンスを持ちます。
サン=テグジュペリの言葉
フランス語の amour は分割できませんが、恋・愛、両方の意味を持ち合わせています。
サン=テグジュペリの名言に
「愛とは、お互いに見つめ合うことではなく、
ともに同じ方向を見つめることである」
があります。「仲間」や「絆」を強くイメージさせます。
サン=テグジュペリの言葉とは直接関係するわけではないのですが
「映画を見に行くカップルは長続きする」傾向があるそうです。
二人は同じスクリーンの方向を見ています。
「じゃんけんポン!」「あっち向いてホイ!」
も「同じ方向を見つめること」からすると、じゃんけんの勝者と、つられて指先で示された方向を見てしまう敗者の相性はきっとよいのでしょう。
天才・黒鉄ヒロシの世界
恋愛を「恋」と「愛」を分けましたが、愛もいくつかの形があるようです。
ギリシャではエロスとアガペーがあります。それぞれ、
エロス:
また、相手の美しさや素晴らしさに惹かれ、「自分のものにしたい」と強く願うエネルギーであり、
相手に「魅力(価値)」があるからこそ惹かれる愛とされています。打算的とでもいううのでしょうか。
哲学者のプラトンは、肉体的な欲望から始まり、最終的には真理や美のイデア(究極の理想)を追い求める精神的な向上心も「エロス」と呼びました。
方向としては、「上昇志向」です。
アガペー:
自分の利益を求めず、相手の幸せを第一に考える。「良い人だから愛する」のではなく、どんな相手であっても等しく大切にする愛。
方向は「上から下へ(与える)」向いています。
この2つはビッグコミックに連載されていた
黒鉄ヒロシの『赤兵衛』※でしばしば論じられていました。
主人公・赤兵衛はエロスとアガペー、すなわち愛の求道者であり伝道師だったのです。
セルジュ・ゲンズブールの「芸術」
「エロスは性的なイメージが強いのですが、もともとは高い理想を追い求める知的好奇心までもが含まれていた」
と考えると、しばしば「エロオヤジ」と呼ばれる
セルジュ・ゲンズブールも高い理想を追い求めていたと、そして作品も芸術と言わざるを得ません。
ジェーン・バーキンと「Je t'aime... moi non plus」を歌って、お叱りを受けた後にも
めげずに独自の路線を貫き、レジェンドとなりました。
Serge Gainsbourg - Love on the Beat - 1 Love on the beat
(INTEGRALE MUSIC)
おわりに
恋愛、恋、愛にはいろいろな形や種類があります。
その中の一つは、「病気」とも分類されます。
Michel Sardou - La maladie d’amour (Audio Officiel)
この病気は7歳から77歳までの間に発症すると
ミッシェル・サルドゥーは警告しています。
「とうの昔に卒業した」、「自分には関係ない」という方もご注意ください。
※初掲載は1972年「ビッグコミック増刊オリジナル7/20」。
49年間、ほとんど休まずに連載され、その数は、およそ2350回。