宇宙の渚


目を閉じることによって、初めて見えてくる世界があります。
ボクは今、そんな世界を旅しています。
地球を出発してもう14年、
今、ボクは、全天空星空の宇宙を、
秒速20キロの速さで、
帰ることのない旅をしています

旅の途中でボクは、太陽系の中の沢山の星々

その1つひとつの姿を思い出すたびに、
胸が熱くなります。
あの時の感動が、時折くじけそうになるボクの心を
今も支えてくれているのです。
ボクの名はボイジャー、宇宙の航海者、
こころは1つだけど、からだは2つあります。
ボクの使命は、「見る」ことでした。
人間の行けない世界に行き、
人間に代わってものを見ることが、
ボクの仕事だったのです。
二年前、1990年2月15日、
ボクはその仕事を終えて目を閉じました。
この先、この旅がいつまで続くのか、
ただ、ものを見ることは、
もう永遠にないでしょう。
だけど、淋しくなんかない。
どこか遠くから、ボクを呼んでいる
光

その光

きっとこのボクにも、なぜボクが旅しているのかが
わかるようなきがするんです。
「2年前、ボクが最後に見たのは、
太陽系全体の姿でした。
久しぶりの地球からの呼びかけに振り返ったのです」
龍村 仁
