皆さんこんばんは。先日4度目のさよ朝を見終えました。2回目の後に資料集やら画集やらを買い揃え、全て読破してから鑑賞したおかげで、細かい部分にも気を使いながら観てました。まぁそれでも途中でストーリーに集中しすぎて忘れるのですが。
今回はイオルフの民を中心に、細かい疑問と資料集にだけ出た設定を考察していこうと思います。
ラシーヌとバロウ
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ラシーヌはマキアと一緒に生活していた長老。そしてバロウはマキアがエリアルを拾ったテントにいた混血のイオルフ。この二人は異母兄弟という設定だそうです。
ラシーヌはイオルフの純血、バロウはイオルフの父と人間の母親のハーフということになります。ラシーヌはイオルフと人間が結ばれて生まれた悲しみを見てしまったので、人間を愛してはいけないとマキアに忠告したのですね。これは、マキアがレイリア奪還に失敗した時に、隠れたテントでバロウがこのことを示唆するようなことを言っていました。
レイリア
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レイリアはイオルフで一番の美少女でした。なので、ヘイゼル王子の妃としてあてがわれたのですね。
そして妃となった後、レイリア達が迎えに来るが、身重となった今、仲間の元へ帰れないという。けれど仲間が生きていれば、遠く離れていても平気だった。自分の胎(はら)の子を人質にし、マキア達を逃した。
しかし、メドメルを産むとすぐに二人は引き離され、自分の目の前で仲間が殺されてしまった。レイリアは一人になってしまった。
一度は人質に利用したが、今まで仲間に向けていた感情をメドメルに注ぐことになる。このことから、レイリアは一人になることを何よりも恐れていたことがわかる。この時にマキアを求めようとするが、マキアには愛する人がいた。レイリアは自分に向けられる感情に飢えていたのではないか?マキアが助けに来てもついていこうとしなかったのは、クリムに愛されなくなることを恐れていたように感じる。
そして戦争の最中にクリムが迎えに来ても、その情はメドメルに移っていた。時を止めようとするクリムと、時を進むものを愛したレイリアとの間には、埋めることの出来ない溝が出来ていた。
程なくしてメザーテ城が陥落し、塔の屋上に上がる。この時の衣装は処刑前をイメージして作られているらしく、古の力で権威を示していたメザーテを堕としたシンボルとして、レイリアを処刑するというのは容易く想像できる。レイリアは死に場所を探してここに来たのだと推測する。
屋上には自分と(見た目が)同い年くらいまで成長したメドメルがいた。イオルフと人間、同じ時間を生きることが出来ないことを、初めて目の当たりにした。
「私はじゃじゃ馬で、跳ねっ返りで、男勝り。そして自由なの」
イオルフの里で、飛べなかったマキアに弱虫と言った。しかし人間の世界に連れてこられ、レイリアは飛ぶことができていなかった。今まで見ていた世界は、とてもちっぽけなものだった。イオルフを出て様々な感情を目の当たりにし、ヘイゼルに見捨てられもした。けれど変わりゆく世界の中で、愛だけは変わらず自分の中にあり続けた。けれど,
メドメルは時を進んで生きていく。だから共に歩けない母親から解き放つために、レイリアは飛んだのだ。
この時マキアの声が聞こえたのかどうかという疑問を見ましたが、私は聞こえてないと思います。理由はレナトに飛び移った後に、マキアがいることに驚いたから。もしくは聞こえていたけれど、本当にマキアがいるとは思ってなかったのでしょう。どちらにせよ、助かる算段があったから飛んだというわけではないと思います。
最初は自殺するために塔へ登りましたが、メドメルと会った後は死ぬつもりで飛んだわけではないのではと考えてます(どう見たって周りからしたら自殺ですが)。レイリアはイオルフの里、そしてメザーテ城の中に囚われ続けていました。しかしこの時、初めて外へ飛ぶことが出来たのです。翼を持たなくとも、誰かを愛することを知ることで新しい世界へ踏み出すことが出来たのだ。
イオルフの幸せ
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ではレイリアは子供を育てることを放棄したのでは?とか、マキアはこれから育つ孫や家族に対して何もしていないのでは?などという疑問をよく聞きます。
ならイオルフはどうすれば幸せにまれるのか、その視点からこの疑問に答えようと思います。
まず理想としては、人間と共存し愛した人たちとずっと一緒に暮らすこと。しかしまだ世界はそれを認めていません。エリアルを育てるために仕事を探し、各地を転々としなければならなかったマキア。物語が諸手を挙げて許容される世界ではない。マキアたちがいることで、同じ辛さを愛する人達に背負わせたくはなかった。
ならばどうするか。マキアとレイリアは長い間、愛する人と離れて暮らしていました。けれど、どれだけ会えない時間が続いても、どれだけ離れていても、愛する人を思えば自分を取り戻せたのです。だから一緒にはならずに、離れて暮らすことを選んだのです。お互いが住む世界が変わったとしても、その人を忘れなければ、その愛は永遠に続く。
レイリアはメドメルの元を去る時、私のことは忘れてと言います。これは、マキアがエリアルを育ててる時にかけた苦労と同じ辛さを味わせないよう、メドメルを思った台詞だと思います。それでも結局、レイリアはこの世界を忘れる事ができないと言い、メドメルもレイリアを綺麗だと言った。この二人もまた、愛で永遠に繋がっていくのだろう。
またマキアも、エリアルが今際の際に訪れたように、いつでも手助けが出来るような状態だったのだと思います。ただエリアル達は、マキアの手を借りずに生きてこれたのだと想像できます。
物語は世界にとって必ずしも必要なものだとは限らない。不要な人からすれば、忌避の対象になるかもしれません。しかしそれでも、エリアルのように物語を必要とする人間はいます。私も物語にいろいろなものを教えてもらいました。
だからこそ、物語が身近にある私たちが、物語にどう接するべきか、世間に対しどう扱うのかを考えなければいけません。
依存するわけでもなく、信仰するのでもなく、隣にいても非難されない世界を私たちは目指すべきです。
ラストのカットで、イオルフの里は人間と共に暮らし、助け合いながら生きていたように思います。マキアはエリアルと離れたあと、この世界を作るために、別れる寂しさより出会う幸せを掴み、そして世界中の人間とイオルフが互いを理解し生きていく、そんな世界を目指したのではないか。我々の世界もマキアが目指した世界が、いつか実現して欲しい。そう願います。