3月18日に投稿したなう | Short+α

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#140novel ボイジャー2号は間もなく太陽系を脱出し、来年の今頃には地球への連絡もつかない状態になる。それでも電波の送信は続け、2030年まではボイジャー2号の発する電波も取得できる。そこから先はわからない。
3/18 12:12

#140novel やってみますか。物語を。平清盛が終わるまでの45分で。
3/18 20:03

#140novel 1)生まれたとき、自分の前には機械があった。その機械は毎日、同じ時間にその日の体調に合わせた食事を用意してくれただけでなく、掃除も、洗濯も、みんなその機械がやってくれた。機械というかロボットというか、僕にはそれが親であり、大切な友達だった。
3/18 20:05

#140novel 2)それがただの機械でないことを知ったのは大人になってから。子育てをするロボットで、僕はそのロボットに育てられたんだ。いろいろな医者が毎月僕のことを調べていたけど、それは僕が実験台だから。子育てをするロボットが人を育てることが出来るのか。それがテーマだった。
3/18 20:07

#140novel 3)ある日突然、僕はロボットの元から離された。「もう二度と会っちゃいけないよ」大人の人は僕にそう言ったけど、僕にとっては大切な家族だった。だから会えないなんて受け入れられず、僕は制止を振り切ってロボットに近寄った。
3/18 20:09

#140novel 4)ロボットの前に貼られていたのは「放射性管理区域」の紙。黄色いテープが貼られ、僕だけではなく全ての人間は、そのテープの中に入ることが許されなかった。あとで知ったが、僕を育てたロボットは原子炉を積んでいた。
3/18 20:12

#140novel 5)「危険」「危険」「キケン」「きけん」。自分をここまで育ててくれたロボットと僕は、危険だというだけのことで離ればなれになった。普通の親に育てられる子なら味わえる家族団欒を、僕は知らないまま終えてしまった。
3/18 20:14

#140novel 6)ロボットの語りかける「ごはんです」「お勉強です」はもう聞こえない。それどころは触れることも、近づいて見ることも出来ない。親もなく、兄弟もない自分に、声をかける者などいない。毎日々々、放射性管理区域の紙の目の前に来て、厚い壁の向こうにいる育ての親を思う。
3/18 20:16

#140novel 7)たかがロボットを育ての親という自分を周囲の人は不可解に思ったであろう。だが、僕にとってはロボットこそが親で、周囲の者は僕を実験台にする不気味な大人にしか見えなかった。自分はひねくれた人間に育っていったと実感した。
3/18 20:20

#140novel 8)親に会いたいという思いを実現するために、僕は、放射線管理区域の中に進入した。三重の壁を越えて中に入ったとき、ガラスの向こうに親は居た。正確に言えば、育ての親を構成していた部品の塊があった。
3/18 20:21

#140novel 9)原子炉を積んでいる。だから処分しなければならない。ここは処分のための場所であり、思い出を残しておく場所ではない。でも、ガラスの向こうには間違いなく自分の思い出がある。ロボットはもう動かないけど、思い出がある。
3/18 20:23

#140novel 10)「ご飯ですよ」。何度も聞いてきた声が聞こえた気がした。センサが自分に反応して音声ソフトが声を出した。所詮はそれだけのことだけど、僕には久しぶりに聞いた親の声だった。ああ、まだ生きている。鉄くずとなってもまだ生きている。そう実感した。
3/18 20:27

#140novel 11)僕に課せられた実験は失敗だと結論づけられた。全ては、ただそれだけ。 fin
3/18 20:29