国境も縄張りもなく鰯雲

「雲の峰」２０２４年１２月号青葉集掲載。

休日、よく行く近所の散歩道を歩く。見上げると、青空に鰯雲。秋らしい気候になってきた。ふと思い浮かんだのが、漫画「北斗の拳」に登場する山のフドウの台詞。「雲は好きな所へ流れていくだけだよ」と優しく語るシーン。確かに雲は誰にも語らず現れ、風に流されて静かにその場を去る。人間が便宜上引いた国境や縄張りなどには干渉されず、自由に流れていく。そんな雲の自由さを羨み詠んだ句。

こういう句は、ともすれば特定の思想信条に加担するような言い方だと批判される恐れもある。なので、あまり踏み込んだ表現は使えない。そういう詩歌もあるが、自分のポリシーが固まっていて、決然とした態度で表現するならそれでいい。しかし、自分自身にその覚悟が出来ていなければ、自分が苦しむことになる。私にはその覚悟がないし、自分では偏った思想はないと思っている。ただ「雲は自由だ」という事を言いたかっただけの話なのだが、それでも「国境」「縄張り」という言葉を持ち出したのは、誤りだったかもしれない。ただでさえ、言葉狩りが横行しているネット社会。発言や表現には気を付けなければならない。

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