日本の有名なキャラクターや商品などの名称(くまモンなども話題になりましたね…)が、中国で無関係の第三者から勝手に商標登録されるというケースは後を絶ちませんが、今日ご紹介する判例も、まったく無関係の中国業者から、ユニクロさんが商標権侵害で訴えられた事案です。

 

ユニクロさんは、ウルトラライトダウンシリーズに、「UL」の標章を使っていますが(下記リンク参照)、

https://www.uniqlo.com/jp/store/feature/uq/ultralightdown/men/

ユニクロさんを訴えた広州の会社(2社が共同原告となっています)は、2012年3月にの商標を中国で出願していて、この商標をユニクロさんが使用したとして、ユニクロさんや、その中国での販売店などに対し、合計42の商標権侵害訴訟を提起して、侵害行為の停止と損害賠償などを請求していました。

 

このうち、上海での訴訟では、一審、二審とも、損害賠償などは認めないながらも、ユニクロさんに対し、商標の使用の停止を命じていましたが、ユニクロさんは最高人民法院に再審を申請(※中国では、二審で判決が確定)し、そこで原判決が取り消され、商標の使用の停止を含めた、原告の請求のすべてが棄却されたのです。

 

再審の係属中、原告の商標が無効とされたことも大きいですが、最高人民法院は、原告らがユニクロさんへの高額譲渡をもくろんで不正当な方式で商標権を取得したことや、譲渡が不成立となった後に、ユニクロさんらに対し、実質的に同一事実によりユニクロさんらとその販売店を共同被告として訴えることで、全国で大量訴訟を形成したことなどの事実を指摘した上で、原告らの主観的悪意は明白であり、誠実信用原則(中国商標法7条)に違反する、と述べています。

 

このような権利濫用の理論によって、商標権侵害を不成立とした判例は過去にもあり、この事案では、冒認出願より相当以前から被告が商標を使用し、かつ、冒認出願の時点で既に高い知名度を確定していたことが決め手でしたが、このような先使用、知名性の先取得といった事情は、必ずしも立証が容易ではないので、本件のように、高額譲渡申出等の事実等によって、権利の濫用が認められたことは、冒認商標対策として、意義のあることと評価してよいと思います。

 

ともあれ、ユニクロさんは上海でも大人気!今年も問題なく「UL」標章を使用することができて何よりです。