ビジターQ
『ビジターQ』 (‘00/日本)
監督: 三池崇史
久々に、肩の力を抜いて見れる秀作をご紹介。この作品『ビジターQ』のテーマは早漏と母乳と家族愛だ、と言ってみるがたぶん違う。三池崇史の作品はメジャーものしか観たことがなかったのだが、k53さんが運営されているkrock@555 に魅力的に紹介されていたのでハンカチ片手に鑑賞してみた。
よくわからないタイトルのこの『ビジターQ』。この作品は、家庭内問題のフルコースのような家族が、突然舞い降りた天使のような来訪者(これがビジターQなの?)の影響によっていかにしてお互いを理解し合い、新たな一歩を踏み出すかを描いた感動の家族再生物語。とクソ真面目に言ってみるが、そんな生易しいものでは断じてない。
「パパとしたことある?」といきなりお茶の間不向きなテロップが入り、その後画面に映し出されるのは、ラブホでの父親と娘のからみ。「すんげー気持ちいな すごすぎだよ!」と感動し、しまいには娘に中出ししていいか聞く親父。どうしようもない。しかも娘に早漏と罵られながらも「いくら?」と聞く親父。早漏は10万円だそうです。高いので払えない親父。「残りは、家に帰ってママに預けておくから・・・」やはりどうしようもない。笑っていいのか迷うことはない。こういう映画を見て、大笑いするのが正しい大人というものだ。たぶん。
この親父を筆頭に家族全員がとにかくどうしようもない。親父は、取材中に若者にアナルを犯され、すっかり落ちぶれた元キャスター。再起を狙ってハンディカメラ片手に特ダネを追いかける毎日を送ってる。息子は学校ではトップクラスのいじめられっこで、家に帰れば布団たたき片手に母親をフルスイングで散々殴り倒しストレス解消。で、母親はというと、アザだらけの体で足を引きずりながら、これまた熟女援助交際して、体で稼いだ金で、シャブやって現実逃避してるような女。娘ももちろんで、ろくに家に帰らず援助交際でテクを磨く日々をすごしている。
ネタを追いかける親父はある日気づく。なんだ、一番身近においしいネタあんじゃん、と。そんなわけで、前述のとおり援助交際してる娘に突撃レポート、というか単にやっちゃう。外でいじめられてる息子を見つけるや、カメラを回し「いい、いいね。」と特ダネゲットに喜ぶ。このどうしようもない家族に突如として(というか、勝手に)転がり込んでくる男がたぶんビジターQなんだろうけど、よくわからん。まぁ、たぶんキーパーソン。
特に見所はなんといっても何かの主演男優賞をあげてもいいくらいの気持ちのいいほどのぶっ飛びぶりを見せてくれる親父役の遠藤憲一。その、役を選り好みしないスタンスと、何をしでかすか全く予測不能な狂気じみた演技が光る、怒らせないほうがよさそうなタイプのヤツ。そして、同じくなんかの助演女優賞級の授乳っプリを見せた内田春菊も圧倒的だ。何が圧倒的かというと、演技云々ではなく、単にその母乳にだ。悶えながら部屋一面母乳まみれにする熟しきった女。それはもう出るわでるわ。このシーンはこの映画の重要な見所のひとつ。しかし予備知識はあったけどやっぱりこれはみててキツかった。リアルすぎて笑っていいものかどうかさすがに悩む。
とにかくこの『ビジターQ』、街中で思わず避けて通りたい人物が、こちらのことなどお構いなしに近寄ってくるような、見ちゃいけないものを見てしまったような感覚の映画だ。「おれ、この映画好きなんだ」などと職場や学校では口が裂けてもいえない類だが、自分は好きです。ええ。
そして極めつけの感動のラストは死姦ですわ。「娘に」早漏と罵られ、自信がなくなってたのに、死姦のお陰で早漏を克服。「まだまだ!おれ、イケんじゃん!!」と大喜びで失いかけた男の自信を取り戻す。サイコーです。母親も胸を揉みしだかれ、ありえないほどの母乳を噴射し、なぜか女に目覚めてしまう。もううつむきビクビクしていた今までの彼女じゃない。生まれ変わったんだ。よかったねぇ。子供達もなぜか目覚め、新たに出発しようとする。
なんやかんやあって、よくわからないうちにどうやら家族の問題は丸く収まったようだ。めでたしめでたし。
前張りも辞さないエンケンのど根性と妥協を許さない三池の引き出しの多さを感じさせる秀作だ。『着信アリ』を観て三池に興味を持ち出した気になるあの子を誘って一緒にビデオ鑑賞してもいいけど、その結果がどうであれ自己責任です。