5巻を研ぎ澄ませ【第12回】火災調査官
今回紹介する作品はこちらになります。
【火災調査官】 作:鍋島雅治 画:田中つかさ
主人公は火災調査官を勤める紅蓮次郎
火が収まったあとで登場する、火災の原因を調査するお仕事。レスキューなどの花形のような職業ではないが焼け跡の中から真実を見つけ出すなくてはならない職業なのです。
パイプを咥えて一見のほほんとした姿からは想像もつかないほどする井戸い観察眼を持つ蓮次郎
事件性のない火災であっても不可解な被災者の行動に気づき、そのなかにある真実や想いを残されたものに伝えるのも彼の役目なのです。
長い間断絶していた母と子、逃げれたはずの母が自分の命を落としてまで持ち出そうとしていたものはかつての思い出のピアノ。
蓮次郎は真実を見つけることで残された息子をも救うのでした。
別のお話では6年前の火災を妻の過失による事故と判断されたことに納得できない夫の思いを汲み取り、しかしただ気持ちを汲み取るだけではなく、当時の証拠の中から矛盾や疑問をしっかりと科学的に見つけ出して放火と殺人の証拠と犯人を探し出ました。
そしてそれは自分たちの手柄ではなく、最後まで犯人に抵抗して証拠を残した妻と、妻を信じ続けてきた夫のおかげですという言葉とかけて、夫婦の無念を晴らしております。
彼は火をもてあそぶ悪人には容赦をしません。どのような手段を使ってもその罪を暴こうとします。たとえ証拠を捏造してでもです。
ですが、誰でも彼でも罪を暴くことをするわけでもありません。
近所付き合いのストレスから炎の誘惑に取り付かれた1人の女性には
その愚かさを諭し。
罪を犯す前に引き返させてもいます。
火災調査官紅蓮次郎、彼はいまも炎の中から真実を見つけ出していることでしょう。とても良い作品でした。