新刊の学習漫画の紫式部の伝記を読む機会があったので、手近な既刊と読み比べて見ました。


学習漫画の伝記は、最近えらい人気で新しいものは常に棚にない状態。

また新刊の傾向としては、有名どころは出尽くしたので、お札になる人や大河ドラマに出る人、あとSDGsの関係で、国内外の女性の伝記が増え、こんな人大人の本にも伝記なんてないよ〜、という人が取り上げられたりしています。


で、女性、職業人、最古の長編物語の作者、大河ドラマの主人公と条件の揃った紫式部は、ここ数年新版をよく見ます。あ、お札にもなっていた!


ちなみに読む私の紫式部に関する知識は、あさきゆめみしと昔読んだ伝記漫画での清少納言との確執と藤原道長への憧れがあったくらいです。



で、読んだ、新刊はこちら↓




児童書では後発の角川書店の伝記漫画。

ソフトカバーということもあり、あまり働いている図書館には置いてないシリーズ。


・母親は小さい頃になくなり、母代わりだった姉もやはり早くなくなった。

・幼少から漢語が兄弟より読めた。

・長く文をやり取りし、年上の男性と結婚したけど出産後、縁遠くなる内になくなった。

・夫の死後、気を紛らわせるため源氏物語を書き始め、そこから藤原道長の娘の彰子に仕えるよう抜擢され、宮中で働き始めた。

・初めは登庁拒否したけど、思い直して人間関係に気を使いながら働いた。

・彰子の出産に際して、記録を取るよう道長に言われ、それを   として書いた。

・兄弟が父親より先になくなった。

・晩年は紫式部日記を書いて暮らした。


あたりが、読んで覚えているエピソード。

清少納言との間は日記に悪口を書き合ってはいたけど、宮中での働いた期間はすれ違いだったよう。

また、宮中にスカウトされたなど、紫式部と道長の関係が思っていたより、強く政治的に結びいていたことを知りました。


監修は、角川書店から紫式部日記を出版されたり、一般向けの紫式部関係の著作もある研究者。

それもあってか、結構情報が詳しく、源氏物語についてもページを割いていて、読み応えはあるけれど、では小学生が読んで読みやすいかと言えば、ちょっっと盛り込みすぎかなーという感じ。

学習漫画としては、巻末に紫式部がSNSをしてたら?とか、関連クイズもあって、小学生の気をひこうと楽しめる作りにしているのが角川っぽい印象。


比べて読んだのはこちらの2冊。


どちらも新しめの紫式部の伝記漫画で、集英社版はすでにシリーズを所蔵している点、学研版は、こちらの歴史漫画がよく借りられていることから選びました。




比較して読んだけれど、基本的なエピソードは同じ。

違いを感じたのは

・源氏物語については、角川が1番漫画でストーリーも語っているくらい紹介している。

・紫式部は和歌も有名だけれど、代表的なもの以外も多く紹介しているのは学研

・夫との死別について、その前から縁遠くなっていたことを1番詳しく書いているのは学研

・最後まで紫式部の呼称を藤式部にして、宮中を退職になった理由まではっきりと書いているのは学研

・晩年について記述が少ないのも学研


3冊読み比べると、えっそんなこと書いてたっけ?とか、弟だっけ兄だっけ?など、違いも多く、ついでに監修者も調べてみると、

角川:源氏物語研究者、ソフィア文庫などで一般の人向けの解説書の著作あり。

集英社:源氏物語研究者、一般人向けの著作はほぼなし。

学研:平安文学、和歌研究者。一般人向けの著作はほぼなし。


という感じで、伝記漫画の監修者って名前だけかなあと思っていたけれど。意外に監修者の色が出るのかもと思いました。


で、結局どれを選んだかというと集英社版。

上記の違いにあまり項目が上がらなかったけど、1番情報量が程よく、ストーリー仕立てになっていたところがポイント。

平凡が1番とは言いたくないけれど、小学校中学年以下をイメージするとちょうどおすすめしやすい内容です。


ちなみに角川版をおすすめするなら小学校高学年から中学生。

学研版は小学校高学年くらいといったところかな。


大人の読者も多い、伝記漫画ですが有名人ほど読み比べるのも楽しいかもしれません。

個人的には伝記の元ネタになっている紫式部日記を読みたくなりました。