亡くなった祖父、
たもじいのお通夜、お葬式を行う式場が
実家のすぐ近く、歩いて3分くらいの所にあるので、
式場に朝から風呂に入りに来た。
昨日うちに帰って、風呂に入らないで寝てしまったのだ。
式場は大きくなく、たもじいの式が終わるまで
うちの貸し切りである。
式場の人達は夜は帰ってしまう。
母と叔母が泊まっていて、ホテルみたいだけん!
と言うし、せっかくお金払って借りているので、
家で入らずに式場へ入りに来たのだ。
朝式場へ来たら、叔母が
玄関の自動ドアを開けてくれた。
寝ているじいちゃんに挨拶して線香を上げて、
のどが渇いたので、ドリンクコーナーでお茶をもらう。
緑茶、ほうじ茶、コーヒー、炭酸水に、みそ汁まで飲める
ドリンクサーバーである。
叔母がお茶を紙コップに入れてくれて、飲みながら話してたら、
今朝、足音がしたとよ、と叔母が言う。
じいちゃんと同じ部屋で寝てたら、朝の4時か5時ごろ、
スタスタと部屋の前の廊下を歩く足音が聞こえたのだそうだ。
式場の人がもう来なったっだろかと思ったそうだが、
ちがったらしい。
お姉ちゃんも聞こえたって言ってた、と言う。
僕は、そらじいちゃんだろ、と言って、叔母も、
そうかもね、と言った。
1週間ほど前、たもじいの弟、伍(いつつ)おじちゃんも亡くなったので、
伍おじちゃんかもしれんね、たもじいか伍おじちゃんだろ、
みたいな話をした。
どっかへ行っていた母が式場へ帰って来て、母にも聞いたら
やっぱり聞こえたんだそうだ。
僕は、理由はよく、しっかりと考えたことがないと思うが、こういう時、たもじいか伍おじちゃんが歩いた足音が母とおばに聞こえたのだと思いたい人なので、僕の中では既にたもつ伍説が6割くらいを占めているが、こういう時こそエポケーだ。
お父さんか伍おじちゃんならいいけど、
カギかけてる式場の中に生きてる人間が入って来たという
パターンの方がこわかよ、とおばが言う。
たしかに。
風呂はとってもキレイで、よかった。気持ちのよい風呂であった。
このくらいの距離に銭湯があったら入りに来たいなあと思った朝であった。
