マンデル・フレミング効果の実証的根拠 | scientiespotenti

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世界は危機を克服する: ケインズ主義2.0/東洋経済新報社
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45度線モデルでは、政府の拡張的財政政策はその乗数倍だけGDPを拡大させることが示されています。その乗数とは、人々の所得の増加分のうちの消費の割合である限界消費性向から


1/(1-限界消費性向)


という式から求められます。人々が増えた所得の一部を消費に、残りを貯蓄に振り向けるとすれば限界消費性向はゼロから1の間のいずれかの値となるので、乗数は必ず1以上のプラスの値になります。したがって、政府の財政支出は、必ずその何倍かの総需要の増加、すなわち産出量の増加をもたらすことになります。これがケインズの乗数理論です。


それでは、日本経済において、財政政策の乗数はいくつになるのでしょうか。それについてはさまざまな推計が存在するが、日本において最も信頼されているものの1つは、内閣府経済社会総合研究所の短期日本経済マクロ計量モデル(ESRI短期モデル)による推計です。


その推計結果は、日本の現実の財政政策に対する乗数は、1を若干上回る程度にすぎないことを示しています。ESRI短期モデルの推計が正しいのであれば、それは45度線モデルが、どこかに大きな欠陥を抱えていることを意味します。なぜなら、政府の拡張的財政政策はGDPを拡大させはするが、その効果は、大抵教科書の練習問題で導き出されるような大きさには程遠く、せいぜい政府によって使われた金額を若干上回る程度のものにすぎないからです。こうした理論値と現実とのかい離が起きるのは45度線モデルが現実の経済を適切の説明できていないからです。そしてこれは静学モデルとしての制約とミクロ的基礎の欠如という、従来から指摘され批判され続けてきた伝統的ケインズ経済学の欠陥と深く関連しています。


伝統的ケインズ経済学は、教科書45度線モデル、IS=LMモデル、AD=ASモデルはいずれも時間という要素が取り除かれた静学モデルとして構築されいます。静学モデルを選択することは、マクロ経済が本質的に持つ動学的な要素を切り捨てることを意味しています。


マクロ経済学のあらゆるモデルは、人々の消費、貯蓄、投資のような経済行動を出発点としています。人々がそれをどう行っているかという決定原理こそが、マクロ経済学のミクロ的基礎となっています。私たちは現に所得のうちのどれだけを消費し、どれだけを貯蓄すなわち将来の消費に回すのかという意思決定を日常的に行っています。住宅や自動車を購入する場合には、マイナスの貯蓄とししての借金も行います。これはまさに、現在と将来の間で消費をどう配分するのかという、異時点間の経済的意思決定に他ならないのです。そしてそれは、時間という概念を前提としてのみ意味を持つ、動学的な事象なのです。


現代のアカデミックなマクロ経済学研究の多くはケインズ型のモデルではなく、現在から将来にわたる効用の最大化を考えながら現在の所得を消費と貯蓄に配分するという呼応増を持つ、フランク・ラムゼイよって考察されたミクロ的基礎をもつ動学モデルなのです。



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