NHK総合チャンネルで放送されている同名の番組の活字版、みたいなものだろうか。当然ながらテレビとほぼ同じ内容ながら、文字で読むとまた違った印象があるのが面白いところだ。この第13巻に収録されているのは、企業再生を数多く手がける弁護士の村松謙一氏、漫画家の浦沢直樹氏(YAWARA!、20世紀少年…説明不要ですね)、そして表紙の記述によるとコンピューター研究者、MIT教授の石井裕氏の3人だ。

全員がその世界のトップランナーではあるが、いわゆる「成功者」という見え方とはちょっと違う。その真摯さ、愚直さ、熱さ、そしてたくましさに触れるとそんな概念がずいぶん薄っぺらなものに見えてくる。茂木健一郎の「脳科学の世界では…」というお馴染みコメントはまあご愛嬌だが、いずれの人物も自らの知力をとことん使い切る達人といえるだろう。

その中でも、石井氏の発言には何かシンパシーを感じる。面白がるもの、興味を持つもののポイントが似ているというか。例えば、

『(学生のアイデアにWHY?と問い続けることについて)なぜか、に答えられなかったら、浅いやっつけ仕事になってしまう危険がある。なぜかという理由は哲学につながる。最終的に哲学を語る答が出てこないとダメですね』
『(学生を採用する基準はクリエイティビティと答えて)クリエイティビティとは、まずコンセプトとかビジョンといった抽象的なものを自分で生み出せること。そしてもう一つは、それを形にする能力があることですね』
『(MITに入るなり「いままでの研究成果を捨て、新しいものに挑め」といった所長の言葉)人生は短い。大きなリスクをとりながら、思いきって新しいことを始められるほどぜいたくなことはない。その挑戦を楽しみなさい」

こんな言葉がしっくり響いてきた。教授に共感。また、インタビューを終えての茂木氏の発言も印象的だ。

『日本では、競争の意味を「みなが同じルールで同じ方向に走ること」ととらえがちだ。しかし、石井さんの話をうかがっていると、「みながやらないもの、独創性のあるものを手がけること」が本当の競争でないかと思えてくる」

そういった意義深いやりとりに感銘を受けたのはもちろんだが、俺はなんかこの石井という人が好きだ。2歳の娘や宮沢賢治の詩について語る以外は徹底的に論理的、求道的なのに、人としての体温を感じる。ありえないくらい勝手だけど、良きライバルと思わせていただきますです、ハイ。