ポリスマンは基本、相棒と共に行動する。それは不測の事態に対処するためだ。

だが2人がまったく同じ動きをするとは限らない。敵を撹乱させる目的でわざと違う動きをすることはある。

もちろん偶然ワンマンプレイになった場合も、結果次第でそれは昇進のよい口実になる。


相棒との気の合う合わないはもちろんある。他人だから、仕事と割り切ってチームを組んでいる。


宇宙開発プロジェクトの捜査で月まで行く仕事が入った。3チームあるうちまだ出かけていないのが私たちのチームだ。

宇宙では地上のような2名相棒制は採られていない。情報交信役として相棒は地上に残る。

私が月に飛び、相棒が地上に残ることになった。


私と相棒との仕事上の連携プレイには定評があるが、お互いまるで気が合わない。仕事以外で何かしらの交流をすることなどまるでない。

相棒は外交的で、私は内向的、その違いが仕事上の良い連携に繋がっている。


今回珍しく相棒が「お前が宇宙に行くのを祝って壮行会(食事)をしよう」というのを、断った。(内心嫌ではなかったが)「秘密裏に行う捜査を喧伝してどうする」


宇宙に飛び出すのが内向的な私のほうで、記録をとるのが外交的な相棒とはチグハグな感じもするが、きっとそれもうまく仕組まれた人事の技であろう。何も事件が起こらなければであるが


今回の捜査では一悶着ありそうな気配がある。


宇宙船には壮大な闇の臭いが立ち込めている。

こう言っちゃなんだが、内容の希薄な、綺麗事ばかりを歌うプロジェクトに、かくも多額の資金が集まるはずがないではないか。


だが、まだ相棒には何も伝えていない。(時期早々である)

交信による公式記録には、とるに足らない些細な案件が一つ一つ積み上げられることになるだろう。

しかし、意味のない(と思われた)退屈な記述が後々、思いもよらぬ凶悪犯罪の動かしがたい客観証拠になるだろう。

しかし、内実は帰還の後に、時流を見て発表しなければならないという危険を孕んでいる。


一捜査員には重過ぎる、人類史上、あるいは人類による宇宙開発史上の重大スクープである。