○「1日70個しか作れません」というところに、「いいから1日100個作るんだ」と命令するとどうなるか? たぶん、1回ぐらいはできてしまう。
○しかし、実際にやった方は「今回限りの特例」と思っていても、命令した方は「次もできる前例」と考える。そこで、次からはこうなる。「前回はできたんだから、今回もできるよな」と。
○そこで「できません」と言って仕事を断るとどうなるか? 次の仕事のあてがあるならいいが、そうでない場合は仕事がなくなる。会社として仕事を受けることができなくなるか、会社をクビになるか。
○それよりはマシだと考えて、すでに破綻しているにも関わらず、無茶をし続ける。
○何しろすでに破綻しているのだから、要求通りの100個を作り続けることなんてできない。
○残業して、あるいは休日出勤して、どうにか要求通りの100個を作り上げたところで、何の評価もない。それどころか、時間がかかるとか、品質が悪いとかの難癖をつける。
○実はこれ、徳薙零己の実体験。とっくに限界を超えているのに仕事を次々と増やされ、こなしていることについて評価しないどころか質が悪いと給与を下げた。
○システムエンジニアという仕事の種類はいくつかあり、少なくない数のシステムエンジニアが取引先の会社に常駐してコンピュータシステムを作る仕事をしている。
○その中で仕事をし続けることで、「あのエンジニアのいる会社なのだから」という評価を得て、仕事量や仕事の単価を増やしてもらえることもある。無論、逆もあって、単価を下げられたり仕事を減らされたりすることもある。
○ところが、「この人に頼むと一人で二人分の仕事をしてくれる」からはじまり、「一人で三人分」、「一人で四人分」と増えていくことがある。
○徳薙零己の場合、ピーク時は一人で七人分の仕事をし、かつ、管理職もしているというとんでもない労働状況だった。
○そのときは常に忙しかった。寝る時間もなかったし、休みもなかった。
○それが終わったのは文字通りぶっ倒れたから。
○戻ってきたら、職場が違う会社になってた。比喩的な意味で違う会社になっていたのではなく、会社が職場を売り飛ばしたのである。
○「わが社はこの職場から撤退する」という宣言のあと、職場に残りたい者が会社を辞めて新しい会社を作っていた。
○徳薙零己の選んだのは、職場を出ていくこと。つまり、会社に残ること。
○会社に残ったために職場の人たちと別れたという、何を言っているのかわからないと思うが、そうとしか言い表せない現象を体験した。
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