今年は子育ても一時期よりは落ち着き、本をたくさん読めた年でした。

当たり作品も多く、絞りこむのが難しかったです。

(同作者1作品にどうにか絞りました)

 

順不同。私が今年読んだ作品が対象のため、古い本も混じっています。

 

①『ここはすべての夜明けまえ』(間宮改衣)


「ゆう合手術」を受け、不老の体を手に入れた少女の回顧録。

 

基本的にSFは苦手なのです。

専門用語や難しい言葉が多いのに加えて、キャラクターが設定ありき、物語に操られていて感情移入できないことがしばしばあるため、好みに合う作品にあまり出会えません。

が、この作品はSF設定と物語が上手く嚙み合っていて、一人称の文章が読みやすいのもあってすらすら読めました。

(ひらがな主体の文章が続くので別の意味で読みづらいですが)

 

主人公の兄、1番目の姉、2番目の姉の最期が印象的。

彼ら3人は悪人ではないのですが、人並みにずるくて自己中心的。

そんな彼らと、人間らしさを失ってしまった主人公との距離感が優しくもあり、悲しかった。

今まで読んだSF作品の中で文句なしの一番です。

 

②『真贋』(深水黎一郎)


とあるお屋敷に遺された絵画のコレクション。が、遺産を引き継いだ息子はそれがすべて贋作だと主張する。

 

絵画がテーマの小説というのも、どうも敬遠しがち。それは私に絵画の知識が乏しく置いてけぼりになってしまうからですが。

ご、本作は『贋作』をテーマに美術史の知識をわかりやすく説く一方、ミステリーとしてのトリックや動機も優れていて、両面から楽しむことができました。

読了後にひたすら、作中で触れられた絵画の画像を検索するのが楽しかった。

意味深に顔見せされただけのキャラもいるし、女刑事二人のキャラも楽しいので、シリーズ化してほしいですね。美術犯罪課シリーズ。

 

③『少女マクベス』(降田天)


演劇の名門である女子高で、公演の途中に死んだ天才演出家。その死の真実を追うミステリー。

 

足を引っ張りあうドロドロの女子高物も好きなのですが、本作は人間関係自体は比較的健全。

代わりに、演出や演技、美しさやカリスマ性、そうした才能を持つ生徒たちの内面が深堀りされています。

黒幕は読み進めていくと消去法でわかってしまうのですが、犯人捜しよりも、それが明らかになってから語られる動機や経緯にぞくっとしました。

 

④『黒猫館の殺人』(綾辻行人)


かつて『黒猫館』で起きた殺人事件。未解決のその事件の蓋を開くと、思いもよらぬ真相が。

 

これと『迷路館の殺人』を今年読みました。『迷路館』は見取り図がバカバカしすぎて大好き(誉め言葉)なのですが、ミステリーとしての完成度がこちらが上でした。

真相の半分はわりとあからさまなんですよ。しかしそれで油断していると、思いもよらぬところから一撃を食らう。

バカミスと切り捨てられかねないところを、伏線の嵐と世界観でごり押ししてくる。そんな綾辻行人が私は好きです。

 

⑤『シンデレラ城の殺人』(紺野天龍)


被害者は王子、容疑者はシンデレラ。魔法とお伽話の世界を舞台にしたミステリー。

 

作品自体は以前に読んでいたのですが、文庫化&遠田志帆さんの美麗な表紙が嬉しすぎたのでピックアップ。

紺野さんの作品はたくさん読んでいますが、軽妙な台詞の応酬&本格派な特殊設定ミステリが楽しめるこの作品が一番好きです。

「え?そこ?」てなるオチが最高。


⑥『爆弾』(呉勝浩)


警察にて取り調べを受ける謎の男《スズキタゴサク》と、警視庁との心理戦。果たして起爆を止めることはできるのか。


実写映画化して欲しい作品一位。

圧倒的なのはスズキタゴサクのキャラクター。警察も読者も、気づいたら彼の言葉に翻弄されている。

厚い本なのに、先が気になって最初から最後まで一気読みしてしまいました。

続編も面白かったです。ここまで来たら行けるところまで突っ走ってほしいですね。


⑦『バスタブで暮らす』(四季大雅)



会社を辞め、実家のバスタブで暮らす生活を始めた主人公・くじらと、彼女の家族の物語。


四季大雅さんは『私はあなたの涙になりたい』もものすごく良くて、両方ベストに入れたかったのですが泣く泣くカットしました。

『ラノベレーベルで発表されたのがもったいない』と、ある書店のPOPに書いてあったのですが、本当にその通り。

母も兄も父も、みんな愛せるキャラクターなのです。大好き。


⑧『地雷グリコ』(青崎有吾)


頭脳ゲームが支配する高校で行われる数々のゲーム。


読んだときはそれほど話題にはなっていなかったのですが、その後嵐のように賞を総ナメ。さもありなん。だってめちゃくちゃ面白いですもん。

『漫画っぽい雰囲気の作品だな』と思っていたらコミカライズ開始。しかも作画は『めだかボックス』の暁月あきら先生。私特すぎる。

タイトルからデスゲームものと勘違いされそうですが人は死なない青春もの。それがまた良い。


⑨『VR浮遊館の謎』(早坂吝)


あらゆるものが浮遊する館で起こる殺人事件。ただのゲームだと思っていたが……。


早坂吝さんはどの作品も面白いですが、この探偵AIシリーズは特にとっつきやすいですね。

この作品を読む前にVR世界を舞台にしたミステリをいくつか読んでいたのですが、それらとはまた違った攻め方で面白い。

早坂さんの伏線の張り方が好きです。読んでいて引っかかる箇所に気持ちよく解を与えてくれる。


⑩『禁忌の子』(山口未桜)


救急医の元に運ばれたのは、自らにそっくりな顔をした水死体。そのうらにはとある禁忌の存在が……。


12月ギリギリに読んだコチラがランクイン。

中盤まではいかにもな医療ミステリだな、という印象だったのですが、終盤に明らかになる真相が衝撃的。

犯人については当たりがつくといえばつくけれど、それに付随する真実を見抜くのは困難。

最後の一文の余韻が好きです。