トランスパレット
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二人存在(い)てはいけないということ

僕は欲しいものを手に入れた。

そして、それを手に入れる為に同等の代価を払った。

いや、払わせた。


僕によく似ていたという、一人の青年に。


アルフォンス・ハイデリヒ。

貴方は一体・・・一体どういう気持ちで ――――


鈍色の刃が擦れる音。

落ちていく金色の髪。

次第に彼に似ていく 自分の顔。


一つ目の誓いと覚悟を落として、

二つ目の誓いと覚悟と罪が生まれた。

届かない背中

この二つの目に 真実は映らない。
映るのは目の前の事実だけ、
見えるのは目の前の存在だけ。


この二つの目に貴方は映らない。
見えるのは貴方以外の存在だけ、
映るのは貴方がいないという事実だけ。


あの背中にはもう届かないという、事実だけ。



去年の11月以前に書いていたもの。

原作に合う内容になってしまったので短いまま公開。

免疫

初めて練成を見たとき、私は酷く泣き出してしまった。
初めて見たものが怖かったのだと思う。


だけど、今の私はあの頃よりたくさんのものを見てきたし、経験もした。
家に訪れる人の多くは腕か足を失っていたし、

親の死も直ぐにではないけど受け入れた。
随分とたくさんのものに対して免疫ができたような気がしていた。
だけど、そうではなかったのかもしれない。


目の前にいるのは幼馴染の家で見たことのある鎧。
その鎧は動いて、幼馴染の声をしていた。
悪い冗談だと思った。
叫ぶ鎧の腕の中で、もう一人の幼馴染が、手と足を失っていた。
他人の空似だと思いたかった。
だけど、事実を否定するには肯定できる材料が多すぎた。
流れる血は冷たくなり始めていた。


たくさんのものを見た。
たくさんのことを受け入れた。
たくさんのことに慣れて免疫が出来た。


だけど、涙が止まらなかった。

からっぽ

暗いソコに声が響いて、
意識を動かしたら光と兄の姿が映った。
そして、生まれ育った家には血の匂いだけが漂っていた。


悪夢と呼ぶには十分な状況だった。


夢か現実かも分からないまま、とっさに体は動いた。
ガシャンと音がした。


動かした身体は自分のものではなかった。
けれど、その瞬間から自分のものだった。
叫んだ声は確かに自分のものだったけれど、
遠くで響く他人の声のようにも聞こえた。


目の前の光景、全身で感じるもの、最後の記憶、
そこから考えられるのは信じたくない結論だけだった。
認めたくなかった、否定しようとした。
だけど、兄の声に全て否定できなくなった。


泣き叫びたかった。
けれど、そんなことしてるわけにはいかなかった。
導き出された結論が正しくても間違ってても、
兄の体から流れて止まらない血は本物で、僕は兄までも失うわけにはいかなった。


だから僕は、兄を抱えて只管走った。
見慣れたはずの道はよく似た違う道で、
降る雨に冷たさを感じることもなく、
流れる血液に温度を感じることもなかった。
ただ、一歩踏み出すたびにギシギシと金属の擦れ合う音が聞こえるだけだった。


自分のものであって、自分のものでない違和感に、吐き気を感じた。
だけど、感じただけで吐き出すものがあるはずもなかった。


僕の身体はからっぽだった。

【サイトからお越しの方へ】

書いてもサイトにアップするまではなかなか出来ないので

とりあえず、こっちに書くことにしました。

余裕が出来次第サイトに順次アップさせていきます。