偉大なる皮肉・千日デパート火災編 | Short+α

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シー・シェパードの親玉の逮捕までは成功した。
これを逮捕状請求元の日本まで連行できれば、様々な問題が一気に解決する気がする。

○昭和47(1972)年の今日、死者118名、負傷者81名を記録するという日本史上最悪のビル火災が発生した。通称「千日デパート火災」である。

 

○この火災事件の経緯を追うと以下の通りとなる。

 

○火災が発生したのは当時大阪市南区難波新町に存在していた千日デパートビル。デパートと名乗ってはいるが百貨店には該当せず、メインテナントであるニチイとその他数多くのテナントが入居する、現在で言うショッピングモールのような建物であった。

 

○火災発生時刻は午後10時36分。この時刻は6階より下のテナントは通常営業を終了していたが、7階に入居しているキャバレーは営業中であり、22時過ぎという時刻ではあるが、その時刻にはキャバレーの客と従業員、そして、デパートの閉店時刻を利用しての改装工事に携わっていた工事関係者がいた。

 

○火災発生場所は3階の衣料売り場。改装工事の関係者のタバコ、もしくは投げ捨てたマッチによるものであるとされている。

 

○火災に気づいたときには既に対処できない規模の火災になってしまっており、身軽で体力もある工事関係者ですら火災に対処するどころか逃げるのに手一杯で、表に出て看板の骨組みにしがみついてようやく脱出する有様であった。

 

○この建物そのものは防火構造になっており、炎に襲われたのは火災発生源の3階と、その上のフロアの4階の2フロアのみ。しかし、煙はどうにもならなかった。

 

○火災現場から噴き上げる煙はダクトを通じてキャバレーに押し寄せた。最初は「火事やないか」と気軽に構えていたキャバレーの客や従業員も、消火器ではどうにもならず、バケツでどうにかしようとしても諦めるしかないという様子を知って慌てだし、一斉に逃げようとした。

 

○その結果が前述の通り118名という死者数である。

 

○着目すべきは、118名の死者の内訳である。墜落死22名、窒息死96名。焼死者数はゼロであった。


○キャバレーの店内に煙が入り込んできたので最初のうちはここで営業を中止し、料金を精算した上で帰ってもらうことを考えたようであるが、前述のダクトはエレベータホールともつながっている。エレベータで1階に降りようとしたら煙が凄まじくてたどり着けない。

 

○非常階段から降りようと考えたものの、非常階段のほうもまた煙に襲われどうにもならない。ここではじめて緊急事態であることを悟ったが、悟ったときにはもう遅い。

 

○煙のせいで息苦しい。せめて新鮮な空気を吸いたい。その思いから窓に多くの人が殺到し、網戸を壊して窓を開ける者が殺到。窓を開けるのではなくガラスを壊してどうにかして息をしようとするも、窓辺にたどり着いてもまともに呼吸できない。

 

○ハシゴ車も詰めかけているが何とかして助け出してもらおうと殺到し、ハシゴ車の先頭が自分の身の乗りだしている窓でないと知ると、煙の中に戻ってハシゴ車の先端が届いている窓に向かおうとした。

 

○7階からの非常脱出袋、脱出袋と言っても実際には袋として機能せず7階から1階まで伝わるロープのようになってしまった非常脱出袋にしがみついて逃れようとした人もいた。また、実際に脱出に成功した人もいたが、多くの人は途中で力尽きて落下していった。

 

○窓までたどり着くことのできなかった人も数多くいた。従業員はともかく客は店の構造を詳しく知らない。そこで、客は従業員の後をついて逃げようとしたが、その従業員ですら自分がどこにいるのかわからない、どこに逃げれば良いかわからない有様であった。

 

○皮肉にも、客が後をついて行かなかったのは、控え室に戻っていった従業員達だけであった。彼らは控え室から消火用具を持って煙の場所に向かっていた。どうにもならないので控え室に戻って煙が落ち着くのを待とうとしたのであるが、これまでの彼らの行動は、避難ではなく消火に当たっている従業員であり、彼らの後に付いていくのは避難にはならないと誰もが考えた。

 

○ちなみに、控え室に逃れた従業員は控え室に窓があったことからハシゴ車で救出されている。

 

○話をキャバレー内の客や従業員の話に戻すと、窓辺にたどり着けなかった者の多くはそうすればいいのかわからないでいた。窓まで行こうとするにも煙に覆われてどっちが壁でどっちが窓かわからない。

 

○ベニヤ板があってその外には窓があると考えた人達はベニヤ板を壊したが、ベニヤ板の外にあったのは窓ではなくレンガの壁であった。後の現場検証で、レンガの壁を壊そうとし、爪を立てていた痕跡も見つかっている。

 

○先に非常脱出袋が脱出袋にならずにロープになってしまったと書いたが、欠陥品だったのか? 結論から言うと欠陥品ではない。ただ、据え付けてから1階に垂れ降ろし、最後に入口を固定して袋の入口にしなければならないのだが、入口にする前に非常脱出袋にしがみついて脱出しようとする人が続出してしまった。

 

○これを地上から見ると、袋にする前にしがみついて降りようとしてくる人がいる、しかも、途中で力尽きて落下する人が続出している。

 

○窓から次々と人が落ちてきて、火災現場に詰めかけた群衆からは「飛び降りるな」「落ちたら死ぬぞ」と叫んだが、避難者のもとにそのような声は届かない。


○通常、このような大災害が起こったときは「この悲劇を教訓とすべく……」という言質が登場するが、そして実際にそのような言論も登場したが、それから1年半後、日本史上二番目の被災者を生むビル火災が発生してしまった。

 

 

 

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