今日は職場である山の中で木を伐倒する仕事であった。


山の中腹辺りに、小さな神社と言うか、

山の神様を祀ったところがある。

社はないが、岩にしめ縄が巻いてあり、

その手前に「山ノ神」と彫ってある石が立ててある。

石の裏側にはたしか「文化十二年…なんとかかんとか」と彫ってあった。文化と言うと西暦で言うと

1800年くらい、今から200年くらい前だ。

さらに石の手前にはブロックを並べた上に

コンクリートの板を置いた台が作ってあり、

その上にお酒や水などが置いてある。

僕の職場のこの山は割と町の中にあり、

地域の人たちや散歩の人たちが

よく登って来て、山の神にお詣りして、

置いて行くのだ。

今朝もワンカップ月桂冠大吟醸が置いてあった。



山の神さまのすぐ前に、枯れ始めている大きな

木がある。ツブラジイの木。

まだ緑色の葉をつけているが、幹にキノコが

生え、太い枝の枯れているのもある。

山の神の近くは人がけっこう通るので

落ち枝、倒木があると危険なので、

それらを避けるために伐るのである。



森の中は公園とかとちがって、

木をバターンと倒すことが出来ないこともある。

伐っても近くの木に引っかかってしまうのだ。

この「かかり木」状態になると片付けるのが

大変なのである。



山の神には小さな鳥居がある。

この木を伐ると鳥居に当たるので、

それをかわす方向へ引っ張りながら伐ることになった。

しかしそうすると、ひっかかりそうな木が2本ある。

伐ってひっかかってから外すとなると大変なので、

こちらの2本を先に伐ることになった。

今日はその2本の伐倒である。


朝から雪が降ってて、寒い。

一昨日はロウバイの花の匂いをかぎながら

「あったけ〜」と思ってたのに。




ここまでは余談である。




伐り倒した木を短く刻む作業をしているとき、

フワッといい匂いが漂って来た。

「カレーだ!!」

と僕は思った。…いや、この山の中にカレーは

ないだろ。

落ち着いてよく匂いをかぐ。

クスノキであった。

伐った木が倒れる時に当たったのか、

今作業中にチェーンソーの刃が当たったかなんかで、

その辺のクスノキの枝か葉っぱから匂いが

漂って来たのだ。

クスノキとシナモンは仲間なので、

匂いも似ている。それでカレーと思ったのだ。


ここまではっきりとカレーとクスノキを

間違えたのは2回目だ。

1回目は8年くらい前、街の中であった。

ホテルキャッスルの裏のオークス通り。

バイトの休憩で、キャッスルから出た時、

サーーッと風が吹いて来て、とってもいい匂いがした。

「カレーだ!!」

と思った。この近くに新しいカレー屋さんが

出来たのかなと思っていたが、

風でオークス通りのクスノキの枝が揺れている

のを見て、

「ん?これはカレーじゃない、クスノキだ!!」

と気づいた。

街の中で、カレーの匂いがしてもおかしくない

場所だったこともあり、その時はクスノキの

匂いだとわかるまでちょっと時間がかかった。

11月だったがお昼の風があったかく感じた。



オークス通り、一昨日撮影。

なんか枝が減った気がする。前はもっと

モッサリしていたような。剪定したのか。



僕は小さいころから自分が、カレーもクスノキも

好きだったなあと考え始めた。

僕は保育園に通っていたのだが、

保育園の園庭にクスノキがあった。

けっこう大きなクスノキで、僕はよくその木に

抱きついていた。

そして、樹皮をちょっと剥いで匂いをかぐのが

好きであった。

カレーも好きだった。

「カレーのおうじさま」というレトルトの

カレーをよく覚えている。

そして、うちで鍋で作ってくれるカレーと

「カレーのおうじさま」は味がちがうなあ

と思っていた。






僕は自分がクスノキが好きなのは

大きくなるからだと思っていたが、

匂いがいいからだったのかもしれない。


クスノキと匂いが似てるから

カレーが好きなのか。

カレーの匂いが好きだから

似た匂いのクスノキが好きになったのだろうか。

カレーに入ってるのはシナモンだけではないが。


自分のやっていることとか好きなこととかには、

意外な理由が潜んでいるのかもしれない、と思った。