デビルズ・リジェクト
『デビルズ・リジェクト』 (‘05/アメリカ)
監督:ロブ・ゾンビ
なにを勘違いしたのか続編を撮っちゃうからすごいです、ロブ・ゾンビ。しかも結果は大成功。もうすでにホラー界の巨匠たる貫禄がある、と勝手に思ってるが。
1作目を凌ぐ続編というのは、特にホラームービーに関しては極端に少ない。どのジャンルでもそうだが、1作目のインパクトを超えるのは並大抵のものではないが、このロブ・ゾンビはなんなくそれをクリアしたようだ。成功した要因は、あえて前作と180度変えた映像スタイルと、ある意味新鮮な主要キャラクターを追い詰める「天敵」を作品のかなりの割合でフューチャーしたことだろうか。トビー・フーパーが『悪魔のいけにえ2』でまったく超えられなかった自分自身が築いた1作目の高い壁を、PVで培った持ち前のビジュアルセンスとパクリ精神、いや過去の作品へのリスペクト精神で軽々飛び越えた。
前作『マーダー・ライドショー』のあの『悪魔のいけにえ』的なキチガイ一家による数々の悪行がいい加減明るみになり、地元警察にその家を追われ、今度はそのおもちゃ箱のような家を飛び出して、大好きな殺人を繰り返しながら逃げ続けるロードムービー仕立てになってる。しかも、テーマは家族愛か?ともとれるストーリーに、後半は男なら思わずむせび泣きしてしまうこと必至だ。
この『デビルズ・リジェクト』、前作とはまったくテンションも撮り方も音楽も違う。踏襲しているのは主要キャラの3人だけ。前作が、インダストリアルと極彩色を取り入れた派手な画だったのに対し、今回はカントリーウエスタン調のBGMが流れる中、砂吹き荒れる埃っぽい70年代風アメリカン・ニュー・シネマの作風だ。ただ、残虐度は120%増し。ホラー特有の耳障りなBGMではなく、逆に心地いい曲をバックに繰り広げられるゴアなシーンの数々。お子様映画の金字塔、『アニー』をバックにローストチキンで年寄りを殴り殺す『シリアル・ママ』のような悪趣味なギャップが生むブラックユーモアとでも言うべきだろうか。すばらしくセンスが溢れております。
前作が、キチガイ一家主観なのに対して、今作は一家に負けずに壊れまくるキャラクターが登場する。この一家への復讐のために、とても法の番人とは思えないキチガイっぷりで追い詰める保安官ワイデルだ。『悪魔のいけにえ2』のデニス・ホッパーもびっくりの切れっぷりで一家を追い詰めていく。それは、執拗に追われる羽目になる一家がだんだん気の毒になるほどなわけで、どういうわけか後半は家族愛が全編に漂う、なんだか心温まる妙な感覚になるから不思議だ。
今作は、『マーダー・ライド・ショー』のような中途半端な謎解きのようなものはなく、ストーリーはとてもシンプル。追うものと追われるもの。そのどちらもがお近づきにはなりたくない連中なんだが、前作を見てる分、だんだん気持ちが一家3人に傾いてしまう自分にびっくりする。
そう、この作品は不器用で社会から隔絶された家族が、ただ自由を求めひたすら前に進み続ける、感動アウトローロードムービーと呼べなくもないけど、違うか。
キャラクターとしては、シド・ヘイグ演じるイカレピエロの「キャプテン・スポールティング」が注目されがちだが、それ以外に注目なのはケン・フォリー。『ゾンビ』から何十年も経ったわけだけど、『スパイダーマン』でブルース・キャンベルを発見したときに匹敵するほど興奮。こういうマニアックなキャスティングは大好きだ。