この記録は、私の両親が 祖父のノートを活字におこしたものです。
読みにくい箇所があるかもしれません、一部修正をしていますが 基本そのまま記します。
関東大震災の記
~この震災の時、小生 数え年20歳満で19歳である。~
関東大震災の事「大正12年9月1日」
僕の東京の生活は短かった。けれど、その間にあった出来事。
それは或る一つの打撃でもあったろうか。
彼の地に生を享けて長く住んだヒトも、僕のような殆どわずか住まったものも、等しく被った大震火災だった。
あの9月1日に、僕は 朝の暴風雨を冒して、新聞の配達を終え
今日は 諸学校の新学期が開始されるんだから、神保町の英語学校へ行って規則書を貰ってこようと思って
旦那の所へ行ってお金を少し借りようとしたが、旦那は「月の十日でなければダメだ」と言うので、
仕方なく、しばらく休んだ後 常のように昼食を11時頃済まして、
このあと、大阪辺りにいる島袋くんの従弟が東京へ来る というので、島袋くんと二人で貸し間を探すべく
外出したのだった。
この頃は、いいお天気になっていた。
そして、新宿一丁目か二丁目辺りか 何しろ(後になって聞いたんだが)昔、白糸という遊女が居って 鈴木文人という侍が通ったという遊郭の町だ。
僕らはそれまでは、この辺りに遊郭があるとか聞いたことはあったが 実はそんなことも知らずに、
その日も島袋くんと その街へ貸し間を探して入って行った。
電車道より北に入った、静かな綺麗な街だった。
続く