『いたいのいたいの、とんでいけ』(三秋縋)
いたいのいたいの、とんでゆけ (メディアワークス文庫)Amazon「これが僕の人生なのだ。何一つ求めず、その魂を一度も燃やすことなく燻らせ、朽ち果てていくだけの人生。しかし、それを悲劇と呼ぶことは、今のところまだ許されていない。」5年前の文通相手への再会を願うも叶わず、自棄になって飲酒運転をしていた湯上は、不注意から女子高生を轢き殺してしまう。しかし次の瞬間、それは『なかったこと』になっていて‥‥。赤字で引用した言葉が刺さりました。この主人公、あるいはヒロインほど絶望的な環境は極端ですが、しかし生涯の中で自分の魂を燃やすことのできない人、たくさんいると思う。そんな中で、この本の主人公は、ヒロインは、確かに魂が燃えるようなものに出会えたわけなのだが‥‥‥正直、私はこの本、『3日間の幸福』ほどには好きになれなかった。軽くネタバレするが、この本には暴力、殺人描写が多い。しかもヒロインは頻繁に理不尽な暴力に襲われる。ここまで落としておいて救いがあるならまだしも、最後は‥‥‥だし。これだけ不幸描写がてんこ盛りすぎると、もはや全く共感できず置いてけぼりにされてしまった。若い読者はこういうのが好きなのかなあ‥‥‥。とはいえ、「なかったこと」にする能力を活かしたシナリオ自体は面白かった。特に終盤のどんでん返しは見事に騙されました。「え? どういうこと?」と混乱しながらも読み進めていって、「ああ、そういうことか」と納得。こういう設定を上手く使うテクニックは流石の一言。しかし願わくば、『3日間〜』くらいには救いのあるラストが見たかった。愛はあるかもしれないが、決してハッピーエンドではないよな、この話。