【夏の終わりに君が死ねば完璧だったから】愛の値札 | ラーメン食べたい透明人間

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とらドラを愛してやまない物語中毒者。気が向いた時に更新します。

 自分の愛の大きさを測れずに悩んだことがある。感情のような無形の概念は、その存在を認識した時点で向き合い方を否応なく迫られる。それは他人と比べることが出来ないので、自分の中でどれだけ大きく重いものか見つめることで感情を整理してきた。

 

 でももし、その愛に形や大きさがついてしまった時、あなたはどうするのか。

 

 

 

 この物語は片田舎に住む一人の少年が、致死の病に罹った少女に恋をする。そしてその少女には死後三億円の値がついていた。ただ一緒にいるだけで幸せだった少年は、死の対価を求める周囲との違いはどこかと懊悩する。

 

 

 

 無償の愛って綺麗な言葉だけれど、それは形にならないから美徳になり得るのであって、価値が付いてしまうと、それと愛を比較せざると得なくなる。遺産目当てや玉の輿のようなお金以外にも、ロミオとジュリエットのような身分の差で生まれる貴賤結婚、政略結婚等……他人の色眼鏡で、本来は純粋な愛だったとしても、歪んでしまう愛はこの世には存在する。だからこそ、私は愛する理由を問い続ける意義を大切にしている。

 

 理由から目をそらさず、自分だけが納得出来る答えでも良い。それを探そうとすること自体に意味がある。

 

 だからこの少年も”正解”を探し続ける。それは周囲の人間からしたら間違っているかもしれない。私達から見たら正しくない選択かもしれない。けれどそれを笑うことが出来るのは、正解を探し続けた者だけだ。

 

 例え永遠に見つからない答えだったとしても、忘れなければ、その輝きは失われず心の裡にいつまでも残り続ける。だから私は、愛の理由を探し続ける。

 

 自分の愛を見失った時、この作品で描かれたものが一筋の光明になるだろう。